男性の育児休業取得について、企業の経営者・役員クラスの4人に1人が「反対」していることが最新の調査で明らかになった。さらに管理職の男女間でも、男性育休の促進に向けて大きなギャップが出ている。
男性育休2800人調査
男性育休に関する2800人のアンケート調査から見えてきたのは、後ろ向きな経営・管理職層の実態だった(写真はイメージです)。
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調査を行ったのは積水ハウス。2021年6月、働いている、もしくは就活中の男女2800人にインターネットを通じてアンケートを取り、「男性育休白書2021特別編」としてまとめた。
2021年6月に改正育児・介護休業法が成立したことを受け、来年2022年4月から企業は自身や配偶者の妊娠・出産を報告した社員に対し、育休を取る意思があるか確認するよう義務づけられる。
また同年10月頃からは、父親が子どもの生後8週まで最大4週間の休みを取る「男性産休」制度も新設される予定だ。
国が男性の育児参加を促そうと法整備を進める一方、今回の調査では企業の経営層と一般層、また管理職の男女間でも男性育休についての深刻なギャップがあることが分かった。
以下にその内容を紹介する(小数点以下切捨て)。
マネジメント層の4割超が後ろ向き、男女間ギャップも
出典:「男性育休白書2021特別編」(積水ハウス)
調査は主に「経営者・役員」「部長クラス」「一般層」「就活層」の4つの層に分けて行われた。
男性の育休取得に対し、就活層97%、一般層88%、部長クラス82%が賛成する中、経営者・役員の賛成は76%にとどまっており、4人に1人に当たる24%が反対という結果になった。
それでも経営層・管理職(部長クラス)層の7〜8割超が賛成ならいいと考える向きもあるだろう。しかし厚生労働省の最新の調査によると、男性の育休取得率はわずか12.65%(2020年度・雇用均等基本調査)。
出典:「男性育休白書2021特別編」(積水ハウス)
今後は企業からの働きかけが重要になってくると予想されるが、男性の育休取得について「促進予定があり、具体的に検討中」だと回答したのは、経営者・役員クラスで20%、部長クラスでも34%。
さらに「促進予定がない」と経営者・役員クラスの51%、部長クラスの44%が言い切っている。
男女差も顕著で、女性部長の48%が男性育休を促進するための具体案を検討しているのに対し、男性部長で同じように考えているのは、わずか20%と女性の半数以下だった。
理由は「代替要員いない」「経済的余裕ない」
男性育休を促進しない理由は……(写真はイメージです)。
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「男性育休を促進する予定がない」と回答した経営・役員層、部長クラスにその理由をたずねたところ(複数回答可)、最も多かったのは「企業規模が小さいから」で53%と半数以上を占めた。
次いで「従業員が少なく、代替要員の手当ができないから」30%、「男性育休を取得する従業員以外の負担が大きくなるから」28%、「男性育休を取得する従業員の経済的保障をする余裕がないから」16%などの理由があげられた。
こうしたマネジメント層の男性育休に対する後ろ向きな姿勢は従業員にも伝わっているようで、一般層の74%が「勤め先企業は男性の育休取得を促進していない」と回答している。
男性育休に注目して就活する20代は7割超
男性育休の充実は今後のリクルート活動にも大きな影響あり?(写真はイメージです)
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一方、男性育休に対するネガティブな姿勢は、今後の採用にも影響を与える可能性が高い。
就活をしている20代の73%(男性77%、女性70%)が「男性の育休促進に注力し、制度整備を行っている企業を選びたい」と答えているからだ。
男性育休制度が充実している企業の方が「働きやすそう」(53%)なのはもちろん、「経営者の考え方が柔軟そう」(44%)、「将来性がありそう」(34%)などの声が多くの就活生からあがっている。
言い換えれば、男性育休制度が整っていない企業は「経営者の考えが古く、将来性がない」と思われているのだ。
ジャーナリストで東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授の治部れんげさんは言う。
「男性育休の拡充が遅れていることが、自社にとってさほどマイナスにならないと思っている経営層は考えを変えた方がいいでしょう。『古い』と思われてしまうことは、人材獲得競争において致命的な不利につながります。
男性育休が社会から受け入れられる中、問われているのは経営者の変化対応能力です」
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(文・竹下郁子)