10月4日、ソーシャルメディアのInstagram、WhatsApp、Facebookが同時にダウンし、数百万人のユーザーがアカウントにアクセスできなくなった。
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10月初め、Facebookのサービスが約6時間停止したが、このことで小規模ビジネスのオーナーやクリエイターの多くは「一つのSNSに頼るのはよくない」という単純な事実を思い知らされることとなった。
10月4日、ソーシャルメディアのInstagram、WhatsApp、Facebookが同時にダウンし、数百万人のユーザーがアカウントにアクセスできなくなった。多くのビジネスオーナーやクリエイターたちにとって、これらのSNS停止は不便どころの騒ぎではなかった。システムが復旧するまで、彼らは通常の営業さえできなかったのだ。この不具合による具体的な経済損失額は明らかになっていないが、推定では約1億ドルの損失が出たと言われている。
専門家らの一致した意見では、SNS側で秘密裏に行われるアルゴリズムの変更や、それによるシャドーバニング(SNSの運営側が望ましくないと判断したアカウントを公の目に触れにくくする措置)や、予期せぬシステム障害の影響をビジネスオーナーが避けたいのであれば、自社のウェブサイトを持つことがより安全な手段であるという。
また、そのほうがコンテンツや顧客体験に対しても余計な制約を受けずに済む。しかし、中小規模の事業者にとって、他のブランドがひしめくなか、限られた予算内で競争力を高めるには自社ウェブサイトという選択肢が必ずしも最適とは限らない。
低コストで新しい顧客を容易に探せるため、SNSに目を向けている起業家は多い。しかし、フェイスブックのシステム障害があってから、彼らも何らかのバックアップの選択肢を持っておく必要性を認識するようになった。
そこで、新しいSNSの導入を検討している人にも、自社のネット上でのプレゼンスを高めたい人にも役立つ、Facebook、Instagram、WhatsApp以外でスタートアップ企業に適した10のサービスを紹介する。
1. TikTok(ティックトック)
TikTokは現在、10億人のユーザーを誇る。
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「TikTokのせいで買っちゃった(#TikTok made me buy it)」のハッシュタグで拡散される「バズ動画(話題になっている動画)」は、TikTokのマーケティングでの影響力の強さを表している。TikTokではピンク色をしたペースト状の万能洗剤や、まつ毛を長く見せるマスカラなど、人気商品を次々と大勢のユーザーに見せて購買意欲を刺激し、紹介された商品は売り切れ続出となっている。
これに目をつけた小売業者はトレンド分析をしたり、自社製品がどのような売れ行きを示すかの予測を立てるためにTikTokを頻繁に見るようになっている。
TikTokの運営会社である中国のバイトダンス(ByteDance)は最近、eコマースプラットフォームのShopify(ショッピファイ)との連携機能、「ショッピング」タブ機能や商品へのタグ付け機能など、クリエイターや起業家がTikTok内でビジネスを展開できるようにする仕組みを導入した。ニューヨークタイムズ紙によると、現在TikTokは月間10億人のユーザー数を誇るという。
2. Twitter(ツイッター)
Twitterは、企業が顧客サービスでトップの座を維持し、コンテンツを強化するために利用できるツールをいくつか提供している。
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Facebookでシステム障害が発生したとき、同社はTwitterを使ってユーザーにシステム障害の発生を知らせ、復旧の状況について最新情報を発信した。
Twitterは、企業が顧客サービスでトップの座を維持し、コンテンツを強化するために利用できるツールをいくつか提供している。Twitterは2020年、複数の人が対話できる音声チャットルームを作れる「スペース(Spaces)」 というサービスを開始した。
企業はTwitterアカウントを活用して、最新ニュースを流したり、顧客が自社のブランドや製品についてどんなことを言っているかをモニタリングしたり、あるいは単純に顧客と直接つながることができる。
3. Pinterest(ピンタレスト)
Pinterestのプラットフォームでは、毎月50億回以上の検索が行われている。
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Pinterestはピンボード風の写真共有SNSだ。手に入れたい憧れのものや、刺激を与えてくれるものを探す検索エンジンへと成長し、月間検索数は50億回を超えている。
Pinterestが企業向けに提供しているツールには、ショッパブル・ピン(ピンから商品を購入できる機能)、Shopifyとの連携、商品お試しピンなどがある。商品お試しピンは、拡張現実(AR)技術を利用して商品を仮想空間で試せるというもので、例えばユーザーはこの機能を利用して口紅の色などを試すことができる。
4. Telegram(テレグラム)
10月4日にFacebookが停止していた間、7000万人以上がTelegramに新規登録した。
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ロシア人の兄弟2人が設立したTelegramは、暗号化メッセージングサービスだ。Telegramの共同創業者、パーヴェル・ドゥーロフ(Pavel Durov)によると、Facebookが停止している間に7000万人以上が新規登録したという。
