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口先だけの「エコ」になっていないか。IKEUCHI ORGANICがSDGsに抱く違和感

IKEUCHI ORGANIC

提供:IKEUCHI ORGANIC

SDGs、ESG、サステナビリティ……2020年10月に菅首相がカーボンニュートラル宣言をして以来、特に日本でも話題の言葉だ。 多くの企業でSDGs達成に向けた動きが加速している今の状況について、 「どうでもいいこと」 と言うのは、愛媛県今治市に本社を置く今治タオルのメーカー・IKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)代表の池内計司氏だ。

“ええかっこしい”から始まったオーガニックタオル

「ブームに乗って環境配慮に取り組んでも、お客さんには見透かされてしまいます。お客さんの意識のほうが、はるかに進んでいることに気付かないようでは、経営者として恥ずかしいですよね」(池内氏)

赤ちゃんが口に含める安全性、全商品オーガニックコットン使用、生産工程で使う電力はすべて風力発電 ——。愛媛県今治市に本社を置く今治タオルのメーカー・IKEUCHI ORGANICは、「最大限の安全と最小限の環境負荷」をコンセプトに、20年以上にわたり持続可能なタオル製造に取り組んできた。

環境配慮を意識したモノづくりの始まりは、1999年3月にオーガニックコットン100%でつくったバスタオル「オーガニック120」だ。約20年前から、デザインを一切変えず、現在まで売れ続けている主力商品の一つである。

オーガニック120バスタオル

20年以上前に発売されたオーガニック120バスタオルは、今なおリピーター率が他のタオルと比べても圧倒的に高い人気商品。

提供:IKEUCHI ORGANIC

発売当初、 オーガニック120の価格は1枚3200円。当時、一般に流通していた高級バスタオルが概ね2000~2500円程度だったことを思うと、強気の設定だ。月々の売り上げはわずか5万円ほど。

事業としてはタオルハンカチのOEM生産で安定した収益を確保しているから、あくまで作りたいものを形にするという思いだった。池内氏は、「要は“ええかっこう”したかっただけですよ」と振り返る。

口先だけの「エコ」になっていないか

環境に配慮した自社ブランドを持つことは、池内氏の悲願でもあった。同社はもともと1989年に生まれた「エコマーク」をいち早く取得し、「グリーン」の名を冠した製品をつくり委託先に展開していた。

1992年には今治市のタオル関連企業7社とともに、「川の水より透き通る排水を出す」とまで言われる染色工場「インターワークス」を建設するなど、環境配慮への取り組みを始めていた。

それでも、当時の池内氏はまだ、本当の意味で「オーガニック」を理解できていたわけではなかった。

「環境に配慮した商品を展開していたといっても、私の認識は全く表面的。お題目ばかり並べているような気がして、一度は環境配慮商品から撤退したつもりでした。でも、ある出会いをきっかけに本腰を入れて取り組もうと思い直したのです」

1996年のある日のこと、デンマークのノボテックス社の社長、ライフ・ノルガード氏がインターワークスの視察に来ることになった。

同社は、その頃の日本にはない色のついたオーガニックタオルを持った先進企業で、その販促のために来日していたノルガード社長が、講演会場で工場の噂を聞き関心を示したのだ。

インターワークス

染色工場「インターワークス」の野外にある排水施設と外観。瀬戸内海には、瀬戸内法(瀬戸内海環境保全特別措置法)と呼ばれる、世界で最も厳しいとされる廃水規制が敷かれているため、その基準をクリアする廃水処理施設が求められていた。

提供:IKEUCH ORGANIC

ノルガード社長は施設の優秀さに驚いた。同時に、池内氏に対しては「環境問題への理解が浅い」と苦言を呈した。本格的な取り組みの第一歩として、リリース目前だった企業の環境対策に関する国際規格ISO14001を紹介した。

池内氏はその助言に従い、1999年にISO14001を取得後にオーガニック120を販売。さらに翌年の2000年には、製品の品質保証に関する国際規格ISO9001も取得した。

今でこそよく知られるISOだが、当時の産業界ではまだ認知度が低く、タオル業界で取得したのは同社が初めてだった。こうした動きが評判を呼び、池内氏は環境への取り組みに詳しい経営者の代表として、環境関係の会議に引っ張りだこになる。

オーガニック一本で勝負すると決意した瞬間

池内計司氏

代表の池内計司氏はオンライン取材で応じてくれた。コロナ禍になり一度も本社のある愛媛から出ていないと言う。

「IKEUCHI ORGANICは地球にやさしい会社」

そう見られることが増えていったが、同時に違和感を覚えていったという。

「本当にオーガニックを体現しているのは、オーガニックコットンの生産農家や、エンドユーザーであるお客さん。間に入っている当社は、『オーガニック』をビジネスのネタにしているだけではないか

