2021年6月28日、ニューヨークのクリスティーズで行われたNFTのオークション。
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- 2021年8月はNFTにとって好調な月だった。今後も成長が見込まれると専門家は見ている。
- ある専門家は、NFTは政府が利用するようになることで普及の最終段階に入る、と述べている。
- また別の専門家は、従来の金融資産にNFTが組み込まれることが、普及を示す指標になり得ると述べている。
2021年8月は「ノンファンジブル・トークン(NFT:非代替性トークン)」にとって好調な月になり、販売額が過去最高を記録した。
「Bored Ape Yacht Club」や「Pudgy Penguins」といったデジタルアートコレクションに牽引されてNFTへの関心が高まり、NFTマーケットプレイス最大手のOpenSeaだけで30億ドル(約3300億円)の売り上げを記録し、1日に3億回以上の取り引きが行われた。
しかし、大規模な成長を遂げていても、この分野はまだ「かなり初期の段階」にあると、暗号資産取引所OKExの金融市場担当ディレクター、レニックス・ライ(Lennix Lai)はInsiderに語っている。
ライによると、NFTの最適なユースケースはデジタル形式で存在するだけでなく、現実世界にシームレスに統合することだという。
「実際に暗号資産を普及させ、現実世界にインパクトのあるものを作りたいなら、NFTが必要だと思う」とライはInsiderに語っている。
「普及の最終段階は、政府が利用することだろう」
ライは、社会保障番号からCOVID-19ワクチン接種情報に至るまで、あらゆる個人情報が唯一無二の不変なデータとしてブロックチェーン上に安全に保管される世界を思い描いている。しかし、この業界には「もっと多くのイノベーション」が必要だとも述べている。
「NFTがコレクターズアイテムに限定されるなら、未来はそれほどエキサイティングではない」とライは言う。
今のところ、NFTはデジタルで表現されたアート作品やスポーツカードなどのコレクターズアイテムが、ブロックチェーンに結びつけられているものだが、今後さらに普及させていくには、いくつものハードルを乗り越える必要があるという。
保存方法も問題だ。過去にあるプラットフォームでNFTを購入したものの、そのプラットフォームが消滅したためトラブルになったという投資家もいると、デジタル資産ベンチャーファンド、コインファンド(CoinFund)のポートフォリオ・グロース責任者であるバネッサ・グリレット(Vanessa Grellet)は言う。
「今後5年以内に(NFTが)広く普及すると思う」と彼女はInsiderに語っている。ライと同様、彼女もアートやコレクターズアイテム以外のNFTのユースケースを考えている。
「NFTにもっと多くの資産が入ってきてほしいと思う」とグリレットは語り、NFTの技術でイノベーションを起こすことができる例として、株式や不動産、トークン化された資産などの金融商品を挙げた。しかし、業界を混乱させる恐れのある他のイノベーションと同様に、NFTの用途を広げることにはまだ抵抗があるとも述べている。
さらに「多くの人がNFTに親しむようになるには、まだしばらく時間がかかるだろう」と述べ、NFTを成功させるには、規制を明確にする必要もあると付け加えた。
2021年、NFTの人気は急上昇している。NFTを購入すると、アート作品そのものではなく、ブロックチェーン上にある唯一無二のトークンを得る。ブロックチェーン上の情報を改ざんすることはほぼ不可能であるため、特にコレクターやアーティストにとってNFTは魅力的なものとなっている。
JPモルガン(JPMorgan)によると、NFTの人気の高まりとともに、スマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的に実行する仕組み)を可能にするソラナ、バイナンスコイン、カルダノといったアルトコインも高騰している。
最近、注目を集めたNFTの購入例としては、Visaが15万ドル(約1600万円)で「CryptoPunk」を購入したことや、NBAスターのステフィン・カリー(Steph Curry)が「Bored Ape Yacht Club」コレクションを18万ドル(約2000万円)で購入したことなどが挙げられる。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)