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Toward 2050 変革のカタリストたちの挑戦

2050年に50兆円市場へ──デロイト トーマツが挑む水素エネルギーの「地産地消」、実装への道

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Shutterstock / petrmalinak

脱炭素社会に欠かせないエネルギーとして注目されている「水素」。エネルギー資源の乏しい日本にとって、国内で「作って運べる」水素はカーボンニュートラル実現の切り札の一つだ。

現状では課題も多いが、社会実装に向けて各地で実証実験も行われている。いち早く水素社会のサポートに取り組んできたデロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)のプロフェッショナルたちに、最前線の取り組みを聞いた。

「水素」エネルギーが注目される理由

利用時にCO2を排出しないことなどから、カーボンニュートラルを支えるエネルギーとして注目されている水素。ただ、期待されている理由はクリーンなことだけではない。

現在、世界中で再生可能エネルギーの活用が進んでいるが、太陽光や風力を利用した発電は「自然変動型」であり、電力需要に対して不足や余剰が生まれやすい。水素は、そういった自然変動型の電源の変動出力を吸収でき、電力系統を安定化させることができる。また、水素は再生可能エネルギー電気だけでなく、下水汚泥や家畜糞尿などのバイオマスから製造することもできるため、安定供給可能なエネルギーとしても重宝されているのだ。

水素はもともと温暖化対策として期待の大きいエネルギーだったが、「ここに来てさらに注目が高まっている背景には、社会情勢の変化がある」と、デロイト トーマツで次世代エネルギーの支援を行っている越智崇充氏は語る。

「CO2削減の手段は低コストのものから普及していく傾向があるため、比較的コストが高い水素は利用が遅れていました。しかし、2050年に向けた温室効果ガスの削減目標が80%から100%へ引き上げられて風向きが一気に変わりました。

再生可能エネルギーの拡大だけでCO2排出ゼロを実現するのは現実的に難しい。最後の20%を推し進めるための有力な手段として、水素への期待が高まっています」(越智氏)

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越智崇充(おち・たかみち)氏/デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー。環境・エネルギー分野の民間シンクタンク、官公庁での温暖化対策担当を経て、現職。市場メカニズムを活用した地球温暖化対策の制度構築や運営支援、環境経営コンサルティング、技術開発動向調査業、脱炭素技術のコンピュータシミュレーション評価業務などを経験。

また、水素は産業としても有望だ。実は日本は水素利用に関して高い技術力を持っている。とくに水素を電気に変換する燃料電池分野では、世界のトップランナーだ。デロイト トーマツの試算によると、日本における再エネ・水素市場は、2030年に10〜15兆円、2050年には50兆円市場に成長すると見込まれている。

今の日本に必要なのは、官民が一体となったエコシステム

このように将来性がある水素エネルギーだが、現状では課題も多い。水素はコストが高く、クリーンなエネルギーであっても事業性の観点から積極的に選択されない。事業として「使える」エネルギーにするには、補助金を出したり、規制を緩和したりするなどの政策的な手当ても欠かせないのだ。

また、民間企業側でも大きな変化が必要だ。例えば、新しい事業戦略や業務プロセスが必要になるとともに、水素サプライチェーンに係る新たなエコシステムも構築しないといけない。さらに、研究開発も同時並行的に行っていく必要がある。そのため、産官学が一体となり取り組みを進めていかなければ、水素の利活用は進まないのだ。越智氏は次のように解説する。

「エネルギービジネスは薄利多売の側面もあるので、価格についてはシビアです。利活用を進めるには、水素の“コストを低下させる”ことと“エネルギー供給以外の価値を顕在化させる”ことが重要です。

コストの低下については、水素の製造と需要の拡大を両輪で進めること、水素に適した規制を作ること、そして技術を成熟させていくことが必要です。価値の顕在化については、一般的なビジネスの取引において、現状はまだフォーカスされることが少ない、CO2削減の価値や非常時に使えるエネルギーの価値を市場にどう内在化するかが重要になっています」(越智氏)

