ゼネラルモーターズのウォーレス・バッテリー・セル・イノベーション・センターの完成予想図
General Motors
- 2021年10月5日、ゼネラルモーターズ(GM)はミシガン州にバッテリーの研究開発施設を建設するとに発表した。
- この施設でGMは電気自動車用のさらに効率的で、緻密、かつ安価なバッテリーの開発に取り組むという。
- フォードはこの発表の1週間前にバッテリーに関する重大な発表をしている。
自動車業界の動向を追っている人には、2021年は電気自動車(EV)関連の発表が相次いでいるように感じられるだろう。
最近では2021年10月5日に、ゼネラルモーターズ(General Motors)が、次世代EV用のより高性能かつ低コストのバッテリー開発を目的とする広さ30万平方フィート(約2万8000平方メートル)の新しい研究開発センターの計画を発表した。この発表の1週間前には、フォード(Ford)が110億ドル(約1兆2200億円)を投じてピックアップトラック「F-150」のEV版の組立工場と3つの新しいバッテリー工場をケンタッキー州とテネシー州に建設すると発表している。
2022年半ばにミシガン州に完成予定のウォーレス・バッテリー・セル・イノベーションセンター(Wallace Battery Cell Innovation Center)でGMは、新しいバッテリー素材の実験を行い、バッテリーのコストを60%削減することを目指すという。このニュースの影響を受け、GMの株価は堅調に推移した。
GMもフォードも1990年代初頭にはEVを販売していたが、これらのプロジェクトを中止し、残った車両の多くを解体した。しかし、テスラ(Tesla)の成功、EVに対する投資家の関心の高まり、世界的に厳しくなる排ガス規制などを背景に彼らはEVへの取り組みを強化している。
このアメリカ大手自動車メーカー2社は、ことあるごとにお互いに対抗意識を燃やして来たが、この1年でEVに関する対抗意識も劇的に高まっている。
GMは2020年11月、2025年までに電動化と自動運転に270億ドル(約3兆円)を投資すると発表し、2021年1月には2035年までに販売車種を電気自動車だけにすると発表した。しかし、その直後の2月初旬、フォードは2025年までに290億ドル(約3兆2400億円)をEVと自動運転に費やすと発表して対抗した。
2021年5月下旬、フォードはEVへの投資額を300億ドル(約3兆3500億円)に引き上げ、新型の電気自動車SUVの投入を発表した。一方GMは同年6月、投資額を350億ドルに増額し、アメリカ国内に2つのバッテリー工場を新設すると発表した。
この戦略は少なくとも短期的には、過去10年間この分野で圧倒的な強さを誇ってきたテスラと正面から対決する両社に対する投資家の期待をふくらませるのに有効なようだ。フォードの株価は2021年に入ってから65%以上も上昇しており、GMの株価はシボレー・ボルトEV(Chevrolet Bolt EV)の大規模リコールで打撃を受けた後も34%上昇している。両銘柄ともベンチマークとなるS&P500指数を上回っている。
ウォール街の一部にはGMのEV分野での将来性に懐疑的な意見もあるが、ウェドブッシュ証券(Wedbush Securities)のアナリストであるダニエル・アイブズ(Daniel Ives)は、GMが350億ドル(約3兆9000億円)を投じて研究開発に取り組んでいることについて、それが実を結ぶことになるだろうと楽観的な見解を示している。
「目先の課題は残っているが、GMの描くストーリーと投資テーゼは、環境問題への取り組みの基礎となる次世代バッテリー『アルティアム(Ultium)』の技術を使用した今後10年間の大規模なEVへの取り組みにある」とアイブズは2021年9月30日の投資家向けのメモで述べた。
[原文:GM and Ford keep trying to one-up each other with EV investments]
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)