出典:マイクロソフト
9月23日午前0時(日本時間)、マイクロソフトは、同社のハードウエアブランド「Surface」シリーズの新製品発表イベントをオンラインで開催した。今回のテーマは「Windows 11世代への最適化」。主力である「Surface Pro」「Surface Go」シリーズなどを中心に、多くの製品ラインナップが一新した。どの機種もWindows 11を搭載して出荷される。
その中から特に注目のものをピックアップして紹介する。
なお、記事執筆時点では価格などはアメリカのもののみが判明している。
液晶を引き出して「ペン」も使える「Surface Laptop Studio」
出典:マイクロソフト
今回の目玉であり、まったくの新製品となるのが「Surface Laptop Studio」だ。価格は1599.99ドル(約17万5000円)から。
Surface Laptop Studioは、タッチやペンが使えて、タブレット状にもなる、というSurface ProやGoシリーズが備えている「2in1」という特徴を引き継ぎつつも、よりパフォーマンスを向上し、さらに「変形型」に変わった。
Surface Laptop Studioが「変形」していく様子。目を引くデザインと機構だ。
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マイクロソフトはこれまで、性能重視の「Surfaceブランド・ノートPC」として、「Surface Book」シリーズを展開してきた。これは、13.5インチもしくは15インチのディスプレイを備え、ディスプレイ部が「分離」するノートだった。
ディスプレイ部にCPUが入っていて、ゲームやCGなどGPUを多用する負荷の高い処理は、キーボード側に入っているNVIDIA社のGPUを活用する形になっていた。
Surface Laptop Studioは「NVIDIAのGPU搭載で、ゲームやCG制作ができる性能を持つ」という点ではSurface Bookを引き継いでいる。今回のモデルでも「NVIDIA GeForce RTX 3050 Ti」を搭載しており、「最高性能のゲーミングPCほどではないが十分に性能は高い」という、Surface Book時代の位置付けを引き継いでいる。
内部の基板。高いグラフィックス性能のためにNVIDIAのGPUを内蔵している。
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重量は約1.8kgで、Surface Bookシリーズに近い。ビジネス市場向けにはよりハイエンド・グラフィックス制作作業に向いた「NVIDIA GeForce RTX A2000」搭載モデルもある。
大きく変わったのは、ディスプレイ側が分離して単体でタブレットとして使えるという構造ではなく、「タッチ機能内蔵のディスプレイがパタパタと開き、形を変える」構造になった点だ。
ディスプレイを手前に引き出すような形になっており、一般的なノートPCのように使うこともできれば、ディスプレイでキーボードを隠し、タブレットのように使うこともできる。
ペンの収納機構。スライドさせるようにしまう。
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デスクトップ側の「Surface Studio」と、ラップトップ型の「Surface Laptop」を合わせたようなデザインになっている。
今回からペンは平らな「Surface Slim Pen 2」(別売)が基本になり、本体下のすき間部分に収納し、同時に充電もできるようになっている。このあたりは設計の芸が細かい。
人気の「Pro」が一新、狭額縁化で13インチ液晶搭載、性能は2倍
実に2年ぶりにフルリニューアルしたSurface Pro。名称も「8」へ。価格は1099.99ドル(約12万円)から。
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Surfaceシリーズの中でも最もポピュラーであり、「Surfaceといえば」というイメージを定着させたのが、2in1タイプの「Surface Pro」シリーズ。2年ぶりにSurface Proが「8」へと完全リニューアルした。価格は1099.99ドル(約12万円)から。
プロセッサーはインテルの「第11世代 Core iシリーズ」に変わり、2019年発売の「Surface Pro 7」に比べ倍の速度になった。この点は、今のタイミングに合わせた順当な進化といえる。
より大きいのはディスプレイの進化だ。いわゆるディスプレイの「縁」が細くなった結果画面は11%大きくなり、12.3インチから13インチになった。解像度も10.8%増えた2880×1920ドットになり、12.5%明るくなった。
ディスプレイの周囲、いわゆる「額縁」が薄くなり、スタイリッシュなムードが高まった。画面サイズそのものも13インチへと大きくなった。
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さらに、画面表示のフレームレートが120Hz(出荷時設定は60Hz)になった結果、ペンやタッチ描画のスムーズさは増している、という。ペンはSurface Laptop Studioと同じSlim Pen 2で、キーボードもSlim Pen 2が収納可能なものに変わっている。
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また、インタフェースがThunderbolt 4×2に変わり、GPUの強化とともに、2つの4Kディスプレイを外付けして使えるようにもなっている。
一方、重量はPro 7の最大約790gから100g重くなり、約891gに増えている。
低価格な「Go」とモバイルの「Pro X」は小幅な変化
「Surface Go 3」。価格は399.99ドル(約4万3800円)から。
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低価格モデルの「Surface Go」と、CPUにARMベースのMicrosoft SQシリーズを搭載した「Surface Pro X」は、小幅なスペック変更にとどまった。
GIGAスクール向けに入れているSurface Goは「3」に進化。CPUの世代が変わり、若干高速化している。価格は399.99ドル(約4万3800円)から。
Surface Pro Xは基本性能の変更なし。ARM版WindowsはWindows11になり、同梱のOffice365は64ビットARM版に変わった。新たにWi-Fi専用モデルも用意。
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Surface Pro Xは基本性能を変更していないが、Windows 11で「x86アプリケーションのエミュレーション動作」が改善された。同梱されるOffice 365も「64ビットARM版」になったという。また、基本的にLTEモデルだけだったが、今回からWi-Fiのみのモデルが用意されるようになった。結果価格が下がり、899.99ドル(約9万8500円)からになった。
開閉式スマホ「Surface Duo」が5G対応。日本では2022年前半発売
日本未発売のスマートフォン「Surface Duo」は新たに5G対応に。ただし、日本発売予定は今回もなし。
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もう1つ、Windows搭載でない製品も発表されている。
マイクロソフトは2020年より、アメリカなど一部地域向けに、OSとしてAndroidを使い、液晶ディスプレイを2枚使った「開閉式スマホ」である、「Surface Duo」を販売している。
2020年モデルは4Gのみの対応だったが、2021年のモデルは5G対応になった。カメラなど多数の改善が加えられている。
アメリカなどでは10月から発売されるが、日本は「2022年前半に発売」となっている。
(文・西田宗千佳)
西田宗千佳:1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「ポケモンGOは終わらない」(朝日新聞出版)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)、「ネットフリックスの時代」(講談社現代新書)、「iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)がある。