カリフォルニアのグーグルの本社前。
REUTERS/Paresh Dave
グーグル(Google)は2021年、アメリカで少なくとも1万人の新規雇用を予定している。
グーグルの採用面接は、クリエイティブな問題解決能力をアピールする絶好の機会だが、「私はこんなに優秀です」ということを強調しすぎると、面接官の気持ちはすぐに次の候補者に移ってしまう。
グーグルで現在新規採用を募集している分野はプロダクト、エンジニアリング、営業、オペレーションである。また、採用プロセスの実施要領が見直され、どのレベルの職種の候補者との間でも給与交渉を行う前に、その候補者がすでに他社で仕事のオファーをもらっているかどうかの十分な確認作業をすることが求められるようになった。
グーグルの人材採用責任者、カイル・ユーイング。
Courtesy of Google
こうした変化は労働市場の進化に伴うものだ。IT系の仕事は2020年の新型コロナウイルスの感染ピーク時には需要も多かったが、内定を得るのも相当難しい仕事だった。しかし2021年に入り、アメリカで12万5000人の追加雇用を発表したアマゾンのような大手テック企業は、複数のチームで採用を増やしている。
グーグルで採用担当ディレクターを務め、同社で15年のキャリアを持つカイル・ユーイング(Kyle Ewing)は、採用の際に候補者の謙虚さを重視するとInsiderに語った。自分の仕事にプライドを持つことと、チームメイトの努力を無視することは大きく違うとユーイングは言う。グーグルではコラボレーションがいかに重要であるかを知っているため、自分のチームを適切に評価しない人を雇うことには警戒心を持っている。
自分は積極的に協力する人間であること、そしてそれを採用面接で強調することで、競争相手に差をつけることができる。そして、「グーグラー(グーグル社員)」らしく見せることができるのだ。
グーグルの求める4つの要件
グーグルはすべての新規採用者に対し、多岐にわたる認知能力、リーダーシップ、自分の職務に関する知識、グーグルらしさ(Googleyness)という4つの要件を求めている。
4つ目の要件「グーグルらしさ」は、その人が社内の文化に合わせられるかどうかではなく、社内の文化にその人が何を与えられるかであるという。グーグルらしさとは特に、曖昧さの中でも目標に向かって前進すること、現状に甘んずることなく挑戦すること、そしてチームを大切にすることを意味する。
ユーイングの視点では、「チームを大切にするとは、一緒に働くことで生まれる力を認め、一緒に目標に向かって努力し、それを達成すること」を意味するのだという。
グーグルの人材開発チームは、2年の歳月をかけて、チームを成功に導く要素を突き止めた。その結果、Insiderが以前報じた通り、個々のメンバーの能力よりチームメンバー間の力関係のほうが重要であることが多いと気づいたのだ。特に、リスクを取ることが受容されやすい環境(心理的安全性とも呼ばれる)はチームを成功に導くことができる。
ユーイングは、自分の力で革新的なことができる人材を採用したいと考えている。「すべてのレベルの従業員が、素晴らしいアイデアを持つよう奨励されているだけでなく、それが期待されています」とユーイングは言い、グーグルには「それを実現するためのリソース」があると付け加えた。
金銭的リソース以外にも、グーグルの親会社である「アルファベット(Alphabet)」では専門分野以外にも得意分野を持つ13万5000人以上の優れた人的リソースを抱えている。
他社でも重視されるチームワークのスキル
他の大企業の人事担当幹部たちも、候補者に謙虚さを求め、目立ちたがる人物を避けるようになっていると述べている。
例えば、クラウドコンピューティング・サービスを提供するセールスフォース(Salesforce)で以前グローバル採用担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めていたアナ・レシオ(Ana Recio)は、面接を受ける人にとって傲慢さは危険信号だと考えている。
レシオは普段から、「私は」という言葉ばかり使い、目標達成のために一緒に頑張ってきたチームについて触れない人は退けているという。これは決して偶然ではなく、調査でも「私は」より「私たちは」をよく使うリーダーの方が成功する傾向にあることが分かっている。
元グーグル社員のハイディ・ザック(Heidi Zak)が立ち上げた、オンラインでブラジャーを販売する会社サードラブ(ThirdLove)の幹部たちも、候補者たちがこれまでの仕事の経験をどのように表現するかに注目している。彼らは候補者に対し、「あなたとあなたのチームが最近犯したミスは何ですか。また、そのミスからどのような教訓を得ましたか」という質問をするという。この場合は、「私たちは」ではなく、自分がミスの責任を負っているという意味で「私は」という言葉を使うことが好まれるだろう。
ユーイングは、今いるグーグルの社員にも同僚の貢献を尊重してほしいと考えている。「『私はこれまでにない最高のアイデアを思いついて、それが上手くいきました』というのもひとつの事実です。ただ、そのアイデアの実現には多くの人々の助けがあったことを忘れてはなりません」
(翻訳:渡邉ユカリ、編集:大門小百合)