スキルシェアサービス・ココナラを利用し、作詞作曲のレッスンを受ける大学生。
提供:ココナラ
ビジネス資料の作成から悩み相談まで、様々なスキルを売買するスキルシェアサービスの市場が拡大し、各サービスが新規ユーザーの獲得にしのぎを削っている。
そんな中、スキルシェアサービス大手「ココナラ」では、大学生を対象に「期間1カ月、予算10万円」でスキルシェアを利用してもらうイベントを初めて実施した。
イベントには全国の大学から10人が参加し、予算10万円はココナラが負担。「ヴィーガン向けのメディアを立ち上げる」、「留学のために英語試験の得点をあげる」、「プログラミングを学びオリジナルゲームをつくる」など、それぞれの学生が目標を設定し、夏休み期間でスキルシェアを利用した。
実際にイベントに参加した3人の大学生に、どうスキルシェアサービスを使ったのかを聞いた。
1日最大4回オンライン英会話レッスン
ココナラを利用し、英会話のレッスンを集中して受けたという。
提供:鈴木大治さん
慶應大学1年生の鈴木大治さん(19)は、英語テストIELTSのスコアアップのため、ココナラで英作文の添削指導や英会話レッスンを利用した。鈴木さんは交換留学を希望しているが、その応募条件としてこの試験のスコアが求められるという。
最初に受講したライティング指導では、英語のエッセイを日本人に添削してもらった。
「英語を書く時のくせ、アカデミックな書き方のルールを教わった。1対1で90分の授業だったので緊張しました」
英会話レッスンは、ネイティブ話者や、海外の大学で学んだ日本人を中心に依頼した。
「多い日で1日に3人から4人のレッスンを受けた。1日3~4時間、それを4日連続。集中的に英会話を鍛えた。
実際の試験の面接官は外国人なので、ネイティブの方とは会話を中心に教わり、日本人の方には試験で役立つ表現など教わった」
ココナラでは英会話の出品は30分が多く、出品単価2000円程度が多い。だが、鈴木さんは1000円程度の依頼も多く利用したという。
「最初は10万円の予算オーバーするのでは?と思って節約していました。結局、予算を5万も残してしまいました。
スキルシェアは自由に時間を設定できるのが良さ。自分でレッスンを組み立てる必要はありますが、費用面でもスクールに通うよりもお得感があった」
7万500円で「マッチングサイト製作」依頼
ココナラではウェブサイト製作でも内容や値段も様々。
ココナラHPより編集部キャプチャ
横浜市立大学3年の仲谷崚さん(22)は、予算10万円で求人サイトの製作に挑戦した。
すでに仲谷さんは、自分で求人サイト作り運用していたが、より使いやすいHPにすることが目標だ。
「マッチング機能を付け加えたり、より高度な検索機能のあるHPを作りたかった。すべてを自分で作る技術はないので、スキルシェアサービスををうまく利用できればと思っていた。実際にやってみると、予算が限られていることもあり発注先を決めるのに時間がかかった」
制限時間の1カ月間のうち最初の2週間は、「どの出品者にするのか」の選択に時間を割いた。
「『求人サイト製作』などのキーワードで検索し、過去の作品など見ながら、10万円でできる範囲でイメージに近いものを作ってくれる方を探した。
約15人に『予算10万円で、こんなイメージでお願いしたい』と相談したところ、引き受けてくれたのは1人だけでした」
仲谷さんは、条件に応じてくれた「費用7万5000円。約10日間でマッチングサイト作成」という出品を購入。やっとHP製作は動き始めた。
仲谷さんが完成させたHPのスマホ画面。ロゴについてもココナラで製作した。
提供:ココナラ
「どんなサイトにするのか1日1回はテキストでやり取りした。レスポンスが早くてやりやすかったのですが、ビデオ通話なども利用できた方がイメージ共有はしやすかった」
ココナラによると、出品者によってビデオ通話が可能かどうかなど、コミュニケーションの取り方が違うという。
学園祭目指し、作詞作曲のスパルタ指導
作詞作曲の指導を受ける賀久さん。「スパルタ指導でしたが、手応えもあり夢中になった」と話す。
提供:賀久登仁さん
慶應大学2年の賀久登仁さん(19)は、作詞作曲の指導を受けた。
賀久さんはバンドを組んで活動しており、作詞作曲もしているものの「自信が持てない部分が多かった」という。今回の目標は、慶應大学の学園祭・三田祭のオフィシャルソングに自作曲を応募し、選ばれることだ。
「パソコンを使って作曲するDTM(デスクトップミュージック)の指導者を探したところ、30人以上見つかったが、見積額と指導実績、熱い返信をくれた方へ依頼を決めた」
1回の指導は、60分5000円。1週目には8時間指導を頼み、作詞・作曲の基本を学んだ。
「過去に作った曲や詩を見てもらったのですが『わかりにくいね』と、最初はひたすらダメ出しされた。結構スパルタで、逆に燃えました」
指導を受けながら作詞作曲を続け、完成した部分をその都度、添削してもらい、まるまる1カ月をかけて1曲を完成させた。
競争激化するスキルシェア市場
スキルシェアを含め、シェアリングエコノミーは多くのサービルが競争している。
出典:ココナラ
スキルシェア市場では多くのサービスが乱立し、上場する企業も相次いでいる。ただ、日常的にスキルシェアを利用している人は多くはないのが現状だ。
PwCコンサルティングの調査(2020年5月実施)によると、スキルシェアを含む「シェアリングエコノミーのサービス」を利用した経験がある人は、全体の20.5%にすぎない。しかもその中で、ビジネススキルなどスキルシェアサービスを購入側で利用したことがあるのは、たった11.9%だけだ。
ココナラが情報通信研究所の報告書をもとに市場規模を推定したところ、2030年には年間5兆2000億円の潜在市場規模を見込む。しかし、この試算の通りに市場が成長するかどうかは、いかにスキルシェアの魅力を実感してもらい、ユーザーを着実に増やせるかに当然、かかっている。
市場全体を拡大させつつ、自社サービスのシェアを確保していく。それぞれのサービスが、あの手この手の戦略で激しく競う状況はこれからも続きそうだ。
(文・横山耕太郎)