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- 中国のヘッジファンド、九坤投資(Ubiquant)は、業界の人材が減少する中、30万ドルの初任給でトップクラスの新卒者を獲得しようとしている。
- 同社はブルームバーグに対し、年間の応募者数が300人に急増し、2020年に10人の新卒者を採用したと述べている。
- 同社の王琛CEOによると、経験豊富な中途採用者には100万ドルの給与を提供し、トップパフォーマーには最大150万ドルのインセンティブを与えているという。
ウォールストリートの企業が給与増加に沸く中、中国・北京を拠点とするヘッジファンド、九坤投資(Ubiquant)は、新卒の優秀な人材に最高30万ドル(約3300万円)の初任給を提示し、他の企業を圧倒している。
一方、モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)などは、2021年9月からジュニア・アナリストの給与を引き上げただけでなく、新入社員に10万ドル(約1100万円)から11万ドル(約1200万円)の初任給を提示している。
九坤投資の創業者兼CEOの王琛(Wang Chen)は「採用する価値があると思えば、努力を惜しまずに採用する」とブルームバーグに述べている。
同社の初任給に惹かれて、アメリカの大学院を辞めて就職する新入社員もいるほどだ。
アメリカのD・E・ショウ(D.E. Shaw)やツーシグマ(Two Sigma)のように、コンピュータモデルを使って投資や取引を行う企業は、特に技術系の新卒者を求めている。だがこの業界では、新卒者の中から優秀な人材を確保することが難しくなっており、一部の企業では新卒者の採用基準を下げている。
また、中国でクオンツファンド(定量分析に基づく投資信託の運用など)を行う企業は、アリババ(Alibaba)やバイトダンス(Bytedance)などのハイテク企業が優秀な新卒者を獲得するのに対抗しなければならない。
九坤投資は、競争力を維持する方法のひとつとして、社員に比較的楽な仕事をさせることを挙げている。ある社員は、朝10時に仕事を始め、昼休みには仮眠を取り、午後7時か9時には仕事を終えるとブルームバーグに語っている。アメリカ企業のジュニアアナリストの「非人道的」と言われる労働条件とはまったく対照的だ。
ブルームバーグによると、九坤投資は80億ドル(約8800億円)の資産を管理している。
他の有名企業では、Shanghai MingHongが85億ドル(約9350億円)、Zhejiang High-Flyerが100億ドル(約1兆円)の資産を運用している。しかし、これらの企業も、1兆ドル以上の資産を保有するアメリカ最大の資産運用ファンドであるブラックロック(Blackrock)などの企業にはまだ及ばない。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)