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どこに住んでいても気候変動の影響から逃れられない…「世界規模の気象災害」が当たり前に

ルイジアナ州ニューオーリンズのニューキャナル灯台に打ち付ける波、2021年8月29日撮影。

ルイジアナ州ニューオーリンズのニューキャナル灯台に打ち付ける波、2021年8月29日撮影。

Reuters

  • 筆者はこの1年でハリケーンに1回、森林火災に2回と、自然災害の脅威に何度も直面した。
  • この体験は、我々の住むこの地球の現状を如実に現している。それは、どこに住んでいても気候変動の影響からはもはや逃れようがないということだ。
  • 洪水や熱波などの異常気象事象の影響は、その発生源からはるか遠く離れた場所にも及んでいる。

ハリケーンから熱帯低気圧へ勢力を弱めた「アイダ」がニューヨーク市を通過した2021年9月1日、筆者のスマートフォンには心配した友人たちからの無事を確かめる連絡が相次いだ。幸い、マンハッタンにある筆者が住む建物は、浸水することはなかったが、「浸水するのでは」という差し迫った脅威を感じたのは確かだ。

さらに私はこの1年間に2度も、森林火災によって南カリフォルニアの家族と住む家から避難を強いられた。当時、まだその実家に住んでいた私は、丘の斜面を焼き尽くした炎がじりじりと迫る中で、30年近く慣れ親しんできた家に別れを告げることを覚悟したほどだった。外気には火災による煤(すす)が混じり、目が痛くなった。煙のにおいは、3層構造のマスクをしていても感じられるほどだった。

これが現実だ。どの海岸のそばに、あるいはどの州に住んでいようと、気候変動の影響からは逃れようがない。「洪水頻発地帯」や「火災要注意地域」といった言葉は意味がなくなりつつある。なぜなら、洪水はもはや、フロリダ州のような長い海岸線を持つ地域だけで起きる現象ではなくなっている。さらに、森林火災の煙は西部の住人以外にも影響を与えているのだ。

特に2021年の夏は、気候科学者が何十年も前から警告してきたことが現実となった。それはすなわち、「局所的な自然災害」などというものは存在せず、異常気象事象は互いに関連しているということだ。

こうした自然の猛威を如実に示す最新の例が、ハリケーン「アイダ」だ。このハリケーンはメキシコ湾で勢力を増したのち、ルイジアナ州ニューオーリンズに上陸した。さらに、上陸3日後の9月1日まで非常に強い勢力を保ち、ニューヨークの都市機能をマヒ状態に追い込んだ。

一方、西海岸のカリフォルニア、オレゴンの両州では森林火災が発生した。大気には煙霧が立ちこめ、東海岸のニューヨーク市やボストンまで大気汚染警報が発令された。

また、北極圏の気温上昇もアメリカの気候に影響を与えている。9月3日に公開された研究は、北極圏の気温上昇が加速することで、北米の冬の寒波がさらに過酷になると結論づけている。さらに、2021年2月にテキサス州で起きた大寒波と大規模停電にも、こうした北極の気温上昇が関係している可能性が高いという。

そして状況はさらに悪化するだろう。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年8月に発表した「第6次評価報告書」では、温室効果ガスの排出量が今後どれだけ削減されたとしても、今後20年ないし30年の間は温暖化が続くとの見方を示している。そして海面の上昇、氷河の消失、熱波、洪水、干ばつ、大型の熱帯低気圧の発生など、人間に起因する温室効果ガスの悪影響は、今後数百年から数千年にわたって解消されないという。

任意団体「エンド・クライメート・サイレンス(End Climate Silence)」の代表を務めるジュヌヴィーヴ・ギュンター(Genevieve Guenther)は筆者の取材に対し、「以前はごくまれにしか起きなかった事象が、今後はより頻繁に起きるだろう」と語った。そして「以前の自然災害は、突発的に発生して、歴史の記憶から徐々に消え去る一過性のものだったが、今後は違う。絶え間なく発生し、しかも世界全体に影響を与えるようになるだろう」と警告した。

気候変動の悪影響は目に見えるとは限らない

ピックアップ・トラックの荷台に乗り込み、ハリケーン「アイダ」によって冠水した地域から避難する住民たち。ルイジアナ州ニューオーリンズから30キロほど西にあるラプラスで撮影。

ピックアップ・トラックの荷台に乗り込み、ハリケーン「アイダ」によって冠水した地域から避難する住民。ルイジアナ州ニューオーリンズから30キロほど西にあるラプラスで撮影。

Alan Chin for Insider

気候変動の「ホットスポット」に関する警告は、誰もが聞いたことがあるはずだ。今世紀末までに海面が約3メートル上昇すればフロリダ州マイアミは水没するだろう。カリフォルニア州では、火災の高リスク地域に100万件以上の家屋が存在する。そして、ニューオーリンズ周辺50海里(約93キロ)のエリアには、7年に1度のペースでハリケーンがやってくる可能性が高い…といった警告だ。

だが、これらの地域に住んでいない人は、こうした脅威を軽く見てしまいがちだ。

つい最近まで、気象災害は「予測不可能な『天災』だと一般的に認識されており、保険会社でさえそう考えていた」と、ギュンターは指摘する。

「どこからともなく現れては去って行く、一過性の災厄と考えられてきた」

筆者がギュンターにインタビューしたのは9月3日だが、この時、彼女の宅の天井は、アイダの被害を受けて、かなりの部分が崩れ落ちた状態だった。本当はハリケーンが来る前に天井を修理するつもりだったが、手が回らなかったという。気候変動の脅威を訴える活動を行っている彼女にとっても、この一件は「異常気象への備えを怠ってはならない。先延ばしにしても大丈夫、などと考えることすら許されない」という貴重な教訓となったという。

また、大規模な気象事象では、被害が1つの地域に限られるという甘い見方は禁物だ。アイダに関しても、浸水や大規模停電の被害に見舞われたのはニューオーリンズだけかもしれないが、8つの州(アラバマ、コネチカット、ルイジアナ、メリーランド、ミシシッピ、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア)で合計60人以上の死者が出ている。

さらに言えば、これらの気象事象による被害は、目に見てすぐにわかるものばかりではない。例えばハリケーンによる洪水は、家屋の内部に入り込んだ水によるカビの増殖のほか、大気や水源、土壌への化学物質の放出、大気汚染の急激な悪化、汚染された食物や飲料水の摂取などの問題を引き起こすおそれがある。これらの問題が合わさると、被災した地域の住民に加え、救助や復旧作業にあたる人たちのあいだでも、呼吸器や心臓血管系の疾患が発生することが考えられる。

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