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「ネットとSNSは社会の毒物」。習近平政権が仕掛ける「現代のアヘン戦争」

インサイド・チャイナ

REUTERS/Florence Lo

最近の中国産業界は、「一に規制、二に規制、三四がなくて五に規制」という状況で、しかも一つひとつが強烈なので、日本のワイドショーネタにもなり始めた。

とりわけ「何でこんなことするの?」と聞かれることが多いのが、7月下旬から9月初めに発表された「学習塾・宿題の規制」「芸能界を巡る規制」「オンラインゲーム規制」だ。それぞれの内容や共通する背景を整理し、習近平政権の狙いを分析してみたい。

学習塾・宿題の規制:特進クラスの禁止も

子どもや家庭の負担を減らすために学習塾と宿題を減らす「双減政策」は7月24日に発表され、あまりのインパクトに全国民が認知する言葉となった。その大きな目的が格差是正と少子化対策であることは、当連載で詳報した通りだ。

小中学生を対象とした学習塾は原則非営利を求められ、広告や週末授業の禁止など具体的な措置も徐々に出ている。学校に対しても、2学期が始まる前に「特進クラスなど特別クラス設置の禁止」「放課後など正規の授業時間以外に新しい内容を教えてはならない」と、ゆとり教育とも言える規制が通知された。

教育業界への影響は今後本格化するが、現段階でもオンライン英会話サービス大手が経営破たんし、1万人以上の教職員を抱える大手塾チェーンはどこも2割前後の人員を減らしている。

芸能界規制:アイドルビジネスを全否定

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K-POPアイドルグループを経て活動拠点を中国に移したクリス・ウーは8月にファンへの強姦容疑で逮捕された。

Reuters

インターネット行政を管轄する当局が8月27日、「ファン経済の乱れの正常化に向けた通知」を発表。芸能人のランキング、ファンを消費に誘導することなどを禁じ、SNSのファングループアカウント、芸能事務所の管理強化などを指示した。

そして9月2日、今度はメディア行政を管轄する当局が、タレント発掘番組の禁止や脱税撲滅、出演料の適正化、そして「中世的な男性」「容姿第一主義」の見直しも通知した。つまり、今の芸能界の風潮を社会に悪影響をもたらす根源として全否定したのだ。

当局は「芸能人ランキング」を一律禁止し、映画や音楽のランキングも個人名・グループ名が入るものはNGとした。特に念頭にあるのは、中国版Twitter「ウェイボ(Weibo)」など主要SNSに掲載されているランキングで、ウェイボの場合、フォロワー数だけでなく投稿への反応やブログのアクセス数など、さまざまな要素を加味して「影響力」として順位付けしている。ファンは「推し」の順位を上げるために投稿を拡散したりさまざまな活動を行い、時にはファン同士のもめごとが起きたりもする。

今回の一連の規制は、芸能界の3つの不祥事が関連している。1つ目は韓国男性アイドルグループEXOの旧メンバーで中国系カナダ人の人気スター、クリス・ウー(中国名・呉亦凡)容疑者が8月中旬に未成年のファンへの強姦容疑で逮捕されたこと。

2つ目は女優ジェン・シュアン(鄭爽)が8月下旬に脱税などで合計約30億円の罰金を命じられたこと。ジェン・シュアンは2019年に1億6000万元(27億2000万円)の契約でドラマの主演を務めたが、別会社を通すなどして過小に申告するなど、複数の違法行為が認定された。中国の芸能界では2018年にも女優のファン・ビンビン(范冰冰)が巨額脱税で摘発されており、法外な出演料、脱税の横行が示唆されている。

3つ目は4月下旬に起きた人気オーディション番組での乳飲料廃棄事件だ。デビューできるメンバーはファン投票で選ばれるが、スポンサーの乳飲料製品を購入すると、その分だけ投票権を入手できるため、ファンが乳飲料を大量買いして中身を排水溝に投棄する動画が拡散。「反食品浪費法」成立後というタイミングでもあり、番組は決戦投票直前に中止に追い込まれた。ちなみに強姦容疑で逮捕されたクリス・ウーもK-POPオーディション番組の出身者だ。

ネットゲーム規制:未成年のプレイは週に3時間まで

メディアやゲーム産業を管轄する国家新聞出版署が8月30日、ネットゲーム運営企業に、未成年のプレイ時間を「金、土、日の各20~21時の1時間」に限定するよう命じた。他にもネットゲームアカウントの実名登録制の徹底も要求している。

中国当局は5年前からネットゲームを「毒物」扱いし、敵視してきた。きっかけは、日本でも大ヒットしているテンセントゲームズの「王者栄耀(Honor of Kings)」だ。

2015年11月にリリースされた王者栄耀は「和平精英(Game for Peace)」と並びテンセントの業績拡大の屋台骨であり、コロナ禍のステイホームも追い風に2020年のDAU(1日当たりのアクティブユーザー数)は1億人を超えた。

一方でネットゲームはこれまでも何度となく国営メディアに批判され、「王者栄耀」は常にその代表事例だった。最初に注目されたのは2017年、「『王者栄耀』が子どもの人生を壊している」という人民日報の糾弾記事だ。テンセントも批判が出ると未成年のプレイ時間を制限したり、顔認証を導入するなど自主的に措置を講じてきた。

8月3日には政府系メディアの経済参考報がオンラインゲームを「精神のアヘン」「電子毒物」と形容する長文記事を掲載し、テンセントやネットイース(網易)の株価が急落した。

反応の大きさに慌てたのか、経済参考報の記事は一旦取り下げられ、「精神のアヘン」といった激しい文言を削除して再配信されたが、テンセントは即日、「未成年ユーザーのゲーム時間を、平日は従来の1.5時間から1時間に、祝休日は3時間から2時間に制限する」「未成年ユーザーは午後10時から朝8時までプレイ禁止」といった新たな対策を発表し、取り締まり強化への警戒感が高まっていた。

6月施行の改正未成年保護法も関係

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中国当局は未成年のネットゲームプレイ時間を週3時間に規制した。

Reuters

この1年、中国政府は経済活動に関わる規制を頻繁に発動してきた。独占禁止法の適用範囲をインターネットビジネスに広げ、データ統制を強化するデータ安全法は9月1日に施行された。中国企業の海外上場規制も強化される方向だ。

このあたりは「大きくなりすぎたメガIT企業の力を削ぐ」「米中貿易戦争の一端」と狙いが想像しやすいのだが、最近の「教育」「アイドル」「オンラインゲーム」については、なぜ政府がわざわざ規制に乗り出すのか想像しにくいようで、解説を求められることが増えた。

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