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- アメリカではミレニアル世代の多くの女性が今、「どこで買い物をしたらいいか分からない」と話している。仕事用の服といったアイテムは特に、だ。
- Z世代の若者は引き続きファストファッションに依存する一方で、ミレニアル世代は"よりサステナブル(持続可能)な買い物"を目指している。
- 「人々は今、量よりも質を求めているのだと思います」とスタイリストのリズ・タイク(Liz Teich)氏は話している。
アマンダ・ジェームズさん(35)の"買い物危機"は、オフィスが再開した頃から始まった。
1年半に及ぶ在宅勤務が終わり、ケンタッキー大学で働くジェームズさんは仕事用のワードローブを刷新するために、新しいトップスを何着か買いたいと考えた。ところが、以前はよく行っていた定番の店を見て回ったのに、結果は空振りだった。
「メイシーズも見たし、ロフトも見ました。自分が昔、好きだったものを見たような感じで、これというものは見つかりませんでした」
仕事用の服が見つからないというジェームズさんの問題は、何カ月にもわたって在宅勤務を続けてきた後、どこで買い物をしたらいいのか分からないというミレニアル世代の女性の間で高まるフラストレーションを反映している。完全にとはいかないまでも、以前のような"普通の"生活が徐々に戻ってくるにつれ、1年以上ゆったりとした部屋着やアスレジャーしか購入してこなかった女性たちはオフィスに戻ったり、パーティやイベントに参加する前に、自分のワードローブを刷新しようとしている。
ところが、多くの小売業者はまだ長期に及んだパンデミックの影響から完全には回復しておらず、サプライチェーンの問題も重なって、今は単純に購入できる服が少なくなっている。こうした問題は、"よりサステナブルな買い物を"という社会的な圧力も手伝って、おしゃれだから、流行りだから、面白いから買うといった消費をより難しくしている。
「この1年半、全く服を買っていなかったので、着心地が良くて、気分が上がる、これを着て出かけたら素敵だなと思える服が何着か欲しかったんです」とジェームズさんは話した。
「完全に空振りでした」
「クロップトップばっかり」
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「もうどこで買い物をしたらいいか分からない」というフレーズは実際、筆者の友人や家族、同僚の間でも数カ月前から言われ続けている言葉だ。
そこでわたしはこの問題を自分のインスタグラムのフォロワー(大半がミレニアル世代の女性)向けに聞いてみることにした。多くの人々が反応してくれ、その結果、科学的な調査からは程遠いものの、回答者(全員女性)の85%が「どこで買い物をしたらいいか分からない」と答えた。そして、わたしが「今、どこで手頃な服を買っている?」と尋ねると、友人の1人からは「見つけたら教えて」とすぐに返ってきた。
ジェームズさんが指摘した —— そして、わたしやわたしのミレニアル世代の友人も気付いた —— のは、そもそも20代後半から30代半ばの女性向けの選択肢が少ないということだ。
「クロップトップばっかり」とジェームズさんは話した。
こうした"体験"は、市場調査会社Editedのデータとも合致する。同社は、Z世代の若者の間で人気のブランドとミレニアル世代の若者の間で人気のブランドを比較した。その結果、ナイキ(Nike)やアディダス(Adidas)といったスポーツウェアのブランドはどちらの世代でも人気が高く、エイソス(ASOS)も人気だが、共通するのはそこまでだった。
ミレニアル世代が好きなブランドとして挙げた化粧品やスキンケア商品を手掛ける「グロッシアー(Glossier)」や高級スニーカーを手掛ける「ヴェジャ(VEJA)」は服を販売しておらず、手頃な服が全般的に手に入るブランドとしては「エバーレーン(Everlane)」と「H&M」の2つが挙がった。
一方、Z世代は「アーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)」や「パシフィック・サンウェア・オブ・カリフォルニア(PacSun)」「ブーフー(Boohoo)」「ミスガイデッド(Missguided)」「プリティリトルシング(PrettyLittleThing)」といった流行を追った手頃な服や靴、アクセサリーを手掛けるファストファッションのブランドが好きだという。例えば、ミスガイデッドのホームページをのぞいてみると、モデルたちは背中が大きく開いているレザーシャツや光沢のあるスリップドレス、丈の短いクロップトップを着ている。
この世代間の違いは、ミレニアル世代の買い物の難しさを良く表している。Z世代はどんどん移り変わっていく、面白い、使い捨ての服に依存できるかもしれないが、ミレニアル世代はアスレジャーまたはベーシックな服を買っているようだ。
量ではなく質を求めて
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Editedのシニア・ウィメンズウェア・アナリスト、イーファ・バーン(Aoife Byrne)氏がレポートで書いているように、"サステナビリティ重視"という新たな価値観も、ミレニアル世代の若者がどこで買い物をすればいいか分からないと考える理由の1つかもしれない。
「金銭的に余裕がない10代の若者の場合、多くがファストファッションの魅力や利便性に抗うことは難しい」とバーン氏は書いている。一方、「可処分所得の多いミレニアル世代の若者は、消費を通じて自らの信念を反映するリソースがある可能性が高い」と指摘した。
ただ、"環境に配慮した買い物"は残念ながら高くつくため、手頃さとサステナビリティのバランスを見つけるためにプロのアドバイスを必要とする女性が増えているのだろう。
ファッション・スタイリストで『The New York Stylist』というブログを運営しているリズ・タイク氏は、秋にかけて新しいクライアントが大幅に増えたと話している。オフィスに戻るだけでなく、結婚式に出席したり、長期休暇を取る人が増えているからだ。そして、パンデミックはわたしたちに買い物の仕方 —— 主にオンラインで買うか実店舗で買うか —— を見直させ、多くの人々にとってそれは適応するのが容易ではなかった。
「今日もわたしに『買い物の仕方を忘れた。どこに行ったらいいのか分からない。店をのぞいてみても、自分が好きなものはありそうにない』と話す人がいました」とタイク氏は語った。「ショッピングモールに行ったり、店に行くことがあまりにも過去のものになり過ぎて、人々はもう買い物の仕方が分からないのです」という。
タイク氏は、単純にコロナ禍で価値観が変わった女性もいると話している。バーン氏が指摘したように、自分のお金は環境や平等といった価値を大切にするブランドに使おうと決めているのだ。
「"どう買うか"に対する意識が高まったことで、多くの人々がどこで買い物をしたらいいか分からなくなっています」とタイク氏は語った。
「サステナブルなデザイナー、より意識の高いブランド、独立したデザイナー、多様性のある、女性が経営する企業から買おうとする人々が増えているのです」
こうした"買い物問題"に直面している女性に対し、タイク氏は「M.M.LaFleur」や「Goldie」「Grey State Apparel」「Dôen」「August the Label」「Love the Label」「Merlette」といった"より質の高い服"に力を入れている(その多くがサステナビリティを重視している)ブランドを薦めている。
プライスポイントについては、何のために買うのか、どうして買うのかを見直すようタイク氏はアドバイスしている。
「わたしたちは、昔はもっといろいろなことをしていたので、多くの服が必要でした。もっと人と会っていたし、もっと選択肢が必要でした」
「今は、量より質を人々は求めているのだと思います」
[原文:If you have no idea where to shop for clothes anymore, you're not alone]
(翻訳、編集:山口佳美)