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「多様性こそが企業の活力」女性管理職50%超えの日本ロレアルに見るダイバーシティの意味

企業活動におけるSDGsへの取り組みの注目度が高まっている。

ロレアルグループは、フランスに本社を置く世界最大の化粧品会社。持続可能な開発目標(SDGs)が採択される前の2013年から、グループ全体で2020年に向けた達成目標を掲げ、環境問題と社会的課題への貢献を目指してきた。

2020年には、新たに2030年に向けた次のステップとして「ロレアル・フォー・ザ・フューチャー」を始動。

「プラネタリーバウンダリー」(地球の限界)を尊重した環境面への配慮はもちろん、世界をより「持続的」にするための活動に引き続き力を入れていくとしている。

グループ全体としてだけではなく、各国のロレアルでもそれぞれの国で抱える課題に向けた取り組みが進む。日本において、ロレアルの取り組みはかなり先進的だ。

日本ロレアルが国内の課題として注力しているのは大きく2つ。

1つは二酸化炭素の排出量削減。

2016年からグリーン電力の採用を開始。2022年には、国内の全拠点のカーボンニュートラル化を達成する見込みだ。

スイスのテックベンチャーGjozaと節水を目的に共同開発したシャワーヘッド(左)とウォーター・セーバー(右)

スイスのテックベンチャーGjozaと節水を目的に共同開発したシャワーヘッド(左)とウォーター・セーバー(右)。美容院などで使用される水を最大80%削減できるという。水の効率的な利用もSDGsとして定められている。

提供:日本ロレアル

そしてもう1つ、日本ロレアルが国内の課題として認識し注力しようとしているのが、他の先進国に大きく遅れをとるダイバーシティやインクルージョン(D&I)分野での取り組みだ。

日本ロレアルでは、とりわけジェンダーギャップの解決に向けた取り組みの先進性が目立つ。

国内の企業では類を見ないペースで女性リーダーの登用を実現していることはもちろん、社外での女性活躍支援にも力を入れている。

日本ロレアルが女性活躍支援に力を入れる理由、それを実現するポイントをヴァイスプレジデントコーポレート・コミュニケーション本部長の楠田倫子氏に聞いた。

多様な個性が企業を成長させる

日本ロレアル、ヴァイスプレジデントコーポレート・コミュニケーション本部長の楠田倫子氏

日本ロレアル、ヴァイスプレジデントコーポレート・コミュニケーション本部長の楠田倫子氏。

提供:日本ロレアル

世界経済フォーラムが毎年発表する、各国のジェンダー格差を数値化した「ジェンダー・ギャップ指数」。

2021年、日本は156カ国中120位で、依然として他の先進国との差は広がる一方。この結果は管理職の男女格差、収入面の格差などが大きく反映されたものだ。

日本政府は、2020年までに女性の社会進出を測る指標の1つとなる女性の管理職比率を30%まで上昇させることを目標として掲げていたが、現状では先送りされている。

国際労働機関(ILO)が2019年3月に発表したレポートによると、世界の女性管理職の比率は27.1%。

日本国内の「女性管理職の平均割合」は、2021年8月に帝国データバンクが発表した資料によると、過去最高とはいえまだ8.9%と低水準だ。

世界ジェンダーギャップランキング2021

出典:世界経済フォーラム"Global Gender Gap Report 2021"をもとに編集部作成

一方日本ロレアルでは、管理職に就く女性の比率は2006年の段階でさえ25%。2020年末には52%に達した。さらに役員の女性比率も、2020年末の時点で38%と高く、2025年末までに50%を目指すとしている。

「会社四季報」が発表した、上場企業(3370社)の2020年7月末時点の女性役員比率がわずか6.2%であることを考えると、群を抜いている(資料)。

国内では二の足を踏む企業が多い中、これほど「女性活躍」を実現できている背景には、出産や子育てなどのライフイベントに関係なく活躍できる環境、多様性を当たり前のように活かそうとする土壌が整っていることにある。

「わたくしたちは、多様性こそが企業としての活力、成長の源泉と考えています。多様性というのは、ジェンダーだけではありません。多様なバックグラウンドを持つ人たちが、それぞれの個性と能力を発揮するということが、結果的に会社としてのパフォーマンスを上げていくことになるということを愚直に信じています」(楠田氏)

それを端的に示しているのが、ロレアルの人事制度だと楠田氏は指摘する。

日本ロレアルの人事制度では、年2回の面談を実施。

社員それぞれが自身のライフプランも含めてこの先のキャリアをどう積んでいきたいのか、主体的に設計し、上司へと伝える場として位置づけられている。

そこで全員に共有されているのが「自身がどうありたいか」という、いわば起業家精神だ。

「男性だから」「女性だから」「出産したばかりだから」という固定観念や、年功序列に基づくキャリアプランは用意されていない。

どんなキャリアを積みたいかは、100人いれば100通りの考え方がある。

この個人の意思を尊重する人事制度は、結果的に男女関係なく活躍できる環境を生み出しているのではないかと楠田氏は指摘する。

女性の妊娠・出産からの復帰率を見ても、それは如実に表れている。日本ロレアルの社員の育休からの復帰率はほぼ100%。楠田氏によると、その多くが時短ではなくフルタイムでの復職だという。

