電力やガスのプラットフォームサービスや電力データを活用したSaasビジネスを展開するENECHANGE(エネチェンジ)は、9月30日、同社が運営参画するJapan Energy Capital合同会社を通じ、「Climate Tech」(※)と呼ばれる脱炭素分野の海外エネルギーベンチャー企業への投資に特化した「脱炭素テックファンド」を組成することを発表した。
同ファンドには、日本ユニシス、東芝エネルギーシステムズも参画。今後さらに出資者を募りながら、総額約55億円(5000万ドル)規模を目指すとしている。
運用期間は2031年9月まで。
同ファンドで出資対象とするのは、「Climate Tech」と呼ばれる脱炭素分野の海外エネルギーベンチャー企業。
※Climate Tech:気候テック。脱炭素につながる分野として、脱炭素テックと結びつけて使われることもある。
海外の脱炭素ベンチャーの日本参入も支援
記者会見で説明する、ENECHANGEの城口洋平代表。
記者会見の画面をキャプチャ
ENECHANGEの城口洋平代表は、
「世界では、Climate Techと呼ばれる分野が共有のキーワードとなっています。VCからの出資額も過去5年で急増しており、世界において投資が圧倒的に進んでいる状況です」
と同分野の盛り上がりを語る。
EV・蓄電池メーカーのテスラや、洋上風力発電などで知られるオーステッドなど、同分野で上場している企業の中には、市場価値が数兆、数十兆円規模の企業もある。
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直近でIPOした海外のベンチャー企業の中にも、今後日本での普及が必要だとされているEV充電インフラを始めとした期待のユニコーン企業などは多い。
城口代表は今回のファンドの投資対象となる企業について、
「(ENECHANGEの事業として定めている)デジタル化、脱炭素化、分散化に関連する分野だと思っています。必ずしもすべてのClimate Tech企業が日本にはまるというわけではないので、(ファンドを組成する)3社で目利きをしていくことで、日本の脱炭素化に貢献できるような会社を選別して、日本に良い形でもってきたいと思っています」
と、資金の支援だけではなく、日本への参入を支援することを通じて、日本の脱炭素化にも貢献したいと語る。
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すでに、電気自動車の充電インフラ関連のベンチャーや、屋根上太陽光の技術を持った企業、ビルなどの消費電力データを分析してエネルギー効率の最適化をしていくようなベンチャーなど、10社以上と協議を進めているという。
脱炭素分野への投資で日本は存在感を出せるのか?
世界のClimate Techへの投資状況。
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海外では、脱炭素分野のベンチャー企業への投資は活況だ。
記者会見では、巨額の資金が動く、脱炭素分野への投資に際して、日本のファンドが存在感を発揮できるのか不安視する声もあがった。
城口代表は、
「正直、日本の企業は(この分野への投資に)乗り遅れているのが現状です。参戦するためには、50億円規模の資金と、日本展開を支援するという戦略的立ち位置と、それを実行できる企業が揃うことが必要。それが揃えば、ある程度存在感をもって参入していくことができるのではないか」
と語る。
なお、ENECHANGEは、2019年に1号ファンドとして、大和証券グループ本社の100%子会社である大和エナジー・インフラ、北陸電力、電力小売り事業者のLooopとともに再エネ発電所やベンチャー企業を対象にしたファンドを設立している。
今回組成したファンドは、ベンチャー企業に特化した2号ファンドとなる。
(文・三ツ村崇志)