ブルーオリジンのジェフ・ベゾスCEO(左)とスペースXのイーロン・マスクCEO(右)。
Joe Raedle/Getty Images/Axel Springer
- ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクをはじめとするビリオネアの多くは、2020年に過去最高の資産額を記録した。
- だが彼らがその富を他の人と分かち合った金額は、これまでになく少なかった。
- 2021年のフォーブスの長者番付「フォーブス400」にランクインしたビリオネアのうち、寄付額が資産の1%未満なのは、ベゾスやマスクを含む156人で、過去最多だった。
ジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)とイーロン・マスク(Elon Musk)は、どちらがより裕福か、またどちらがより訴訟好きかを巡って争っているところだが、彼らは別の争いにも巻き込まれている。「世界一ケチなビリオネア」の称号を巡る争いだ。
パンデミック時代の株価高騰でビリオネアの資産は新たな高みに向かって膨らんでいるが、フォーブスの「慈善活動スコア」によると、世界で最も裕福な人々は、慈善活動を膨らませる気はないようだ。
慈善活動スコアとは、フォーブス400にランクインしたビリオネアが行ってきた寄付の総額を、現在の総資産と寄付額の合計で割って算出し、それを「1%未満」「1%以上5%未満」「5%以上10%未満」「10%以上20%未満」「20%以上」の5段階に分類したものだ。
なお、私設の財団や使途推奨冠名基金(donor-advised funds)はカウントされていない。これらの「寄付」は事実上、寄付者の管理下に置かれ、彼らが税金を払わずに済むような手厚い特典もあるからだ。
アメリカの世帯が保有する純資産額の中央値は、現在約12万ドル(約1300万円)であり、もしその世帯が1200ドル(約13万円)を慈善活動に寄付したとすると、ベゾスやマスクよりも寛大だということになると、フォーブスは指摘している。
2021年の「フォーブス400」にランクインした400人のビリオネアのうち、資産の10%以上を寄付したのはわずか19人で、1%未満の寄付は過去最高の156人だった。ベゾスとマスクはまだ1%未満から抜け出せていないが、ベゾスの元妻であるマッケンジー・スコット(MacKenzie Scott)は資産の13%を寄付してている。そして、それだけ寄付していても、彼女は2020年よりも裕福になっている。
ベゾスは2021年夏、スミソニアン協会や、慈善活動を行うヴァン・ジョーンズ(Van Jones)とホセ・アンドレス(Jose Andres)に、合わせて4億ドル(約450億円)を寄付して話題となったほか、気候変動と戦うという約束を果たすために8億6500万ドル(約960億円)を寄付した。しかし、彼は2021年だけで資産を220億ドル(約2兆4500億円)増やし、純資産総額は2010億ドル(約22兆4000億円)に達している。それに比べれば、この寄付額はごくわずかなものだ。
投資家で慈善家のウォーレン・バフェット(Warren Buffet)は、引き続き最も寛大なビリオネアとしてランクインしている。彼は、2021年6月に41億ドル相当のバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)株を慈善団体に寄付し、これまでの寄付の総額は440億ドル(約5兆円)となった。彼はバークシャー・ハサウェイの株をすべて手放すという公約を掲げており、これでその半分を達成したことになる。
慈善活動スコアが最も高かったのは、投資家で慈善家のジョージ・ソロス(George Soros)で、彼の168億ドル(約2兆円)の寄付額は86億ドル(約9600億円)の純資産額を上回っている。ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領は、フォーブス400にランクインするには資産が4億ドル(約450億円)足りなかったため、慈善活動スコアを算出する対象とはならなかった。
[原文:Billionaires are richer — and stingier — than ever]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)