エレクトラ・メカニカの一人乗り電気自動車「ソロ」。
ElectraMeccanica
- EVスタートアップのエレクトラ・メカニカは、2021年末までに初の小型1人乗り電気自動車を発売する見通しだ。
- この1人乗り電気自動車は「ソロ(solo)」と名付けられ、個人および商用利用をターゲットにしている。
- はじめはソロは中国で製造されるが、最終的にはアリゾナ州メサでローカライズしたモデルを製造する予定だ。
テスラ(Tesla)のセダン「モデル3(Model 3)」、マスタング(Mustang)のクロスオーバー「マッハE(Mach-E)」などの電気自動車(EV)が市場に旋風を巻き起こしている。しかし、人気の高いEVには、ほぼすべてに共通する特徴がある。それは「乗用車」であるということだ。カナダのEVスタートアップのエレクトラ・メカニカ(ElectraMeccanica)は、この状況を変えたいと考えている。
2015年、投資家でモータースポーツ愛好家のジェリー・クロール(Jerry Kroll)は、都市交通の概念に挑戦することを目標に、エレクトラ・メカニカを共同設立し、かつて指揮を執っていた。クロールは、従来型の通勤車を作るのではなく、はるかに型破りなものを目指していた。
クロールが自動車を見直すために考えたのは、座席が1つしかない手頃な価格の街乗り用の電気自動車を開発することだった。エレクトラ・メカニカの現CEOであるポール・リベラ(Paul Rivera)は、エレクトラ・メカニカの創造力は、マイクロモビリティ(超小型軽量車両)と伝統的な輸送手段を融合するものであると強調した。
「マイクロモビリティには小さな電動スクーターから電動バイクまでさまざまなものが手に入る」とリベラは言う。
「その一方で普通乗用車のEVもある。でも普通車は1人で乗るとどうしても3、4人分のスペースが空いてしまう」
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
ElectraMeccanica
その考えは理にかなっていると言えるだろう。我々の社会全体が電力に依存することになるとしたら、物理的なフットプリント、つまり、車を動かすのに必要なエネルギー量を減らしたほうがいい。
エレクトラ・メカニカは、開発する電気自動車を1人乗りに決定した後、その車を 「ソロ(Solo)」と名付けた。そして2020年、中国のゾンシェン(Zongshen)をパートナーとして、生産を開始することを発表した。
ソロは3つの車輪と1つの座席しかないが、リベラは安全性と快適性を最優先して製造したと話している。
「3輪車でオートバイに分類されるような車両なのにも関わらず、我々は安全性を追求した。この車はボディ前後のクラッシャブルゾーン、側面衝撃吸収システム、ロールバー、トルク制限付きの横滑り防止装置などを装備している」
「そして車内には、乗用車でもお馴染みのシートヒーター、エアコン、Bluetoothなどの快適な機能がすべて備わっている」
エレクトラ・メカニカの「ソロ」の車内。
ElectraMeccanica
コンパクトなフォルムと1万8500ドル(約202万円)という低価格を実現したソロがさまざまな用途に使用され、最終的には独自のエコシステムを構築することをリベラは期待している。そのエコシステムを創り出すため、エレクトラ・メカニカは「個人用」と「配送用」という2つの大きな市場を視野に入れている。
個人が使うのであれば、手ごろな価格の電気自動車の利点はわかりやすい。一方で、「商用利用もできる。電気自動車を理解し、欲しいと思っても、手の届かない価格帯だったので買うことができなかった人たちのための車でもある」とリベラはInsiderに話している。
また商用利用の点から見れば、ラストワンマイルの配送からカー・シェアリングまで、さまざまな分野での導入が考えられる。
「もし、大学のキャンパスや高層住宅で車を共有できれば、徒歩でそこまで行ってiPhoneやアンドロイド(Android)端末で車のロックを解除し、2時間から4時間乗って戻って来ることができる。完璧だ」とリベラは話す。
エレクトラ・メカニカの「ソロ」。
ElectraMeccanica
価格を低く抑えるため、エレクトラ・メカニカは消費者に直接販売する方法を選択した。テスラ同様、伝統的なディーラーによる販売組織を必要としない形だ。
1万8500ドル(約202万円)という価格は、アメリカで販売されている他の量販EVを下回っている。国の税控除は受けられないが、いくつかの州の税控除は受けられる。例えば、オレゴン州に住んでいる人がソロを購入する場合には、2500ドル(約27万4000円)の払い戻しを2回受けることができ、価格は実質1万3500ドルになる。
エレクトラ・メカニカは、将来的には、手頃な価格でクラシックな雰囲気の電動コンバーチブル「トフィノ(Tofino)」を発売する予定だがまだ発売日は決まっていない。リベラCEOによると、今は2021年10月のイベントでソロを発表することに注力しているという。
「私は車好きな男だし、他のこともやりたいと思っているが、まずは計画を実現する必要があると考えている。それは、ソロを路上で走らせて信頼を築くことだ」とリベラはInsiderに語った。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)