第一子出産前後の就業異動の状況

出典:内閣府男女共同参画局

「戻ってくる価値があるからみんな戻ってくるのだと思います。出産して2〜3年、子どもが小さい間は仕事と子育ての両立で大変かもしれません。でも、一時的に職場を離れても、みんな戻ってきて両立しているし、昇給・昇格も男女で差があるということはありません。乗り越えた先にはやりがいのある仕事が待っている」(楠田氏)

意外に思うかもしれないが、ロレアルには「女性向け」と題したキャリアに関する研修や講座はない。

「男だから」「女だから」という枠組みではない、個人を尊重する企業文化が、結果的に現代の課題とされる「女性活躍」を推し進めることにつながっていると言えるだろう。

ここ数年、日本国内でもSDGsの達成、女性活躍を掲げる企業は増えているが、その歩みは遅い。

楠田氏はこれからのビジネスにおいて、これらの課題に取り組む重要性を次のように語る。

「D&Iと環境問題どちらにも言えることですが、真剣に取り組まない企業は消費者からも、社会からも、金融マーケットからも選ばれなくなります」

優先度が高い「社会的弱者」への支援

未来への扉

社内での取り組みだけではなく、対外的な女性への支援も実施している。

撮影:三ツ村崇志

ロレアルでは社内における取り組みだけではなく、社外に対する女性活躍支援にも力を入れる。

ロレアルグループでは、社会的に脆弱な人々への支援を極めて優先度の高い活動と位置付けており、2030年までに全世界で社会経済的弱者10万名に雇用機会を提供することを目指している。

日本ロレアルが進めてきた社外での女性支援の取り組みもその1つだと言える。

国内では2016年からNPO法人と組んだシングルマザーの就労支援プログラム「未来への扉」を展開。

2021年9月までに130名強のシングルマザーが履修し、56%以上の受講者の収入増を実現している。

日本ではシングルマザー世帯の困窮が喫緊の課題とされている。コロナ禍においてその深刻さが増しているとの報道も多い。

またロレアルは創業者が化学者であるということもあり、科学分野における女性活躍支援も手厚い。

「女性研究者への支援は、科学の発展そのものにも欠かせません。これまでの環境は女性研究者のキャリア形成には不十分で、サイエンス分野での女性活躍が遅れてきました」(楠田氏)

OECDの調査によると、日本の理系分野に占める女性の割合は加盟国の中で最低。国内の研究現場でのジェンダーバランスは大きな課題とされている。

ロレアルグループでは1998年、ユネスコ(国際連合科学文化教育機関)と連携し、科学の発展に寄与した優れた女性科学者を称える「ロレアルーユネスコ女性科学賞」を創設。2021年3月には、日本から東京大学工学系研究科の野崎京子教授が受賞している(日本人科学者の授賞は7人目)。

国内では、2005年に「ロレアルーユネスコ女性科学者 日本奨励賞」を創設。これまで59名の若手研究者に奨学金による支援を進めている。

D&Iの実現は企業の枠を越えて

ロレアル

ロレアルでは、長らく女性科学者の支援にも取り組んでいる。写真は、2019年のロレアル-ユネスコ女性科学賞日本奨励賞の授賞式の様子。物質科学、生命科学を専門とする4名の若手女性研究者が選ばれた(写真中央4名)。

提供:日本ロレアル

企業の中には、ジェンダーギャップの解消やインクルージョンに関する取り組みなどに力を入れたくても、まずはどこから最初の一歩を踏み出せば良いのかさえ分からないケースもある。

企業としていかにこの問題に向き合っていくべきか、楠田氏は

「社内風土の刷新や制度面での整備などに加えて、外部有識者の知見を得たり、他企業や団体と連携したりすることも1つの進め方ではないかと思います」

と語る。

日本ロレアルは2021年3月に、新プロジェクト「日本ロレアル女性エンパワーメント・アドバイザリー・ボード」を立ち上げた。村木厚子氏(津田塾大学・客員教授)、川合眞紀氏(分子科学研究所長)はじめとする各セクターの女性有識者と協働し、社内・外で女性のエンパワーメントの推進を図っていくとしている。

「ロレアルのD&Iのプロジェクトでは、企業の枠を超えて活動しています。女性科学者向けの賞はユネスコと創設しました。シングルマザー支援プロジェクトはNPO法人と連携していて、取引先の企業にも働きかけて雇用創出を実現できています。


『ジェンダーギャップ の解消は経営課題の中核である』という意識を持つことは、ダイバーシティを進める上でとても大切だと思います」(楠田氏)

(文・笹谷由佳、編集・三ツ村崇志


※日本ロレアルは、サステナビリティ経営に取り組む企業を表彰するBusiness Insider Japanのアワード「Beyond Sustainability2021」のD&I部門にノミネートされています。ノミネート企業23社の中から受賞した5社が登壇するオンラインイベントが、10月4日~8日に開催されます。詳しくはこちらから。

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