池内氏には常にこうした思いがある。だからこそ、自社の業務範囲でできる環境配慮はすべて徹底しようとしてきた。最大の取り組みの1つが電力のグリーン化だ。

「グリーン電力証明システム」を2002年に導入し、工場やオフィス・店舗で使用する電力の100%を風力発電でまかなえるようにした。同社の製品が「風で織るタオル」と呼ばれる所以だ。

その後、オーガニック120をはじめとするオリジナルブランド「IKT」を東京やアメリカの展示会へも積極的に展開。2002年4月、「ニューヨーク・ホームテキスタイル賞」に出品すると、日本で初めて最優秀賞を受賞した。

これをきっかけに同社の知名度は一気に上がり、2003年には主要百貨店でオリジナルブランド製品の取り扱いが決まった。

そこから一転、2003年に売り上げの7割を占めていたタオルハンカチ問屋が自己破産に陥る。売掛金を含め約10億円の負債が発生し、池内氏は民事再生法の適用を申請。事業の柱であった問屋委託のOEMではなく、 オーガニックコットンを使用した自社ブランドで企業再生を目指すことになる。

「新聞に民事再生の記事が載ったときは、『何枚タオルを買えば、御社は助かりますか』というメールをたくさんいただいたり、『がんばれ池内タオル』という応援サイトも立ち上がったりしました。それで、もうこっちで突っ走ろうと決断したのです」

風で織るタオルのコンセプトは、消費者に届いていたのだ。

2007年に民事再生手続きを終え、当時数百万円程度だったオリジナルブランドの売り上げは、その後数十倍規模になった。

ストア

2014年3月、青山にオープンしたイケウチオーガニック 東京ストア。洗濯やお手入れなども案内するタオルソムリエも常駐する。

提供:IKEUCHI ORGANIC

サステナビリティを語る前に、やるべきこと

“ええかっこしい”から始まったオーガニック製品は、なぜ根強いファンを獲得し、ビジネスとしても順調に成長できたのだろうか。池内氏に尋ねると、「僕らはお客さんと一緒にブランドを作ってきた。今があるのは『お客さんの声にひたすら応える』ことを続けてきた結果にすぎない」という。

「オーガニック120を手に参加した2000年の『エコプロダクツ展』(現『エコプロ』)は、当時、全国からエコマニアが集まり議論を交わすような場で、中小企業はほぼ出展していなかった。


しかも、僕らのブースはトヨタの横。もう突っ込まれに行くようなものですよ。そこで、ISO9001を持っていないじゃないかと指摘されたことが、同年に取得するきっかけになった。


オーガニックを謳いながら展示用資材に蛍光塗料が入っている、パンフレットに再生紙を使っていないなど、製品以外の面についても細かいツッコミをたくさんいただきました。そうした声に一つひとつ応えようとすることで、ここまでやって来られたようなものです」

お客さんと向き合った上でアクションを取るという地道な積み重ねが、結果としてブランドになる。そのことを身を持って痛感しているからこそ、池内氏は代表となった今でも、社外から入ってくるフィードバックにはすべて目を通し、自らFacebookやTwitterなどのSNSを使った情報発信にも力を入れる。

風呂敷

オーガニックコットン100%の生地を使用したギフト用の風呂敷。大・中・小の3種類があり、エコバッグにもなる。

提供:IKEUCHI ORGANIC

2020年からギフト用の包装にエコバッグとしても再利用できる風呂敷を取り入れるようになったが、それも顧客からの「過剰包装ではないか」という声に真摯に向き合う中で始まった取り組みだ。

さらに細かい点では、社内の備品にプラスチック製品を利用しない。クリアファイルの追加購入もやめて、すでに使用済みのものを使い回すようにしている。

社員一人ひとりが「ペットボトル飲料は月に2本まで」といったように自身の「環境目標」を毎年設定する。

「お客さんは自分たちが提供するモノやサービスの鏡のような存在。私の周りには特に、古くから応援してくれているお客さんも多く、そういう方はまずいところもストレートに言ってくれるので大いに助けられています。


まずは自社の範囲でできることをきっちり示していく。地域や社会全体のサステナビリティを語る前に、やるべきことがあるはずです」


※IKEUCHI ORGANICは、サステナビリティ経営に取り組む企業を表彰するBusiness Insider Japanのアワード「Beyond Sustainability2021」の環境部門にノミネートされています。ノミネート企業23社の中から受賞した5社が登壇するオンラインイベントが、10月4日~8日に開催されます。詳しくはこちらから。

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(文・小島和子、編集・小倉宏弥)

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