iPhone 13(左)とiPhone 13 Pro。レンズ個数の違いがわかりやすい判別箇所。また、Proについては、レンズユニット部分の大きさがiPhone 12 Proよりずっと大きくなっている。
撮影:石川温
iPhone 13シリーズ4モデル(iPhone 13、iPhone 13 mini、iPhone 13 Pro、iPhone 13 Pro Max)を約5日間、発売日に先立って試用する機会を得た。
iPhone 13 miniが5.4インチ、iPhone 13とiPhone 13 Proが6.1インチ、iPhone 13 Pro Maxが6.7インチということで、やはりサイズ的にバランスが良いのは、「真ん中の大きさ」である6.1インチのiPhone 13とiPhone 13 Proだ。
読者の多くも、買うならば「iPhone 13とiPhone 13 Pro、どちらにすべきか」という人は多いのではないだろうか。
本体価格は同じ128GBモデルの場合、iPhone 13が9万8800円で、iPhone 13 Proが12万2800円だ。この2モデルで比較した場合、気になるのは「2万4000円分の差はあるか」ということだ。
ノーマルのiPhone 13と“Pro”に「2.4万円分の差」はあるか
2モデルの大きな違いは、なにより「カメラ」だ。iPhone 13は2つのカメラ(広角と超広角)、iPhone 13 Proは3つ(望遠、広角、超広角)となっている。
確かに望遠カメラがあることで、iPhone 13が2倍の光学ズームレンジなのに対して、iPhone 13 Proは6倍の光学ズームレンジとなっている。デジタルズームまで適用すると15倍までになる。
望遠カメラがあると重宝する場面も多い。実際にiPhone 13 Proの望遠を使ってみると、iPhone 13でズームで寄れないのは不満に感じてしまう。望遠を多用する生活をしているのであれば、iPhone 13 Proを選ぶのが無難だ。
右下の小さな黒丸部分がLiDARスキャナ。
出典:アップル
iPhone 13 Proには「LiDARスキャナ」が搭載されている。
LiDARとは被写体にレーザーを当て、跳ね返ってくる時間から距離を測定するというセンサーで、暗いところでも被写体のと距離がすぐわかったり、アプリを使うことで立体物を3DオブジェクトとしてiPhoneに取り込めるというのが利点だ。
iPhone 13 Proでは、夜間撮影の「ナイトモード」でのポートレート、暗い場所でのより速いオートフォーカス、次世代のAR体験をもたらすとしている。
SNSなどに写真を積極的に投稿している人なら、暗い場所でポートレートを撮るというシーンはあるのかも知れない。しかし、一般的なユーザーがナイトモードが必要な場所でポートレートを撮影するかと言えば、結構、限られた需要のような気がしてならない。
iPhone 12 ProとPro Max、そしてiPhone 13 Pro/Pro Maxではカメラの構成やズーム性能などが異なる。
作成:Business Insider Japan
iPhone 13 ProにあってiPhone 13にない機能としては、ビデオ撮影において、プロの映像制作向けのフォーマット「ProRes」での撮影できることがある。
低い圧縮率で色が限りなく忠実に再現されることが、ProResのメリットだ(アップルは、iPhone 13 Proでは放送クオリティーの映像を撮影、編集、配信ができるとしている)。
この機能は後日のソフトウェアアップデートでの提供となるが、YouTuberなど映像にこだわりたい人には気になる機能だろう。
ちなみに、今回のiPhone 13シリーズでアップルが売りにしている、動画撮影後にピント位置を変えられる「シネマティックモード」での撮影は、iPhone 13 Pro、iPhone 13ともに対応している。実際に子供を撮影してみたが、被写体にピントが合いつつ背景がボケ、あとから背景にピントを合わせるといった調整もできた。確かに「映画」というにはおこがましいが、家族の動画が少しリッチになった感はある。
13と13 Proで「ディスプレイ性能の違い」は?
もうひとつ、iPhone 13 ProとiPhone 13と比較しての違いと言えば、ディスプレイだ。iPhone 13 Proには「最大120Hzのアダプティブリフレッシュレートを持つProMotionテクノロジー」が搭載されている。
簡単に言ってしまえば、画面表示の書き換えスピードをコンテンツによって速くすることができる(最大で毎秒120回まで)というものだ。ゲームなど、敵の動きを瞬時に知りたいときなどに重宝する。
これがどこまで「目に見えるか」だが、一般的な利用シーンではWebサイトやメールなどのテキストベースのページを高速にスクロールした際、iPhone 13 Proでは文字が比較的、見えるのに対して、iPhone 13では流れて見えなくなる、という程度の違いがあった。
確かに、iPhone 13とiPhone 13 Proを横に並べて比較すれば、その違いはわかる。ただ、ゲームを全くしない人に必要かと言えば、個人的には微妙な差と感じる人が多いのではないかという印象だ。
わかりやすい「Proの良さ」はマクロ撮影(接写)
iPhone 13 ProとiPhone 13を比べながら使ってみて、「iPhone 13 Proのココがいい」と感じたのが接写だ。
iPhone 13 Proでは被写体に限りなく近くによってのマクロ撮影が可能になった。これがかなりいいのだ。実はiPhone 13では非対応となっている。
iPhone 13 Proのマクロ撮影。しづる感のあるフルーツタルトが撮れた。
撮影:石川温
iPhone 13での接写。画角が違うように見えるが、撮影距離はほぼ同じ。iPhone 13にはマクロがないので、このようにまったくピントが合わない。
撮影:石川温
料理や花、さらにちょっとしたメモとして撮影する際、できるだけ近くにより、接写で撮影できると、実際のところかなり重宝する。仕事柄、取材でさまざまなモノを撮影するが、接写で製品の細かい部分を撮りたいという場面は多い。
ちょっとした撮影ならiPhoneで済ませてしまう、というケースは年々増えているが、マクロ撮影の対応によってまた、iPhoneで済ませるシーンは多くなるだろう。
個人的には、取材用カメラはiPhone 13 Proだけでもいいのではないか、と思えるほどだった。
結局のところ、iPhone 13 Proは「プロユース」のスマートフォンといえる。
接写や望遠、ナイトモードでのポートレートや暗いところでのオートフォーカス、ProRes、描画の速いディスプレイなど、仕事で写真や映像の撮影をしなければならなかったり、SNSに本気で取り組んでいたり、ゲームに命をかけている人も向けのスマートフォンがiPhone 13 Proなのだ。
一方で、日常生活でスマホを使っているという人はiPhone 13で十分といえる。
自分の生活において、どこまでiPhoneを使い込んでいるかで、iPhone 13でいいのか、もう少し奮発してiPhone 13 Proを買うかを判断すればいいだろう。
(文・石川温)
石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)がある。