アマゾンのAlexaに対応する車載用デバイスのEcho Auto。
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アマゾンがホームセキュリティシステム、Alexa Guard(アレクサ・ガード)の機能を車に連携させようとしている。デジタル音声アシスタントのユーザーエンゲージメントと収益化機会の向上がその目的だが、同時に自動車メーカーが開発に時間をかけすぎているとアマゾン側が不満を抱いているということも、アマゾンの内部文書で明らかになった。
2019年に発表されたAlexa Guardは、窓ガラスの割れる音や煙感知器の警報などの異常音を検知すると、ユーザーに警告を発するホームセキュリティシステムだ。さらに留守中には、照明をつけたり消したりして、あたかも在宅中であるかのように見せることもできる。
Insiderが入手したアマゾンの内部文書によると、車用Alexa(アレクサ)を手掛けるAlexa Auto(アレクサ・オート)のチームは、2020年末、Alexa Guardと車を連携させる計画を練っていた。連携によって利用可能となる機能は主に2つだ。自宅の危機を検知して車内のAlexa App(アレクサ・アプリ)に通知を送る機能と、車自体の窓が壊されたりや衝突など異常事象が起きた際にユーザーに知らせる機能だ。
「車が使われていないときでもコネクティビティと電力が確保できる車であれば、Alexa Guardは車上荒らしの音やその他の情報を捉え、必要に応じてユーザーに通知できる」と計画書には記されている。
Alexa Autoのチームが別途検討していたのは、低い月額料金で提供するロードサービスだ。牽引など一定のサービスについて、運転手は車からAlexaを通じてロードサービス業者を呼ぶことができるというものだ。さらに、アマゾン傘下のアマゾン・リング(Amazon Ring)が提供するホームセキュリティ機器との連携を含めたビークル・インテグレーションも議論された。
「自宅や車からAlexa Guardがアウェイ・モードに設定されると、自宅のAlexaが煙感知器の警報やガラスが割れる音を検知した場合、スマートアラートを車載Alexa宛てに送る」と計画書の説明にはある。
車両セキュリティ機能をAlexaに搭載する計画は、音声アシスタント機能を自宅でも外出先でもどこでも利用可能にしようとするアマゾンの野心の表れだ。2014年にAlexaをリリースして以来、アマゾンは音声アシスタントを消費者の生活のあらゆる場面で利用してもらおうと、これまでに電子レンジ、スマートテレビ、さらには壁掛け時計にまでAlexaを組み込んできた。さらに2018年には、車の中でAlexaの機能を使うためのプラグイン型小型機器エコー・オート(Echo Auto)をリリースした。
Alexa Guardの車両連携機能がいつリリースされるのか、あるいはそもそもアマゾンが今でもこの計画を遂行するつもりなのか定かではない。Insiderの取材に対し、アマゾンの広報担当者はコメントを控えるとした。
進まない車のコネクティビティ
Alexa事業は、とても幸先のよいスタートを切ったが、最近は成果がはっきりしない。アマゾンによると、既に数億のAlexa関連デバイスが消費者や事業者に利用されているものの、その利用の仕方となると、音楽を聴いたり、天気を尋ねるといったような基本的な機能に限られているようだ。その結果、思うように収益が上がらない。
内部文書が示す2021年のAlexa Autoのチーム重点目標は、エンゲージメントの向上とユーザー、収益の増加だ。Alexaとつながる車両、すなわちエンドポイントの数は、2021年の1200万から2022年には2900万に増加するとチームは予想している。また、外出先で使用するドライブ・モード(Drive Mode)などモバイルデバイス用Alexa Appの月間アクティブユーザー数は、2020年6月時点で5600万に達した。
アマゾンは最近、車載Fire TVやAlexaのモバイルアプリ上で使える新たな車内用機能(「アレクサ」と呼びかけることで作動するナビゲーションなど)もリリースした。
Alexaの収益化を実現するために重要な分野のひとつは、ビークルセキュリティだと内部文書には記されている。アウディなど自動車メーカーは、Alexa機能を車に統合することで車のセキュリティ機能やカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上を図ろうとしている。
Alexaは、BMW、フォード、トヨタなど各メーカーが生産する数十モデルで利用可能だ。2021年9月21日、ゼネラル・モーターズ(GM)はアマゾンとの提携を発表した。GMグループの車載セキュリティシステム、オンスター(OnStar)とAlexaの連携を進めるためだ。
もっとも、Alexaを車に統合するのは、これまであまり順調とはいえなかった。特に課題となっているのは、自動車メーカーとの提携を通じた統合とリリースに長い時間がかかることだ。メーカーによっては、2年を費やすところもある。その「主な原因はメーカー自体の問題」だと内部文書は指摘する。例えば、ボルボでは、車載Alexa関連の開発をボルボ社内で行うと、リリースが12カ月遅れるという。
車のコネクティビティ(ネットワークを通じ、さまざまなデータのやりとりを可能にするもの)も、もう一つの課題だ。大半の自動車メーカーは、車のコネクティビティをサブスクリプション型の有料オプションとして消費者に販売している。最初の無料トライアルの期間終了後、契約を継続する消費者はわずか約5%だ。
「車のコネクティビティの普及が進まないと、エンドポイント数が制限され、Alexaのエンゲージメント、認知、収益が影響を受ける」と内部文書は記している。
[原文:Leaked documents reveal an Amazon plan to bring Alexa's home-security system to your car]
(翻訳:住本時久、編集:大門小百合)