採用面接で適切な質問をすることは、応募したポジションに自分が適任であることを面接官にアピールする機会だ。うまくいけば、「この人を雇いたい」と面接官に思ってもらえる。
では求人に応募する際、求めている仕事が自分に合うかどうかをどう見極めればよいのだろうか? キャリアの専門家、テリ・ホケット(Teri Hockett)はこう語る。
「候補者が質問をすることで、面接のダイナミズムや、採用担当者に与える印象ががらりと変わることがあります。他では知り得ない情報が得られることもありますしね」
用意しておく質問の数は、面接中に回答された場合に備えて、最低でも4つを目安にしよう。
以降で、30のスマートな質問例を紹介する。これらの中からまだ面接官が答えていない質問を選んで尋ねれば、仕事内容や企業についての理解が深まり、面接官に好印象を与えられるだろう。
1. 質問にはすべてお答えできたでしょうか?
実際に質問する前に、何か掘り下げて説明すべきことがないか面接官に確認しよう。あるいはこんなふうに尋ねてもいいだろう。
「いくつか質問があるのですが、その前に確認させてください。これまでの質問には十分にお答えできたでしょうか? もっと詳しく説明したり、例を挙げる必要があればおっしゃってください」
面接官はこうした申し出を快く思うだろうし、候補者にとっても面接の手応えを知るよい手段になる、と指摘するのは、エグゼクティブ・リクルーターとして30年以上の経験を持つビル・ヨーク(Bill York)だ。
面接官が「ええ、どの質問に対してもしっかりお答えいただきました」と返してくれば、うまく乗り切ったと判断できる。「では、○○についてもう少し教えてください」「あなたがおっしゃっていた××の意味を詳しく教えてください」と言われたら、説明をし直すチャンスだと捉えよう。
2. このポジションに一番ふさわしいのはどんな人物ですか? それと比較して私はどうでしょうか?
この質問を勧めるのは米求人サイト運営会社の元副社長、エイミー・フーバー(Amy Hoover)だ。自分のスキルが、企業の求めているものと一致しているかどうかを手っ取り早く判断できる。
もし一致していなければ、間違ったポジションを追い求めるのは時間の無駄。その求人のことは諦めるべきとフーバーは助言する。
3. 上司はどなたになりますか?
ビッキー・オリバー(Vicky Oliver)は著書『301 Smart Answers to Tough Interview Questions(未訳:面接でのタフな質問に対する301のスマートな答え)』で、上司が複数いる場合に備え、役職の序列を聞いておくことが大切だと述べている。
複数の上司の下で働くなら「社内の勢力図」を把握する必要がある。また、複数の部下を持つ場合は、入社を決める前に部下と面談しておくのも賢明だという。
4. このポジションに就いた人のキャリアパスを教えてください。
こう尋ねれば、発展性のある仕事なのか否かが分かる。
5. どの企業を競合他社と想定していますか? 他社に負けない強みは?
米求人サイト運営会社「スナガジョブ(Snagajob)」の元CEOピーター・ハリソン(Peter Harrison)いわく、気の弱い人にはおすすめしない質問だが、こう尋ねることで、企業が大きな目標を達成するために自分がどう貢献できるかをすでに考えているのだとアピールできる。
6. 仕事をこなすためのハードスキルに加え、どのようなソフトスキルがあればこの会社に貢献できるでしょうか?
企業がどのようなスキルを重視しているかを知れば、社風や経営陣の価値観をより深く理解する手がかりになるほか、自分がその企業になじめそうか判断できる、とフーバーは言う。
7. どんな社風ですか?
こう質問することで、どんな企業理念なのか、従業員の幸せを優先している企業なのかをざっくり判断できる、とフーバーは話す。
8. 今の仕事で一番気に入っていることは何ですか?
こう尋ねると、面接官と仲間意識を醸成できる、とフーバーは言う。「面接官もご多分に漏れず、自分自身や自分がよく知っていることについて話すのが好きなんです」
またこの質問は、その企業で働くことの醍醐味を、現職社員の口から聞く機会にもなる。
9. 上司の方との仕事の進め方について具体的に教えてください。
上司が部下をどう扱うかを知っておくことは重要だ。組織の成長に貢献するべく自分の力を発揮させてくれるタイプの上司なのか、この質問で判断しよう。
10. 合否の判断をしやすくするために、何か他に提出できるものはありますか?