企業にとってTelegramが魅力的なのは、グループチャットに人数制限がないことと、Telegramチャンネルを作成できることだ。Telegramチャンネルは掲示板のようにして使うことができ、登録できる人数に制限はない(ただし、更新情報を投稿できるのは管理者のみ)。どちらを使っても顧客と交流することができ、今後発売される製品の情報やキャンペーン情報を顧客に伝えることができる。
5. YouTube(ユーチューブ)
ビジネスオーナーはYouTubeを利用して、業界内の特定の分野でエキスパートになることができる。
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Googleの傘下にあるオリジナルのクリエイターエンジン、YouTubeを活用するという方法もある。日曜大工を指南したり、何かのテーマについて解説したりするような、自社のビジネスに関連した教育系コンテンツを作ってYouTubeで発信すれば、同じようなことに関心を持つ人を見つけてコミュニティを育てるのに役立つ。
ビジネスオーナーはYouTubeを利用して、業界内の特定の分野でエキスパートになることができる。さらに、チャンネル登録者数が増えればそのチャンネル自体が収益化できる場合もあり、1つのプラットフォームで2つの新たな収益源を生み出せる可能性もある。
6. Snapchat(スナップチャット)
Shopifyのアカウントと連携すれば、Snapchatのプロフィール内で仮想ショップを開くことができる。
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最高経営責任者のエヴァン・シュピーゲル(Evan Spiegel)が共同設立した動画共有・メッセージングサービスであるSnapchatは、ブランドや企業に対するリソースの提供に力を入れている。Snapchatは5月、ユーザーがそれぞれ好きな企業を見つけてフォローできるブランドプロフィール(Brand Profiles)機能を導入した。
企業はそれぞれShopifyのアカウントと連携させて、Instagramの「ショップ」タブと同じように、Snapchatのプロフィール内に仮想ショップを開くこともできる。また、各ブランドはジオフィルター(地名が表示される特別なフィルター)や臨場感あふれる拡張現実(AR)体験を作り出し、アプリ内で自社製品を宣伝することもできる。
7. Discord(ディスコード)
Discordを使うと、企業と消費者が直接つながることができる。
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人気のメッセージングSNS、Discordではユーザーがチャットルームと呼ばれる自分の「サーバー」を作ることができ、そこで自分の選んだトピックについてテキスト、音声、動画で人々と話し合うことができる。
Telegramと同様に、このサービスで企業は消費者と直接つながり、より気軽に新製品の発表やプロモーションを行うことができる。
8. NTWRK(ネットワーク)
ライブ配信ショッピングアプリ「NTWRK」は、これまでにiOS端末とAndroid端末で250万回インストールされている。
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2018年に提供開始されたライブ配信ショッピングアプリ「NTWRK」は、これまでにiOS端末とAndroid端末で計250万回インストールされている。このSNSは自宅でショッピングを楽しめるような体験をイメージして作られており、インフルエンサーや有名人が限定品や他では手に入らないような商品を販売している。
最近では、さらに多くの人に利用してもらえるようにと、オリジナル番組に多額の投資をしていると発表した。企業やクリエイターがこのサービスを利用するには審査を受けなければならない。月額料金は発生しないが、NTWRKは売り上げの20%を手数料として受け取る。
9. Etsy(エッツィー)
Etsyは個人や独立した組織がハンドメイド作品、ヴィンテージ商品などを出品しているマーケットプレイス。
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オリジナルのハンドメイド作品があるなら、それらを披露するプラットフォームにはEtsyが向いているかもしれない。サイトに来る人たちはすでに何か買うものが決まっていて欲しいものを探しにくる人たちであり、同社の最新報告によると、サイト上にはアクティブな購入者(実際の購入予備軍)が9000万人以上いるという。
ビジネスオーナーは独自のオンラインストアを作ることができ、Etsyは国内外への配送支援サービスも提供している。
10. Amazon(アマゾン)
eコマースといえばアマゾン。ビジネスアカウントの開設も比較的簡単だ。
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オンライン書店としてスタートしたアマゾンはあらゆるものを売るオンラインストアへと成長したが、今もeコマースの頂点に君臨している。「Amazonプライム」の会員数は2億人を突破し、世界で最も訪問者の多いウェブサイトの1つだ。
ビジネスアカウントの開設も比較的簡単で、ビジネスオーナーが商品を顧客の玄関先まで届けられるように、アマゾンは膨大なリソースを提供している。ただ、アマゾンでビジネスを行うにはここに挙げた他の選択肢よりも関連コストが若干高いことだけが難点だ。
( 翻訳:渡邉ユカリ 、編集:大門小百合)