- NASAの新しい宇宙船の役割は、小惑星「ディモルフォス」に衝突して、その速度を落とすことだ。
- 小惑星のスピードを1秒あたり1cm遅くする計画だが、これだけでも軌道と進路を変えるには十分だという。
- 科学者たちはこのミッションで、この方法が接近する小惑星から地球を守るために有効かどうかを検証する。
NASAは、地球を守るために小惑星へ衝突させる宇宙船の打ち上げ準備を進めている。
NASAによると、この初となるミッション「DART(Double Asteroid Redirection Test)」の宇宙船は、2021年11月23日午後10時20分(アメリカ東部時間)、カリフォルニア州のヴァンデンバーグ宇宙軍基地から、スペースXのファルコン9ロケットに搭載されて打ち上げられる。
科学者たちは、地球から数百万km離れた場所で起こるこの衝突で、ワシントン記念塔よりわずかに小さい、直径約160メートルの小惑星 「ディモルフォス(Dimorphos)」の軌道を変えられるかを検証する。 ディモルフォスは、直径780メートルほどのより大きな小惑星ディディモス(Didymos)のまわりを回っている。
これら小惑星は2022年9月に、地球から約680万マイル(1100万km)まで近づくとみられ、宇宙船はちょうどその頃にディモルフォスに接近し、衝突することになっている。
宇宙船が時速1万4783マイル(2万4000km/h)で衝突することでディモルフォスの速度は約1%下がると見られている。この変化は大きくないようだが、小型の小惑星の軌道を変えるには十分で、科学者たちは地球から望遠鏡でその様子を観察したいと考えている。
DARTの目的は地球を守ること
DARTの最終的な目標は、いつの日かやってくる致命的な小惑星から地球を守る方法についての情報を得ることだ。
「地球には常に小惑星やその断片が衝突している。年に一度くらいの頻度で、我々の星にはテーブルほどの大きさのものが衝突している」と、ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所の共同調査リーダー、アンディ・リブキン(Andy Rivkin)は、このプロジェクトのウェブサイトで紹介されている2018年の動画で語っている。
彼は、ディモルフォスやディディモスのような小惑星は、数千年おきに地球に衝突しており、それは「地域レベル」で大きな被害をもたらすのに十分だと話している。
2020年7月、厚さ3マイル(4.8km)の氷の塊が、地球から6400万マイル(約1億km)の位置まで近づいた。また2019年には、地球に近づく数日前まで科学者たちが詳細をわからなかった、427フィート(約130メートル)の「シティキラー(都市を壊滅させるほどの大きさ)」と呼ばれる小惑星が、地球から4500万マイル(約7250万km)の位置まで近づいている。
ちなみに、6500万年前に恐竜を絶滅させた小惑星の大きさは約6マイル(9.6km)だった。
プロジェクトのウェブサイトによると、DARTミッションでは、ジョンズ・ホプキンズ大学応用物理研究所がNASAのために開発した、2つの太陽電池を装備した全長27.9フィート(8.5メートル)の「低コスト」の宇宙船を使用する。
宇宙船には、ディモルフォスまでの誘導用カメラと、衝突前に宇宙船から切り離されて衝突の様子を撮影するイタリア宇宙機関(ASI)提供の小型宇宙船LICIAが搭載される。
DARTによる衝突から数年後には、欧州宇宙機関(ESA)のミッション「Hera」がディモルフォスとディディモスへの影響について調査するという。
NASAは以前にも、情報収集を目的として、小惑星に物体を衝突させるミッションを行ってきた。2005年には「ディープ・インパクト(Deep Impact)」ミッション、テンペル第1彗星に衝突体を発射し、宇宙船との交信が途絶えるまでの8年間観察が行われた。
ジョンホプキンス大学応用物理研究所にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)