イーロン・マスク
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テスラとスペースXの創業者イーロン・マスクは、本格的な宇宙ロケットの価格が多くの住宅よりも安くなる日が来ると信じている。
マスクは、ロサンゼルスで開催されたテクノロジー業界のトップリーダーに向けたカンファレンス、Code Conferenceでインタビューに応じ、スペースX社による完全再使用型ロケットの開発が順調に進んでいることを明らかにした。そして、完全再使用型のロケット開発という最終目標は「画期的であり聖杯だ」と表現した。
マスクは現在、スターシップと呼ばれるこの大型宇宙船プロジェクトにほとんどの時間を費やしているという。このプロジェクトが実現すれば、ロケットとその打ち上げコストを現在のほんの一握りのコストに縮小することができる。
現在、スペースX社の部分的に再使用可能なロケット「ファルコン9」は、ミッションごとに上段を廃棄しており、これはジェット機1機分に相当するとマスクは指摘する。
「私たちのベストシナリオは、1回の打ち上げにつき1500万ドル(約16億8000万円)の費用に抑えることです。このファルコンは、他のロケットに比べると半分から3分の1程度のコストなのです。一方、スターシップの場合は、従来の使い捨て型の1%のコストになるでしょう」とマスクは言う。「限界打ち上げコストは、ファルコン9の10倍の最大積載量で100万ドル(約1億1200万円)未満になると考えています」
この比較的安価なロケットは、火星への輸送も視野に入れている。インタビュアーのカーラ・スウィッシャー(Kara Swisher)から、このロケットはいつ実現するのかと聞かれたマスクは、その質問をさらりとかわした。代わりに、このような輸送手段があれば、「火星に自給自足の都市を建設したり、月に基地を建設したりすることの経済的合理性が近くなる」と述べた。
実現性が近いところまで来ているという点で、まずは月の基地建設だとマスクは言う。これには、今年、スペースXが宇宙飛行士の月面着陸のための宇宙船を作るという、29億ドル(約3200億円)の契約をNASAと結んだこともある。
マスクは、火星に人を送り別の文明を築き、人類を「他のいくつかの惑星」に住まわせる計画について、これまで何度も語ってきた。彼は、そのような取り組みが、お金持ちだけが参加できる「宇宙旅行」のための見せかけのものだと言われることについて反論した。
「これは、旅行よりももう少し重い話で、ディズニーランドのようなものではありません」とマスクは言う。「新しい最新の技術を開発しようとする時というのは、安くはならないのです」
マスクの最終的な目標は、火星旅行が手の届くほどの価格になることだと言う。
「人類が火星で自立可能な文明を築くようになるためには、そうならなければならないのです」
(翻訳、編集:大門小百合)