- この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「アップフロントとデジタル動画 2021(Upfront TV and Digital Video 2021)」のプレビュー版。
インサイダー・インテリジェンスの最新の予測では、アメリカの2021〜2022年のテレビシーズンのアップフロント(*)での広告費は、2018〜2019年の最盛期には及ばないものの、パンデミック前に近い水準にまで回復する。
(*アメリカでは毎年春から夏にかけて、9月に始まる次のテレビシーズンの広告在庫の先行販売が行われる。この期間の取引のことをアップフロントという)
広告主による今シーズンのアップフロント支出は、前シーズンと比べ7.6%増加し、199億ドル(約2兆2000億円)に達する。この予想は、アメリカがパンデミックによる経済危機から引き続き回復していくことを前提としている。
2019〜2020年はアップフロント契約のキャンセルが増加
アップフロント広告費の推移と予測。
Business Insider Intelligence
インサイダー・インテリジェンスの「アップフロント広告費予測」では、先行販売期間に取引されるプライムタイムを含む広告枠への支出を推計。全国のネットワーク局やケーブルテレビ局が販売するリニアTVおよびデジタルTVの広告在庫を計上しているが、最終的に支払いに至らなかった契約は除外している。アップフロント契約はキャンセルされることがあり、契約時点での推計は広告主が実際に払う広告費と必ずしも一致しない。
広告代理店やブランドの広告宣伝部は、2021年のリニアTVへの広告費についてどう考えているのか。赤「2020年より増やす」、黒「2020年と同水準」、グレー「2020年より減らす」。上段「スキャッター・マーケット」、下段「アップフロント」。
Business Insider Intelligence
2020年6月に発表した前回の予測では、パンデミックの影響で広告支出が大きく減少するとしていた。実際には、予想とは違った形での減少となった。
2020年6月の予測では、2019〜2020年のアップフロント広告支出は1.4%の減少にとどまるとしていた。だが、コンサルティング会社メディア・ダイナミックス(Media Dynamics)によると、パンデミックの影響で広告主は最終的にこのシーズンのアップフロント契約のうち、30億ドル分をキャンセルした。これを反映させ、今回の予測では2019〜2020年のアップフロント広告費を6.8%減とした。
2020〜2021年は予想より悪くなかった
テレビシーズン開始前の先行販売期間「アップフロント」で売れ残った広告在庫は、その後「スキャッター・マーケット」で販売される。アメリカの広告代理店やマーケティング担当者の年間のテレビ・動画広告費の予算配分。
Business Insider Intelligence
2020〜2021年のシーズンについては、前回予想していたほど多くの広告主がテレビ市場から撤退しなかった。2020年6月時点では、このシーズンのアップフロント広告支出は27.1%減少すると見込んでいたが、広告主の支出が185億ドルに達するため、今回の予測では3.5%の減少にとどまるとしている。
2020〜2021年の減少率がそれほど大きくないもう一つの理由は、その前のシーズンの終わりに大きな撤退が起きているからだ。2020〜2021年のシーズンはその2年前と比べると、アップフロント広告費が約20億ドル減少している。
アップフロント契約の金額は、最終的に支払われる広告費と必ずしも一致しない。広告主は例年、アップフロント契約のうち約4%をキャンセルすると言われている。典型的な年とは言い難い2020年の下半期には、通常よりも多くのキャンセルが発生した。景気が回復するにつれて、ブランドは長期的な出稿計画を変更せずに済むようになるだろう。2021〜2022年は、キャンセル率がコロナ前の水準に戻るとの見込みだ。
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[原文:US TV advertisers will spend close to $20 billion in this year's upfronts]
(翻訳・野澤朋代)