2021年10月3日、イギリス王室の不動産を管理するクラウンエステートが、アゼルバイジャンの大統領の親族から100億円相当の不動産を購入した可能性があると報じられた。
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- 女王の不動産を管理するクラウンエステートが、アゼルバイジャンの支配者から約100億円の不動産を購入したという。
- ガーディアンは「パンドラ文書」を引用して、2018年にロンドンの不動産を取り引きしたと報じた。
- アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領は、不正選挙、人権侵害、賄賂などで告発されている。
報道各社は2021年10月3日、イギリス女王に代わって王室の不動産や土地を所有・管理するクラウンエステートが、2018年にアゼルバイジャンの大統領の家族から6650万ポンド(約100億円)の不動産を購入したようだと報じた。
BBCは「パンドラ文書(Pandora Papers)」と呼ばれる漏洩書類を引用して、アゼルバイジャンのイリハム・アリエフ(Ilham Aliyev)大統領の親族がクラウンエステートへの不動産売却で3100万ポンド(約46億円)の利益を得た可能性があると報じた。
アリエフ大統領は、10年間大統領を務めた父ヘイダルの死後、2003年にアゼルバイジャンの大統領に就任した。同大統領は、汚職、不正選挙、人権侵害、贈収賄などで告発されている。
クラウンエステートの広報担当者はInsiderに対し、この建物を購入する前にチェックを行ったと述べた。
「その時点では、取り引きを行ってはいけない理由はなかった」と広報担当者は述べ、「提起された潜在的な懸念を考慮して、我々はこの問題を検討している」と付け加えた。
クラウンエステートはイギリスの君主に属するものだが、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの不動産、土地、海底を同国の大蔵省と連携して管理している。それらの資産は女王の私有財産ではなく、そこからの収入も女王のものではない。
国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パンドラ文書」によると、アリエフ大統領の3人の子ども(レイラ、アルズ、ヘイダル)は、2006年から2018年の間にイギリス領ヴァージン諸島で登記された44の会社の株主として記載されていた。
ICIJの報告書によると、彼らは、2006年から2009年の間に、1億2000万ドル(約133億円)以上の価値があるロンドンの高級不動産の購入に使われた5つの会社を所有していた。
ガーディアンは、クラウン・エステートが2018年8月、ロンドンのメイフェアにある8階建てのオフィスと店舗の物件を、英領ヴァージン諸島に拠点を置く企業、ヒニズ・トレード&インベストメント(Hiniz Trade & Investment)から6650万ポンド(約100億円)で購入したと報じている。ヒニズ社は2009年に3550万ポンド(約53億円)でこの物件を購入していたという。
ガーディアンの報道によると、バンドラ文書ではヒニズ社の資金源はわからないが、同社の所有権がアリエフ大統領の娘のアルズから祖父のアリフに移ったことを明らかにしている。アリフはその後、2015年に同社を信託したという。
ICIJは10月3日に、衝撃的なパンドラ文書の内容を発表した。流出した文書には、世界各国の現在の指導者、元指導者、億万長者、著名人、政府当局者が、どのようにして大金を秘密の海外口座に隠していたかが詳述されている。コンソーシアムの調査結果の中には、アメリカのサウスダコタ州がタックスヘイブン(租税回避地)に匹敵するほどの金融機密性を有しているというものもあった。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)