- Wealth-Xの新しい報告によると、2020年に世界の億万長者が3000人を超えたことが分かった。
- これは初めてのことで、その結果、世界の億万長者の総資産は5.7%増加した
- 富を再分配し、パンデミックの不公平感を解消するひとつの方法として、富裕税の導入が提案されている。
パンデミックは億万長者にとっては好都合だった。億万長者の持つ総資産が増加し、さらに多くの人々が億万長者の仲間入りを果たした。調査会社Wealth-Xの新しい報告書によると、世界の億万長者は2020年に初めて3000人を超えたという。
億万長者の数は2019年から13.4%増加した。彼らの純資産は5.7%増加し、総資産は10兆ドル(約1100兆円)まで膨れ上がった。
報告書には「全体的に見ると、パンデミックは億万長者に富をもたらした。あふれんばかりの金融刺激策と、若くして自力で億万長者になった人々の新しい波を生み出した業界での利益の拡大によるものだ」と記されている。
しかし、すべての億万長者が同じように恩恵を受けたわけではない。パンデミックの影響を受けた旅行やエンターテインメントなどの業界で富を築いた人たちは、テクノロジーなどの分野で富を築いた人たちほど恩恵を受けられなかった。国際労働機関(ILO)の報告書によると、パンデミックによって世界中の労働者が3兆7000億ドル(約405兆4000億円)もの収入を失っており、富の格差は拡大したという。
アメリカ国勢調査局(US Census Bureau)によると、アメリカだけでも、2019年から2020年にかけて貧困層が1%増加し、世帯収入の中央値は2.9%低下した。北米は「2020年の世界で最も億万長者が多い地域」としての地位を確立しており、同地域のビリオネアは前年比17.5%増だった。実際、北米の980人の億万長者は世界の億万長者の30.6%を占めている。アメリカは2020年に億万長者が最も多い国だった。
北米に次いで億万長者が増加したのはアジアで、16.5%増の合計883人だった。アジアの億万長者の純資産総額は7.5%増の2.6兆ドル(約284兆円)に達している。
格差をなくすために富裕層への増税を求める声が高まっている
この報告書では、現在進行形で拡大し続ける貧富の差が、世界各地で不安が増大している要因のひとつだとしている。
「世界経済が危機から徐々に回復していく中で、格差の拡大という問題は、税制や規制などで、より協調的な再分配政策の取り組みに拍車をかけるかもしれない」と報告書は述べている。
そこへ、億万長者の莫大な富の獲得を批判する人物が現れた。アメリカのジョー・バイデン(Joe Biden)大統領だ。
バイデン大統領は最近のスピーチで、左派系の「Americans for Tax Fairness(税の公平性を求めるアメリカ人)」と「Institute for Policy Studies(政策研究所)」がアメリカの億万長者の利益を追跡調査した報告書(この報告書によると、億万長者の純資産はパンデミックの間に62%も急増した)を引き合いに出して、「億万長者は1.8兆ドル(約197兆円)もの富を手にした」と述べた。バイデン大統領はこうも言った。
「これはフェアではない」
富裕税はパンデミックによる不公平感を解消し、経済を活性化する方法のひとつとして一貫して提唱されてきた。国際通貨基金(IMF)は、富裕層への一時的な課税がパンデミックからの復興に役立つと述べている。アルゼンチンはさらに踏み込んで、富裕層への一時的な課税を行い、24億ドル(約2640億円)を集めた。オックスファム(Oxfam)、Fight Inequality Alliance、左派の政策研究所、Patriotic Millionairesが発表した報告書によると、世界の億万長者に99%の富裕税を一度だけ課せば、世界中でワクチンを接種するのに十分な金額を集めることができるという。
アメリカでは、下院民主党が、トランプ大統領時代の減税措置の一部を緩和し、大企業や株式などの資産、500万ドル(約5億5000万円)以上の収入を得ているアメリカ人を対象に税率を引き上げる新税制案を提案している。しかし、500万ドル以上の収入を得たアメリカ人に課される3%の「追加税」(これは圧倒的な支持を得ている)でも、完全な富裕税には程遠いとInsiderのベン・ウィンク(Ben Winck)とアイレット・シフェイ(Ayelet Sheffey)は報告している。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)