Loren Elliott/Reuters
- 2021年、人工樹木のクリスマスツリーの価格が最大25%上昇する可能性があるとウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
- 物流の危機が続き、輸送コストが急上昇しているのが価格高騰の原因だ。
- ここ最近は、2008年の不況やパンデミックの影響で生木のツリーも不足している。
2021年の人工のクリスマスツリーは、25%以上高い値段になることを覚悟したほうがいい。
人工ツリーをはじめとするクリスマスの装飾品を製造する企業は世界的なサプライチェーンの混乱の影響を受けている。港が混雑しているため製品の配送が遅れ、輸送コストの高騰で小売店も価格を引き上げざるを得ないとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は報じている。
ツリーやリース、花飾りなどを販売するバルサム・ヒル(Balsam Hill)は約20%の値上げをしている。2020年に899ドル(約9万8500円)だった7.2フィート(約2.2メートル)のツリーは、2021年は100ドル(約1万1000円)値上げし、300ドル(約3万3000円)だった4.2フィート(約1.3メートル)のツリーは499ドル(約5万4600円)にすると同社CEOのマック・ハーマン(Mac Harman)はWSJに語っている。
バルサム・ヒルは、アメリカへの輸送コストが2021年は前年比で4倍になると予想している。同社のハーマンCEOは、「我々の歴史の中でこれほどの値上げはしたことはなく、収益も大幅に減少するだろう」と語った。
人工樹木を販売するナショナル・ツリー・カンパニー(National Tree Company)のクリス・バトラー(Chris Butler)CEOは、輸入のための「コンテナの奪い合いになっている」とWSJに語っている。ナショナル・ツリー・カンパニーも輸送コストの上昇を考慮して価格を約25%引き上げるという。
「クリスマスプレゼントは今すぐ注文しよう」
人工クリスマスツリーの業界は、サプライチェーンの問題に悩まされている数多くの業界の一つに過ぎない。2020年の人手不足やパンデミックによる業務停止などの要因が重なり、結婚祝いの品からゴルフクラブまで、あらゆるものが品薄状態になっている。
一方、輸送コストの高騰は玩具や家具などの価格に影響を与えている。玩具は低価格なので輸送コストの上昇分を吸収することが難しい。また、家具はかさばるために輸送コンテナの中で場所を取ってしまう。
UPSのスコット・プライス(Scott Price)社長は、物流業界のこのような問題は2022年まで続くと予想しているとAFPに語っている。
「私は冗談半分で、『クリスマスプレゼントは今すぐ注文したほうがいい。そうしないとクリスマスには、翌年の2月か3月まで届かない物の写真しかないかもしれないから』と皆に伝えている」
本物のツリーも不足している
Richard Levine/Corbis via Getty Images
輸送の危機は、多くの人々にホリデーシーズンの飾り付けの計画を再考させるかもしれない。つまり、人工樹木でなくモミの木など本物の木を使うということだが、こちらもパンデミックやその前のグレート・リセッションで大打撃を受けている。
2020年のホリデーシーズンは新型コロナウイルスが猛威を振るう中、家の中を華やかに、そして快適にするため、人々は木を買い求めた。しかし、当時はさまざまな要因が重なってクリスマスツリーとして育てられている木は少なくなっていた。1990年代後半の過剰な植栽で、グレート・リセッションの始まり(2008年頃)には木の供給が過剰になっていた。さらに土地が手に入りにくくなり、金融危機の影響を受けた農家が植える木の量を減らしてしまっていたことが原因だ。
クリスマスツリーは販売するまで通常8年から12年かけて育てるので、2016年以降の木の供給が減ったことになる。当然、本物の木のクリスマスツリーの価格は上昇している。全米クリスマスツリー協会(National Christmas Tree Association)のデータによると、2008年から2019年の間に、ツリーの平均価格は2倍以上の76.87ドル(約8400円)になった。
2021年も生木のツリーの不足が続くかどうかは不明だが、ホリデーシーズンの装飾品の価格上昇と供給不足に備える必要がありそうだ。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)