越智氏は、この「コストの低下」と「価値の顕在化」をスピーディーに進めていくには、産官学が一体となり、政策面、技術面、事業化面の各取り組みが必要だと続ける。

「私たちデロイト トーマツは、官公庁の政策立案の支援から、大学などと連携した技術戦略策定の支援、そして事業実施に係るファイナンスや税務などの支援も一括して行っているからこそ、水素の社会実装を推進することができると考えています」(越智氏)

また、水素のエコシステム構築には、実際の場面で使用し、実用化に向けての問題点を検証する「実証実験」が重要であり、その観点から欠かせないプレイヤーがいる。地方自治体だ。次世代エネルギーチームで地方自治体の支援を担当する西村 崇宏氏は、地方側の立場から次のように語る。

「同じ国内でも、もともと工業用途で水素利用が進んでいた地域、再エネが豊富な地域など、自治体によって特性は異なります。私たちはそれを踏まえてロードマップ作成の支援をしています。

ただ、地方で起きた課題を地方だけで解決するのは難しく、国側から変えてもらわなければいけない場合もある。そうしたときに中央官庁のチームと連携しシームレスにアプローチしていくことが、水素社会の実現には不可欠だと感じています」(西村氏)

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西村崇宏(にしむら・たかひろ)氏/デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー。福岡オフィス所属。長年、環境・エネルギー関連のコンサルティング業務に従事。近年は、再生可能エネルギー・水素エネルギーに関する市場調査・新規ビジネス構想化に加えて、スマートシティ・都市OSなど各種スマートサービスやデジタル技術を活用した地域活性化手法の検討を担当。

「エネルギーの需給予測」で、地産地消モデルを構築していく

では実際に、地方ではどのような水素プロジェクトが進んでいるのか。カーボンニュートラル社会への移行を見据えて、デロイト トーマツは国の事業だけでなく、北海道(苫小牧、室蘭)、青森県(六ヶ所村)、川崎、大阪、鹿児島などで自治体の調査・検討業務を支援してきた。

注目したいのは、福岡県北九州市の取り組みだ。デロイト トーマツは長年、九州の官公庁や自治体から水素に関する業務を受託してきたが、2021年度も北九州市から「北九州市グリーン成長戦略策定支援業務」の水素エネルギーに関する部分を受託している。

「北九州市は早くから“水素タウン”として、街の中に1.2kmの水素パイプラインを整備して水素に取り組んできた先進的な自治体です。一部の住宅にも水素利用設備を設置するなど、水素ビジネスの実証実験を行いやすい。そういったフィールドを活用することも含めて、市職員や有識者、市に拠点を構える事業者と成長戦略を検討しているところです」(西村氏)

このような戦略策定時の武器になるのが、デロイト トーマツが独自に開発したエネルギーシミュレーションツールだ。これはエネルギーの供給と需要のポテンシャルを踏まえてエネルギーシステムを分析・予測するツールとして活用されている。

「九州全体の中で、あらゆるところに水素製造拠点があるのは効率が悪い。例えば『北九州ではこれくらいの需要があるから、市内でこれくらい作って、余剰分は近隣の他の地域に運ぶ』といったシミュレーションをして、九州内で地産地消のエネルギーシステムを構築していくような取り組みにつなげています」(西村氏)

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独自のエネルギーシミュレーションツールは、水素エネルギーの需要検討以外にも、再生可能エネルギーの戦略策定や次世代モビリティの需要検討などにも活用されている。

Shutterstock / Scharfsinn

青森・むつ小川原開発地区で進む調査とは?

水素の事業を行うのに適した地域には、2パターンの特徴がある。1つは、水素をすでに工業用途で利用するプレイヤーがいる地域。実際に水素事業が進んでいる自治体として、北九州をはじめ、神奈川県川崎市や山口県周防市などがこれにあたる。

もう1つは、再エネが盛んで供給のポテンシャルがある地域だ。これもエネルギーシミュレーションツールで有力な地域を分析することができる。その実例として進んでいるのが、青森県北部のむつ小川原開発地区だ。同地区にはもともとエネルギー産業が根付いていたが、近年は再エネの事業者が複数入ってメガソーラーや陸上風力を展開。さらに現在、洋上風力の計画も進行中で、供給のポテンシャルは大きい。