シンプルな質問だが、こう尋ねても失礼にはあたらないし、万全の態勢で挑めているかも確認できる。「節度ある熱意と意気込みが伝わってくる」とフーバーは評する。
11. 会社全体で見て、コアバリューに沿う行動はどのくらいできていると思いますか? 改善している点はありますか?
企業の欠点は入社前に知っておきたいもの。この質問なら節度を保ちつつ確認できるとハリソンは言う。また、入社前に社内のことをもっと知りたいという積極的な姿勢をアピールすることもできる。
12. このポジションの課題は何ですか?
もし面接官が「課題は何もない」と答えたら、業務を通じた成長機会があるのか慎重に見極めなくてはいけない。
13. 採用していただいた場合、1日の仕事の流れはどのようになりますか?
ハリソンいわく、こう質問することで熱意をアピールしつつ、本当にやりたいと思える仕事かを判断できるという。
「任される仕事の内容や責任範囲について率直に話し合えば、その仕事が自分のやりたいことなのか、業務をうまくこなせるだけのスキルを持ち合わせているかを確認できます」
14. 過去にこのポジションで昇進した人は、どのような成果を挙げましたか?
この質問から、企業が成果をどう測定しているのかが分かる。
15. どんなタイプの社員が成功していますか? 仕事で成果を出したり昇進したりするうえで最も重要な資質は?
こう尋ねることで、入社後のことを気にかけているとアピールしつつ、自分がそのポジションに適しているかの判断材料にもなる、とオリバーは著書に記している。「候補者に求められている資質を教えてもらい、その人物を頭に思い浮かべてください。あなたと重なる部分が多くなければいけません」
16. あなたは5年後どうなっていると思いますか?
女性用シューズケア会社ソールメイツ(Solemates)の共同創業者であるベッカ・ブラウン(Becca Brown)は以前、ゴールドマン・サックスでさまざまな職務を経験し、年間20~30人の求職者と面接していた。当時、候補者からこの質問が出ることを期待していたと言い、こう続ける。
「私はこの質問が好きなのですが、答えにくいと思われたのか、誰からも尋ねられませんでした。誰もが自問すべき大事な質問ですから、もし候補者がこの質問をしたら目立っていたでしょうね。
これは尋ねるべきいい質問だと思いますよ。面接官がこの先どのようにキャリアを積むのかを知ることで、その道筋が自分のキャリア目標に沿うかどうか判断できますから。
両者のキャリアパスが完全一致する必要はありませんが、面接官の方向性をある程度把握しておくことは候補者にとっても役に立ちます」
17. 他にお会いすべき人、お会いしたほうがいい人はいますか?
フーバーによると、こう尋ねて「では配属先の社員と面談してください」と返ってきたら、その企業ではチームワークを重視していると分かる。また「面接があと4回あります」と言われたら、採用のタイムラインも把握できる。
18. 優秀なチームを育てるために、どんなサポートがありますか?
この質問からは、会社とともに成長しようという意気込みが伝わってくる、とハリソンは言う。離職率が高く、長く活躍してくれる人材を求めている時給制の職場などでは特に評価される質問だ。
また、その企業が人材育成に力を入れているか、社員の成長に対して周囲が協力的かどうかも知ることができる。
19. 従業員のキャリア形成へのサポートについて詳しく教えてください。
ここはキャリアを積める職場なのか、入社を決める前に知りたい候補者は多いはずだ。だが、昇進できるかと尋ねたのでは、このポジションでは物足りないのかと面接官に思われてしまう。そこで「キャリア形成へのサポートについて教えてください」と尋ねることで、地雷を踏まずに昇進余地を聞き出すことができる。
マイクロソフトとアマゾンで人事マネジャーを務めた経験を持つミカエラ・カイナー(Mikaela Kiner)は、「目の前の仕事を経験してもいないうちから、その次の仕事に期待するような言い方は控えるべきです」と釘を刺す。
その代わり、オープンエンド型の質問をするなり、過去の従業員の成功談を聞くなりして、仕事を通じてどのように成長できるのか、遠回しな質問で情報を得るとよい。
20. 従業員同士の意見が対立した場合、どう対処しますか?
