Heather Ainsworth/AP
- 春の終わりに霜が降りたため、アメリカの一部地域ではリンゴの収穫量が例年に比べて少なくなる見込みだ。
- リンゴの収穫量の減少と労働力不足が重なり、リンゴ園やリンゴジュースを生産するサイダーミルでは値上がりの可能性がある。
- リンゴの収穫量が少ないため、リンゴ狩りを全面的に中止するリンゴ園もある。
ミレニアル世代の若者には残念なお知らせだ。
アメリカで秋の恒例行事となっている"リンゴ園めぐり"は、今年はちょっと高くつきそうだ。
気候変動と労働者不足が重なり、ミシガン州やウィスコンシン州といった多くの地域で、リンゴ園やリンゴジュースを製造・販売するサイダーミルの料金が値上がりしている。南東部の産地などでもリンゴの収穫量が減少している。
業界団体アメリカリンゴ協会(USApple Association)は8月に発表した『アップル・アウトルック・レポート』の中で、業界が深刻な労働力不足に直面していると警鐘を鳴らし、それは新型コロナウイルスのパンデミックよりも前に始まっていたと指摘した。
「国内労働者は、わたしたちが補充するよりも早いペースで失われている」と同協会の業界分析ディレクター、クリス・ガーラック(Chris Gerlach)氏はレポートに書いた。農業分野の雇用は全体的に減少しているが、リンゴ園ではさらに顕著だ。ガーラック氏によると、2014年から2020年の間に農作物の生産に携わる従業員の数(年間平均)は3%減少したが、リンゴ園では20%も減ったという。
地元紙『FDL Reporter』によると、ウィスコンシン州では春の終わりに霜が降りたせいで、2021年のリンゴの収穫量は少なめだという。そのため、リンゴ園兼サイダーミルのザ・リトル・ファーマー(The Little Farmer)では、今シーズンのリンゴ狩りを中止し、リンゴジュースよりもキャラメル・アップルや焼き菓子などの商品を優先して販売するという。また、人手不足のため、現時点では冷凍アップルパイの提供ができないとFacebookに投稿している。
ミシガン州でも4月下旬にひどい霜が降り、多くの生産者が被害を受けたと『Detroit Free Press』が報じている。そのため、一部のリンゴ園が今年のリンゴ狩りを取り止め、多くのサイダーミルが他の生産者からリンゴを調達する必要に迫られている。そこへ持ってきてコストが上がり、入手できない品種もあるという。
「全体的にこれまで見たことがないような状況です」とデクスター・サイダーミル(Dexter Cider Mill)のオーナー、ナンシー・スタインハウアー(Nancy Steinhauer)さんはDetroit Free Pressに語った。
「輸送費は値上がりし、物の値段も上がり、リンゴの価格も大幅に上がっています」
同じくミシガン州にあるディールズ・オーチャード・サイダー・アンド・ミル(Diehl's Orchard Cider and Mill)」では、コストを相殺するために、今シーズンはリンゴジュースの価格を1ガロン(約3.8リットル)あたり8.5ドル(約960円)から10ドル(約1130円)に値上げしたと、同紙の取材に答えている。
全体としては、ミシガン州のリンゴ生産者は2021年の収穫量を1825万ブッシェルと見込んでいると、Detroit Free Pressはアメリカリンゴ協会のデータを引用して報じている。2020年は2200万ブッシェルだった。
搾りたてのリンゴジュースを楽しむカップル。
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ノースカロライナ州では、春の凍り付くような寒さが「広範囲かつ大規模な作物の被害や損失」につながったと、ノースカロライナ州立大学Mountain Horticultural Crops Research and Extension Centerのトーマス・コン(Thomas Kon)教授はリンゴ酒の業界団体American Cider Associationに語っている。
「残念ながら、南東部のリンゴ業界の多くの人々にとって、2021年は厳しい年になるでしょう」とコン教授は話した。
初夏のワシントン州を襲った猛暑が現地の作物にも影響を及ぼすかもしれないと地元紙『Wenatchee World』に語ったのは、Washington State Tree Fruit Associationの広報担当者ティム・コビス(Tim Kovis)氏だ。
「協会員からの報告では、6月下旬から7月上旬にかけての初夏の暑さが問題でした」とコビス氏は話している。
「木は人間と似ています。気温が少し高くなると、やや無気力になって、果実の成長が遅れるのです」
北東部の生産者からは順調なリンゴの収穫が報告されているものの、American Cider Associationによると、マサチューセッツ州やニューヨーク州といった他の地域は、生育期に虫害や火傷病という大きな被害を与える病気に悩まされたという。
アメリカリンゴ協会のデータによると、今シーズンのアメリカのリンゴの生産量は2億6500万ブッシェル(111億ポンド、約503万トン)を超える見込みで、昨シーズンから2.7%増となりそうだ。
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2010年代半ば、アメリカではリンゴ狩りがミレニアル世代の典型的な遊びの1つとなった。インスタグラムの台頭と、パンプキン・スパイス・ラテといった秋のあらゆるものの人気に後押しされた。
それは当初、一部の生産者の間で「動物園の展示のようだ」と混乱を招いたし、これまでのようなリンゴのまとめ買いをする客ではなく、週末に写真撮影を目的として気軽にリンゴ狩りに来る客を受け入れるために、ビジネスモデルを変えた生産者もいたと、『The Atlantic』は2015年に報じている。
2020年、リンゴ狩りは夏のひまわり畑や秋のパンプキン・パッチ(ハロウィーン用のカボチャを売っている場所)を訪れる遊びと並んで、家から出たい人々にとってコロナ禍でも安全な屋外活動の1つとなった。2020年10月、複数のリンゴ狩り農園がニューヨーク・タイムズの取材に、ものすごく忙しいと話していて、中には新しいリンゴが熟すのを待つために、一時的に農園を閉めなければならないところもあったという。
[原文:Sorry, millennials: Apple picking is probably going to be more expensive this year]
(翻訳:大場真由子、編集:山口佳美)