デロイト トーマツは2021年夏に、ENEOS株式会社、新むつ小川原株式会社と共に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「むつ小川原地区と東北エリアにおける水素製造・利活用ポテンシャルに関する調査」を受託した。事業を担当する熊谷 ひかり氏は、取り組みのポイントをこう話す。

「この事業は、今後も再エネの拡大が期待できるむつ小川原開発地区での再生可能エネルギーから水素を製造し、東北地域の水素を地産地消するモデルの構築を目指すプロジェクトです。

デロイト トーマツでは主に水素の需要と供給バランスやコストの試算を行い、実装を見据えたより技術的な検討をENEOS株式会社が、そして地元自治体や事業者などとの連携を新むつ小川原株式会社が担っています。

非常に多くのステークホルダーが関係する新たな挑戦ですが、それぞれの意見を取りまとめながら一歩ずつ進めています。中長期的には、このむつ小川原・東北地方を中心としたモデルを全国地域に水平展開して、日本の脱炭素化を後押しする取り組みにまで発展させていきたいと考えています」(熊谷氏)

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熊谷ひかり(くまがい・ひかり)氏/デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアコンサルタント。2018年4月に新卒入社後、官公庁や地方自治体、民間企業向けの環境・エネルギー部門における戦略策定や実行支援、調査業務に従事。

具体例を見せながら、実装を進めていく

カーボンニュートラル社会の実現において、水素活用の必要性は疑いのないものになっている。しかし、それを現実に落とし込むには複数の難題をクリアしていかなければならない。

最後に、今後の展望を聞いた。

「実現には、“具体例を見せながら、社会実装を着実に進めていく”ことが非常に重要だと思っています。過去、日本における新しい取り組みは、規制を変えてからそこに具体例がついてくることが少なく、具体例があってそこでの課題から規制が変わり、社会が変わっていくことが多いと感じています。

まずは私たちが取り組んでいる北九州やむつ小川原・東北でのパイロットプロジェクトでしっかりと実績を出すことが、人を動かし政策を変え、脱炭素社会の実現につながっていくと考え、日々取り組んでいます」(越智氏)


「九州を中心に各種プロジェクトに携わっている身としては、“地域から日本の脱炭素を実現する”を目指して取り組んでいます。これまでに蓄積してきた官民との連携の経験を活かしつつ、実証だけで終わらない、実証の先のビジネスモデルの構築までしっかりとサポートしていきたいと思っています」(西村氏)


「脱炭素化を進めるには、国の目線と自治体の目線、そして事業側の目線など、複数の立場を理解し調整を図っていくことが必要です。“絵に描いた餅”で終わってしまっては未来がない。俯瞰した目線から、end to endを意識して最適解を見出していきたいと思います」(熊谷氏)

机上の空論ではなく、実証し見えてきた課題や問題から規制が変わり、社会が変わっていく。水素エネルギーの活用への挑戦は続いている。

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気候変動・カーボンニュートラルに関するデロイト トーマツの取り組みや情報はこちら。

「むつ小川原地区での水素地産地消モデル調査事業」のニュースリリースはこちら。


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デロイト トーマツと考える、「誰一人取り残さない」と「2050年カーボンニュートラル」両立のカギ

2050年までにCO2排出を全体でゼロにする政策目標「2050年カーボンニュートラル」。この実現には社会全体の大きな変革が必要だが、進め方によっては企業や労働者が痛みを負いかねない。そこでSDGsのトップスローガン「Leave no one behind(誰一人取り残さない)」を踏まえた脱炭素社会を実現するため、いま世界で注目されているのが「Just Transition(公正な移行)」というコンセプトだ。カーボンニュートラルに向けた望ましい移行の道筋とはどのようなものか。プロフェッショナルファームの立場から「Just Transition」を推進するデロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)の山田太雲氏と、気候変動問題に詳しいNPO法人気候ネットワーク理事の平田仁子氏に聞いた。ステップ・バイ・ステップではもう間に合わない── 2050年カーボンニュートラル実現にむけての動きが加速していますが、日本の現在地をどう捉えていますか。山田 私はデロイト トーマツに入る前、世界の貧困問題に取り組むNGO Oxfam(オックスファム)に所属し、G7(主要先進7カ国)や国連の会議に参

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