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2021年も残り数カ月となった。年末に向けて、新型コロナウイルスのワクチンや新しい治療法の可能性について大量にニュースが出てくる可能性がある。
新型コロナに関する数々の研究が進んでいる中、年末にかけて注目しておきたい10のワクチンや治療法を取り上げる。
それぞれがコロナ禍の次の章を開く鍵となる可能性がある。もっと多くの人にワクチンが行きわたるかもしれないし、新しい抗ウイルス薬も供給が開始されるかもしれない。
これから注目すべき10のワクチンや治療法とは、幼い子どもにも打てる可能性のある2種類のワクチン候補、新型コロナウイルスとの戦い方を変える可能性のある4種類の抗ウイルス薬候補、変異株にも対応可能とされる有望な2種類の抗体治療候補、ブースター接種、今後承認される可能性のある1種類のワクチン候補だ。
2種類の子ども向けワクチンの承認の可能性は? まもなく治験結果を公開予定
新学期、マスクをつけて登校した子どもたち。
Los Angeles Times
これまでに承認されているコロナウイルスのワクチンは、12歳以上を接種対象としている。
新学期を迎え12歳未満の子どもも登校を開始する中、子どもがデルタ株に感染する事例がすでに増えており、安全で有効な子ども向けワクチンを見つけることが最も優先されるべきだ。
小児の治験データを多く集められるのは、最初に登場した2種類のワクチン(ファイザー-ビオンテックとモデルナ)のはずだ。有効性が裏付けられれば子どもへの接種も承認される可能性がある。
治験結果を公表するのはファイザーのほうが先になると思われる。モルガン・スタンレーの最近のレポートによると、ファイザーは5歳から11歳の1500人を対象にした臨床試験の結果を9月中にも公開する。これよりも小さい子ども(最年少は生後6カ月の赤ちゃん)のデータは11月になる見込みだ。
モルガン・スタンレーは、モデルナはファイザーより1カ月から2カ月遅れで進んでいると見る。6歳から11歳の小児を対象とする第一段階の研究結果がこの秋にも発表されるという。
ただ、その先の承認を取得するプロセスがどのように進むかは、まだ見通しがきかない。有効性が認められれば、ファイザーもモデルナも緊急承認を年内にも申請する可能性がある。
アメリカ当局がどの程度のスピード感を持ってデータの検討を進めるのか、あるいはより長期にわたって追跡したデータや、より多くの治験参加者数のデータを求めたりするかは不透明だ。
製薬会社が十分な治験データを年内に準備・提出し申請を行う可能性はあるが、内容を精査検討するプロセスは年を越して2022年に入る可能性がある。
アメリカのブースター接種。年末までに大半の人が3回目の接種を受けるのか?
ワクチン接種を受けるバイデン大統領(接種時は大統領就任前)。
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小児向けワクチンと共に、ブースター接種も今後行われる可能性があり、アメリカにおけるコロナとの戦いは新しい展開になるかもしれない。
アメリカ保健当局は8月、ほとんどの国民がワクチン接種8カ月後に追加接種1回を受けられるとする計画を発表した。ブースター接種は9月20日に開始する予定だ。
すでに発表済みの計画にともない、アメリカ保健当局はワクチンの審査・推奨を行う規制当局の結果を待たずに準備を進めている。
ファイザーおよびモデルナは、両社とも8月下旬にブースター接種に関するデータをアメリカ食品医薬品局(FDA)に提出済みだ。ブースター接種を幅広く行うには、FDAの承認後にアメリカ疾病予防管理センター(CDC)も推奨する必要があるだろう。
バイデン政権は9月20日にブースター接種を開始するとしているため、承認プロセスは今後数週間で終わると思われる。
4つの抗ウイルス薬候補は真のゲームチェンジャーとなるか
薬局でタミフルの箱を掲げるスタッフ。
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2021年末までの残り数カ月で、新型コロナの薬物治療も新たな可能性が開け、希望が見えるようになるかもしれない。
