30年間で68兆ドルが動く?新世代の富裕層の心を掴む、「資産運用サービス」の理想型とは

  • この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「富裕層の資産運用How High-Net-Worth Individuals Invest)」のプレビュー版。

今後30年間で68兆ドル(約7500兆円)もの資産が若い世代に移転する。富裕層を顧客とするウェルスマネージャーは、従来のきめ細かいサービスにとって代わるものとしてではなく、それを強化するためにデジタルソリューションを活用し、時代の変化に適応していかなければならない。

一般大衆より多くの資産を持つ富裕層向けのサービスには、特別なアプローチが求められる。投資の民主化が進み、資産運用をする人が増えたものの、富裕層は未だに特別な位置づけにある。彼らのポートフォリオは、不動産や最近では暗号通貨など多様なアセットクラスで構成されており、詳細なアドバイスへの需要があるためだ。本レポートでは、富裕層がどのような資産運用サービスを求めているのかを明らかにする。

「ワンランク上のサービス」へのニーズ

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Shutterstock/Elle Aon

富裕層の資産管理は複雑だ。彼らはお仕着せではなく、個々の状況に合わせたオーダーメイドのサービスを必要としている。富裕層向けウェルスマネジメントの秘訣は、人間味のあるきめ細やかなサポートだろう。顧客の意向や好み、経済事情などを熟知する、専門知識を持った担当者による的確なアドバイスが求められている。

だが、資産運用会社は顧客の求める高いレベルのサービスをコンスタントに提供できていない。調査会社ガートナー(Gartner)による富裕層を対象とした調査では、回答者の半数以上が「ウェルスマネージャーの方から積極的に提案をしてくれない」と答えており、運用会社の機会損失が浮き彫りになっている。投資情報プラットフォームを運営するワイチャーツ(YCharts)による2019年の調査では、ファイナンシャル・アドバイザーからの連絡頻度が低い富裕層の66%が「もっと頻繁に連絡があれば、アドバイザーや運用計画に対する信頼度が高まる」と回答している。

デジタルに偏り過ぎてはいけない

世界の富裕層(HNWI:High Net Worth Individuals)と超富裕層(Ultra-HNWI)のうち、高付加価値サービスに「関心がある」「対価を払っても良い」と考えている人の割合を表した表。

世界の富裕層(HNWI:High Net Worth Individuals)と超富裕層(Ultra-HNWI)のうち、高付加価値サービスに「関心がある」「対価を払っても良い」と考えている人の割合。上段は39歳以下の若年層、下段は60歳以上の年配層。

Business Insider Intelligence

フィンテックをはじめとするIT企業が参入してきたことで、消費者の金融サービスに対する意識は変わりつつある。富裕層も例外ではない。ほとんどのフィンテックは一般大衆をターゲットにしているが、最近ではスイスを拠点とするマス富裕層向けプライベートバンクのアルピアン(Alpian)や、ミレニアル世代の大富豪をターゲットにしたプライベートバンクの220などの新サービスが登場している。フィンテックが金融サービス業界で勢力を伸ばすにつれ、豊富な機能を取り揃えたデジタルサービスへの期待値が高まっている。また、IT企業が提供する洗練されたツールやアプリを使い慣れた消費者はワンクリックでサービスを受けられることを当然と感じるようになっている。

新型コロナウイルスの感染拡大でこの傾向がさらに強まった。金融情報と分析ソフトウェアを提供するファクトセット・リサーチ・システムズ(FactSet Research Systems)が世界的なプロフェッショナルサービス企業エイオン(Aon)と共同で行った2020年11月の調査によると、パンデミック下では世界の富裕層のウェルスマネジメントの54%がオンラインで行われたという。さらに、回答者の50%が「デジタルサービスの方が時間を有効に使える」と答えている。

ただし、デジタルに傾きすぎると富裕層の顧客を遠ざけてしまいかねない。2020年第1四半期のマッキンゼーの調査によると、ヨーロッパのプライベートバンクの顧客のうち、原則デジタルオンリーのサービス(必要な時だけ遠隔から人間がサポート)を希望するのはわずか25%で、71%はマルチチャネルでのサービスを望んでいる。パンデミックの影響でデジタル化が進んだとはいえ、パーソナライズされたサービスへの需要は高いことが窺える。

顧客は「納得できるサービス」には対価を払う?

アメリカの富裕層の年齢構成を表した棒グラフ。

アメリカの富裕層の年齢構成(2019年)。

Business Insider Intelligence

富裕層(特に若い世代)は、ワンランク上の資産運用サービスに対して相応の対価を払ってもよいと考えている。コンサルティング会社キャップジェミニ(Capgemini)が2020年に発表したレポートによると、39歳以下の富裕層(投資可能な資産100万〜500万ドル)の半数以上(55%)が、付加価値の高いサービスにお金を払ってもよいと考えているという。

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とはいえ、従来の料金体系は時代遅れになりつつあることを示唆するデータもあり、手数料の設定は慎重に行うべきだ。キャップジェミニの調査では、回答者の32%がウェルスマネージャーが請求する手数料に不満があるとした。意外にも、彼らの最大の関心事は「手数料そのもの(43%)」ではなく、「透明性(49%)」と「提供される価値(44%)」だという。

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[原文:What high-net-worth investors want from wealth managers

(翻訳・野澤朋代)

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