プランクの世界記録更新に挑戦中のダニエル・スカリ。
Daniel Scali
- ダニエル・スカリは慢性的な腕の痛みを抱えながら、9時間30分というプランクの世界記録を樹立した。
- 今回は2回目の挑戦であり、1回目は使用したテクニックに問題があったため失格となっていた。
- 彼は挑戦中に4回嘔吐したが、テレビドラマを見ながらプランクを続けた。
28歳の男性が、うつ伏せの状態で前腕とつま先だけで体を支える「プランク」の姿勢を9時間30分1秒間続け、世界記録を樹立した。
複合性局所疼痛症候群(CRPS)を患うダニエル・スカリ(Daniel Scali)は、2021年8月6日に新記録を樹立し、その数週間後にギネス世界記録(Guinness World Records)に認定された。
スカリは2020年11月、裏庭で友人とトレーニング中に初めてプランクをし、その時の記録はわずか2分だったとInsiderに語っている。それから間もなく、彼は15分間プランクができるようになった。2021年の初めには、その頃の世界記録だった8時間15分を破ることを目標にした。
1日7時間のトレーニング
オーストラリアのアデレードに住むスカリは、2021年1月28日から記録達成に向けてのトレーニングを開始した。フルタイムで自動車修理工場を営みながら、1日7時間のトレーニングを行った。
毎日朝5時に起床し、50分間のグループ・フィットネス・クラスに参加した後、4km走った。昼休みには1時間ほどジムに通い、仕事を終えると午後5時半から同10時半までプランクをしていた。
ダニエル・スカリは、1日7時間トレーニングしたという。
Daniel Scali
助けを求めたエンデュランスコーチ(アスリートをゴールに導くパーソナルコーチ)や他のアスリートたちから「ほとんどサポートを受けられなかった」にもかかわらず、スカリはわずか4カ月のトレーニングで当時の世界記録に匹敵するタイムを出した。
6月18日に最初の世界記録に挑戦した際には、9時間9分で記録を更新したが、正しく行われなかったとして失格となった。それでも彼はあきらめなかった。
瞑想したり、テレビを見たりしながらプランクを続けた
精神的にも肉体的にも強さが要求されるこの挑戦に向けて、スカリはマインドセットコーチのマイケル・ソルジョバンニ(Michael Sorgiovanni)と協力して準備を進めた。
「時間が早く過ぎ去る」ようにするために瞑想を取り入れたところ、退屈することはなくなったという。
「新記録に挑んでいる最中、最初の2時間は何も見ないことにしていた」とスカリは言う。「マインドコーチと自分が創り上げた場所に自らを導く心の準備をするためだ」
その2時間が過ぎた後、興味を引くようなテレビドラマを見たが、何を見たかは覚えていないという。
苦しくなると、記録タイムの表示板が9時間を示すことを想像していたという。「私には目標があり、それを達成しようと必死だった」と彼は言う。
「4時間経過した時点で、まだ半分にも到達しておらず『あと5時間をどうやって乗り切ろう』と考えたとき、下を向いて記録タイムの表示板が9時間を示すのを何度もイメージしたことを覚えている」
挑戦中に4回嘔吐した
プランク開始から7時間後、スカリは体が「ストレスモード」になり、4回も嘔吐した。
「体が自分に逆らうような感じがして、何かがおかしいとわかった。コーチにバケツを持ってきてもらうように頼んだが、残念ながら遅すぎて、右腕に吐いてしまった。そのようなことが起こると、自然と体を動かしたくなるものだが、それは想像することしかできない」
スカリは、挑戦を終えることをイメージして、失敗しないと自分に言い聞かせながらプランクを続けた。
彼はエネルギーレベルを高く維持するためにバナナを2本食べ、アイソトニック飲料で水分を補給した。
トレーニングに痛みを和らげる効果
CRPSを患っているということは、「常に痛みを感じている」ことを意味すると、スカリは言う。彼の場合は左腕に常に痛みがあり、水につけることもできず、腫れと戦っている。12歳のときにトランポリンから落ちて骨折して以来のことだ。
「CRPSを一番わかりやすく説明すると、腕の神経が脳に間違った信号を送っているということだ」
CRPSとは、腕や脚などを負傷した後、痛みや炎症、皮膚の変化が長引くもので、マックギル疼痛評価では50点満点中42点と、出産や指の切断よりも痛いという評価となっている。
スカリは、トレーニングなどで痛みに対処する方法を学んだという。
「痛みに対処する上で、トレーニングは大いに役立った」と彼は述べ、今回のプランクの記録によって、CRPSの認知度が向上することを期待している。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)