臨床試験の最終段階に入っている抗ウイルス薬候補は複数あり、2021年末までに治験結果が出る見通しだ。インフルエンザ治療薬のタミフルのような処方薬が生まれる可能性があり、陽性が判明したらすぐに投与されるようになるかもしれない。非常に有効性が高くて投与しやすい新型コロナの抗ウイルス薬があれば、入院患者数も死亡のリスクも劇的に下がるだろう。
注目すべき経口抗ウイルス薬候補は3種類ある。一つはファイザーによるもの。メルク(Merck)とリッジバック・バイオセラピューティック(Ridgeback Biotherapeutics)の共同開発によるもの、そして、ロシュ(Roche)とアテア・ファーマシューティカルズ(Atea Pharmaceuticals)の共同開発による飲み薬候補だ。
3つとも開発終盤の試験結果が2021年末までに出る見通しで、有効性が認められれば緊急使用許可を申請する可能性がある。
別の大手製薬会社ノバルティス(Novartis)はバイオテック企業のモレキュラー・パートナーズ(Molecular Partners)と組み、静脈注射で投与する抗ウイルス薬の開発を進めている。研究も終盤に入り、重症ではない患者に投与した試験結果が、同様に年末までに出ると思われる。
変異株に効く2つの抗体医薬品が登場する可能性も
2020年8月、アルゼンチンのブエノスアイレスのガリンにあるモノクローナル抗体の研究施設で働く科学者たち。
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これまでに最も効果が高いとされている新型コロナの治療法の中には、特定のウイルスに作用するタンパク質を利用した抗体医薬品がある。これらの抗体医薬品のうち、いくつかはすでに緊急承認されているが、新型コロナの変異株にどう作用するか分かっていないという致命的な懸念点がある。
例えばイーライリリー(Eli Lilly)の治療薬は特定の変異株に効果がないため、緊急使用許可が取り消された。
他にも、特に複数の変異株に効果のある抗体医薬品候補の研究開発が進んでいる。
中国のブリー・バイオサイエンシーズ(Brii Biosciences)は8月、自社で開発した抗体医薬品が、入院していないリスクの高いコロナ患者の入院と死亡のリスクを78%減らしたと発表した。ブリーは今年末までに緊急承認を申請する予定だ。
アストラゼネカ(AstraZeneca)も8月に、抗体カクテル療法候補AZD7442が、コロナの感染リスクを減らす効果を確認したと発表した。5000人以上の患者を対象とした治験で、AZD7442を投与した患者群では、偽薬を投与した患者群と比較して、症状が出る率が77%低かったという。
この結果はワクチン以上の備えを必要とする、特に高リスクの人々を守るのに、とりわけ役立つ可能性がある。アストラゼネカは、開発中の抗体医薬候補について、より最終段階に近い試験結果を年末までに公表する計画だ。
ノヴァヴァックスのワクチンも申請目指す
ノースロンドンのロイヤル・フリー病院でノヴァヴァックスのワクチン候補の治験に参加する、イギリス政府の専門家組織「ワクチン・タスクフォース」のケイト・ビンガム座長。
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最後は、ノヴァヴァックス(Novavax)のワクチン候補についてだ。
他の新型コロナウイルスワクチン候補と同様、6月に出た開発段階終盤の試験結果では2回接種を行うとかなり効果が高いことが判明しているものの、小規模バイオテック企業であるノヴァヴァックスは最終的な薬事承認取得に苦戦している。
メリーランド州を拠点とするノヴァヴァックスは、2021年第4四半期にアメリカで緊急使用許可を申請することを目指している。
申請のタイミングは、同社が製造上の課題にも直面する中、今年、何度も延期を繰り返してきた。ノヴァヴァックスのワクチンは、従来から確立済みの伝統的なタンパク質ベースの技術を使っている。ワクチンの種類が増えればワクチン接種の取り組みも加速する可能性がある。
(原文:10 COVID-19 treatment and vaccine milestones that could shape the endgame of the pandemic)
(翻訳:カイザー真紀子、編集:大門小百合)