新学年が始まった学校でマスクをする子どもたち。
Los Angeles Times
- 新型コロナウイルスによる子どもの死亡率が、2021年7月末から9月初旬にかけて140%上昇したとポリティコが報じた。
- アメリカでは、新型コロナウイルスの全体の感染者数は、2021年の夏の初めに比べて減少しているが、毎週の新規感染者数の約4分の1を子どもが占めるようになっている。
- 小児科の専門家は、学校が再開されて子どもの新規感染者や死者が増加することを懸念している。
アメリカ・フロリダ州の新型コロナウイルス対策はこの1週間で打ちのめされた。フロリダ州保健局(Florida Department of Health)の統計によると、フロリダ州内の新型コロナウイルスに関連する子どもの死亡者数がわずか1カ月で2倍以上になったのだ。
フロリダ州保健局の「新型コロナウイルス週間状況報告」によると、パンデミックが始まってから2021年7月30日までの15カ月で、新型コロナウイルスによる16歳未満の子どもの死者は7人だったが、2021年9月3日に発表された同局の最新の報告によると、2021年7月30日以降の死者数は17人に急増している。
アメリカ小児科学会(AAP)フロリダ支部は、これらの死亡した子どもたちの多くは基礎疾患を抱えていたとしているが、小児科専門医は急激な感染者数の増加から今後数カ月間のデルタ株の影響を心配している。
AAPフロリダ支部の会長、リサ・グウィン(Lisa Gwynn)は「この先何が起こるかわからず、誰もが心配している」とポリティコ(Politico)のインタビューで語っている。
InsiderはAAPに対し、子どもの死亡率や罹患率が上昇していることについてコメントを求めたが回答は得られていない。
2021年9月8日の時点でアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は0歳から18歳までの子どもの死亡者数はアメリカ全体で486人と報告している。
CDCの所長、ロシェル・P・ワレンスキー(Rochelle P. Walensky)博士は、新型コロナウイルスによる子どもの死者数の危機的な統計について、「子どもを死なせてはいけない」と2021年7月、アメリカ上院議会の公聴会の緊迫したやりとりの中で述べた。
一方、新学期が始まり、児童・生徒が学校に戻ったことで、全米の子どもに新型コロナウイルスの感染者が増加している。学校が再開した直後の2021年8月には、子どもの感染者数が急増し、全米で数千人の子どもが隔離された。フロリダ州内のいくつかの学校では感染者数が増加したことを受けて休校を発表している。また同月には1900人の子どもが新型コロナウイルスにより入院し、小児科の入院患者数が過去最高を記録した。
アメリカでは9月2日現在、12歳以上はワクチンを接種することができるが、12歳から17歳の子どものワクチン接種率はそれ以上の年齢層に比べて低くなっているとCDCは報告している。
「初夏には減少していた子どもの感染者数が急激に増加し、8月5日から9月2日の間に75万件以上の子どもの症例が報告されている」とAAPは述べている。これは、1週間当たりにすると新たな症例の4分の1を占める数だ。
この子どもの感染者数の急増は、フロリダ州のロン・デサンティス(Ron Desantis)のような共和党の知事が、学校でのマスク着用の義務化をめぐって各学校区と争いを続けている中で起こった。8月に判事がデサンティス知事によるマスク着用義務の禁止令は認められないという判決を下し、9月8日にもその判決は巡回裁判所(Circuit Court)で支持され、学校は引き続きマスク着用を義務付けることができるようになった。しかし、その2日後の9月10日に別の巡回裁判所が知事の禁止令を支持する判決を下したため、この判決は覆された。
アメリカ合衆国教育省(US Department of Education)は、フロリダ州を含む6つの州のマスク義務化禁止令について公民権に関する調査を開始している。
[原文:Child deaths from COVID double in Florida as cases among children climb across the country]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)