意見が対立したときの解消法を知ることで、社風をより明確に把握できるとハリソンは言う。だがそれ以上に、この質問をすることで、意見の相違に理性的に対処することが組織の成長と成功に不可欠なことを、あなたが理解しているとアピールできる。
21. これは新設のポジションですか? もしそうでなければ、なぜ前任者は退職したのですか?
こう聞くのは気が引けるかもしれない。だが実は決して珍しい質問ではなく、職務に不満を感じていた理由を知りたいと思うことは、あなたが賢明で論理的であることを示しているとハリソンは言う。
ステップアップのため退職したことが分かれば、それもまた有益な情報になる。
22. 選考の過程で同僚となる人たちとお会いすることはできますか?
選考プロセスでは、同僚やマネジャーと会う機会を必ずつくることが大切だとフーバーは言う。もしその機会がもらえないなら「入社の判断は慎重に」とアドバイスする。
23. 貴社はどのような問題に直面していますか? 担当部署ではどんな取り組みをしていますか?
社内の問題であれば面接官は間違いなく自分の意見を持っているので、会話のキャッチボールが始まるはずだとオリバーは著書で述べている。また、その答えから面接官の性格や野心がうかがえるので、次の質問へとつながっていく可能性が高い。
24. 成果はどのように評価していますか?
社員の成果の評価の仕方も知るべき重要なポイントだ。この組織でキャリアアップするには何が必要なのか、企業と自分の価値観が合っているかをこの質問で判断できる。
25. 貴社は3年後にどうなっていると思いますか? その将来像にこのポジションはどう貢献できますか?
こう質問することで、あなたが大局的に物事を捉えていること、会社に長く留まりたいと考えていることをアピールできる。どんな企業の面接でも好印象を与えられる質問だとハリソンは言う。
26. 離職率はどのくらいですか? 離職率を減らすためにどんな対策をしていますか?
一見不躾な質問と思われがちだが、安定した仕事に就くことの重要性を理解しているスマートな質問だとハリソンは主張する。「企業の実態はどうなのか、従業員は仕事に満足しているのか、その内情が手に取るように分かります」
27. 貴社のCEOについて○○を読みました。これについて詳しく教えていただけますか?
面接を受ける企業の下調べは必ずしておくこと。質問に答える際に自分を輝かせるだけでなく、質問の機会を与えられたときに、確かな情報を持ち、関心を持っているという姿勢を見せるためだ。
この質問なら、その企業やリーダーに興味を持ってしっかり調べてきたことを明確にアピールできる、とオリバー。
28. これまでに取り組んだプロジェクトや巡ってきた機会の中で、最も興味深いものは何ですか?
「この質問は好きですね。自分自身の経験について考えさせられるので。自分が取り組んできたこと、いま取り組んでいることによって回答は変わりますが、自分自身に挑戦して前進しているかぎり、理論的には常に変化するはずです」とブラウンは語る。
具体的な事例を尋ねると、仕事の内容や職種による社員の役割をよりよくイメージできるという。
29. ご自分をどのようなタイプのリーダーだとお考えですか?
「例えば、従業員に裁量権を持たせるタイプなのか、ある程度管理するタイプなのか、あるいは部下と一緒に汗を流すタイプなのか、といったことが分かります」と話すのは、米人材獲得ソフト運営会社のスマートリクルーターズ(SmartRecruiters)の創業者兼CEOであるジェローム・テルニンク(Jerome Ternynck)だ。
30. まだお話しされてないことで、働くうえで知っておくべきポイントはありますか?
フーバーいわく、これはひたすら話し続けていた状態から解放される、仕上げの質問だ。この質問から、「思いもよらなかった重要な質問に対する答え」が得られるかもしれない。
(翻訳・西村敦子、編集・常盤亜由子)
[原文:35 brilliant questions to ask at the end of every job interview]