COP26についての会議で発言するデイビッド・アッテンボロー。ロンドンのサイエンス・ミュージアム(Science Museum)にて。
Reuters
- 国連気候変動枠組条約締約国会議(United Nations Climate Change Conference)、通称「COP26」が11月1日からイギリス・スコットランドのグラスゴーで開催される。
- このサミットでは、世界の国々が気候変動についての新たな計画を公表することになる。
- 重要なテーマは、炭素市場規制や排出量実質ゼロへの財政責任などだ。
「人類のターニング・ポイント(turning point for humanity)」とも言われるCOP26は、近く開催される気候サミットで、ネットゼロ(CO2排出量実質ゼロ)への道を開くものだ。
11月1日から12日、イギリス・スコットランドのグラスゴーに世界各国のリーダー、そしてデイビッド・アッテンボロー(David Attenborough)からローマ教皇フランシスコ(Pope Francis)といった著名人が一堂に会し、世界の国々が地球温暖化によってもたらされる課題に対してどのように取り組むべきかについて協議する。
COP26とは?
COPは締約国会議(Conference of the Parties)の略で、今年26回目を迎えるので「COP26」だ。1995年以来、世界各国の政府が集まり、気候変動と闘うための世界的戦略を協定している。
他の気候・環境サミットの違いとは?
「他の気候・環境サミットとは異なり、COPはグローバルかつ包括的だ」と環境系シンクタンク、グリーン・アライアンス(Green Alliance)代表のジェームズ・フォザービー(James Fotherby)は説明する。議決は「1国1票」方式で、誰もが発言権を持ち、公平な議論の場であることを意味している。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC:United Nations Framework Convention on Climate Change)の監督下にあり、各国の首脳や政策立案者、気候科学者など、世界中から代表者が集まる。また、企業、青年団体や信仰団体、大学や市民社会を通じて、一般の人々とも関わりを持っている。
その他の参加者は?
アメリカのジョー・バイデン(Joe Biden)大統領をはじめとする国連加盟国のトップと、諸団体の代表者約2万人がグラスゴーを訪れる。
イギリス政府は全参加者に対してワクチンを提供するとしているが、まだ誰が参加するのかは、はっきりしていない。「参加しやすくすることが極めて重要だ。そうすることで発展途上国、特に気候変動の影響を受けやすい国の代表者の声が届く」とフォザービーは言う。
富裕な国とそうでない国でワクチン接種状況に格差があるため、グレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)さんのようにボイコットを検討している人もいる。
COPの目的は?
簡単に言えば、炭素排出量を削減することだ。
COPで世界は一丸となり、生態系が自然に適応できる期間の内に気候変動対策を行えるように、目標を決定する。
「目的は、大気中の温室効果ガスを一定に保ち、世界の平均気温の上昇が危険なレベルになるのを防ぐことだ」とフォザービーは言う。
「COPでは世界各国の進捗を把握し、各国間で合意に達していない規則を最終決定する貴重な機会だ」と、これまでの議論を間近で見守ってきたコンサベーション・インターナショナル(Conservation International)の気候変動担当バイス・プレジデント、シャイラ・ラガブ(Shyla Raghav)は付け加えた。彼女は、気候変動と闘うためには、合意することが重要だと言う。
今回のCOPはなぜ重要なのか?
パリ協定が署名されたのは、2015年のCOPだ。この合意の結果、今回参加する各国は、「国が決定する貢献(NDC:Nationally Determined Contribution)」を提出し、排出量削減への取り組みを示さなくてはいけない。
「COP26では、各国はパリでの発表以来初めて、国の計画を更新しなければならない」とフォザービーは説明する。
このNDCは、各国が自国の都合に合わせた目標を掲げ、議論を引き起こす可能性もある。そして、地球温暖化を産業革命前比で摂氏1.5度から2度に抑えるというパリで合意された数値が実現できるかどうかを左右するかもしれない。
我々は計画を棚卸しする時期にあり、各国の「貢献度を集計し、公平性を評価する」とラガブは説明する。
その結果、2023年に排出量の削減が順調かどうかが報告される。
COP26で注目すべき点は?
自然を生かした解決策、COVID-19による後退への対応、ネットゼロを実現する方策まで、COP26の議題は山積みだ。
特に、パリ協定の最終項、第6条には注目が集まるだろう。それは、排出削減努力に追加的な公的あるいは民間の資金をもたらす可能性のある国際的な炭素市場を規制するための枠組みを含んでいる。これは気候変動の影響を緩和することをより費用対効果の高いものにするだろう。
石炭も交渉の場では、大きな議論の的になるだろう。石炭の使用を段階的に廃止するという世界的なコミットメントは、中国、インド、ロシアなど石炭に依存している国々にとっては異論が多い、とフォザービーは言う。
また各国は、今後の取り組みで誰が資金を負担すべきかについても話し合うことになる。
パンデミックで経済的負担を強いられた発展途上国が、NDCで必要な資金の支援を求める可能性があるというだけでなく、多くの国が、気候変動に対処するためのコストは歴史的に最も責任のある先進工業国が負担すべきだと感じている。
「発展途上国は自国の誓約を守るために、資金や技術の提供を求めるだろう」とラガブは説明する。
開催まで1カ月を切っているが、活動家によると最良のシナリオになるのか、最悪のシナリオになるのかは、途上国に1000億ドル(約11兆1005億円)規模の気候変動対策資金を提供できるか、各国の国内排出量削減計画の有意義な改善が行えるかの2点にかかっている。もし、それが実現できなければ、見通しは暗いという。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)