新型JINS MEMEは10月14日、同社オンラインストアや実店舗などで発売される。値段はレンズ込みで1万9800円(税込)。
撮影:小林優多郎
「普段使っているメガネがおもしろくなる!」
10月14日発売のメガネ型ウェアラブル端末「JINS MEME(第2世代)」を触って最初に思ったことは、この一言に尽きる。
ウェアラブルと言えば時計や活動量計をイメージするが、メガネ型デバイスもAR(拡張現実)やオーディオ分野の商品が出てきている。
そんな中、メガネメーカーのJINSはどのような新製品を出してきたのか。ファーストインプレッションをお送りする。
初代の弱点「価格が高い」「デザインが少ない」を克服
ジンズの代表取締役CEOの田中仁氏も10月6日の発表会で初代JINS MEMEを「ガタイが大きくてかけ心地が悪かった」「重い」などと振り返っていた。
撮影:小林優多郎
そもそもJINS MEMEの初代モデルが発表されたのは2015年11月だ。当時、筆者は別のIT系媒体で記者をしていたが、正直あまりピンとこなかった。
理由は主に2つあり、1つ目は価格。JINSで安くて5000円、高くて1万円弱のメガネを愛用している自分にとって、直販価格4万2120円(税込、当時消費税率は8%)もするメガネは非常に高価に見えた。
もうひとつはデザイン。初代JINS MEMEはレンズの度数こそ変えられたが、フレームのデザインは(サングラス版を含めれば)3種類しかなかった。顔という手首より目立つ場所に装着するものなのだから、形はお気に入りのものを付けたかった。
新型JINS MEMEの「Welington」を正面から見たところ。
撮影:小林優多郎
新型JINS MEMEは、この2点をかなり払拭できていると思う。
直販価格は通常クリアの度付きレンズ込みで1万9800円(税込)と、初代の半額以下。デザインもメガネタイプは4種類各2色、サングラスタイプは2種類各2色(EC販売のみ)ある。
もちろん通常のメガネに比べれば、やや値は張るし、デザインも限定される。しかし、それでも欲しいと思える実用性と未来を期待できる仕組みがそこにはある。
COREで心と体の状態を可視化
センサーとバッテリーはブリッジ近くの「CORE」にまとまっている。
撮影:小林優多郎
新型JINS MEMEは、同社がCOREと呼ぶセンサーとバッテリーが集約した装置が、ブリッジの部分にぶら下がるような形で搭載されている。
初代はテンプル(つる)の部分にもそれぞれセンサーとバッテリーを搭載していたため、かなり大きなサイズになっていた。一方、新型は全体的に軽く、見た目的にも“普通のメガネ”をかけている印象だ。
テンプル(つる)の部分は、他のJINS製品にも使われている素材を採用する。
撮影:小林優多郎
COREには3軸の加速度センサーと3軸のジャイロセンサー(回転方向や回転角度などを検知するセンサー)、そしてJINSが特許取得している3点式眼電位センサーが内蔵されている。この3点式眼電位センサーにより、まばたきの強さや速度、間隔、視線移動の速さを測定できる。
シールが気になるが、実際にJINS MEMEをつけたところ。知らない人が見てもこのメガネがウェアラブル端末だなんて思わないのではないだろうか。
撮影:小林優多郎
当然だが、MEME自体ではそれらを計測してデータとして記録するしかできない。そのデータはスマホアプリ(発売当初はiPhoneのみ、Androidには11月以降対応)に送られて初めて意味を成す。
専用アプリ「JINS MEME App」では、主に「BODY(カラダ)」「MIND(ココロ)」「BRAIN(集中)」の3つの機能が提供される。
BODY……歩数や座っていた時間に加え、猫背になっていない姿勢の良し悪しを確認できる。
猫背になっていると「Bad」、真っ直ぐとした姿勢だと「Very good」などと表示される。
撮影:小林優多郎
MIND……まばたきの間隔などから緊張感や気持ちの浮き沈みがわかる。
円の大きさ、形状、動きのリズムで心の状態を可視化する。
撮影:小林優多郎
BRAIN……1日のうちにどのぐらい作業に集中していたかわかる。
集中力を0〜100ポイントの間で数値化。
撮影:小林優多郎
歩数などは腕時計型デバイスでもお馴染みの項目だが、それ以外のまばたきや集中度合いなどの項目は、目の動きを検知できるJINS MEMEならではの特徴と言える。
また、JINS MEME Appには姿勢を正すためのストレッチやヨガのガイド、心の乱れを整える瞑想コンテンツ、集中したいタスクを定めてBGMなども流せる機能も搭載する。
手軽にVTuberになれる実験アプリも
発売から少し経ってから(11月下旬)にリリースされる「JINS MEME VTUNER」。
撮影:小林優多郎
そして、もう1つおもしろい取り組みと言えるのが「JINS MEME LAB」だ。
これは、JINS MEMEを活用した新しいサービスやコンテンツの総称で、第1弾「JINS MEME VTUNER」と第2弾「JINS MEME CONTROLLER」が公表されている。
VTUNERはその名から想像できるように、VTuberと呼ばれるようなアバターをJINS MEMEのセンサーを使って動かすアプリで、2021年11月下旬にローンチ予定。
アバターはデフォルトで3種類。自分でアプリ内でカスタマイズしたり、VRM形式のアバターを読み込むことも可能。
撮影:小林優多郎
アバターは3つのプリセットのほか、ある程度自分でカスタマイズしたり、オープンソースの「VRM形式」のアバターを読み込める。
ジャイロセンサーなどで頭部の動き、3点式眼電位センサーからまばたきを同期することできる(黒目の動きの同期はまだ)。これらと、プリセットのアクションを組み合わせれば、表現力がかなり豊かになる。
頭やまばたき以外の動きは、アクションで表現する。なお、口も動くがこれはiPhoneのマイクで得られている音から自動で生成されているという。
撮影:小林優多郎
実際にデモを試してみると、メガネをかけるだけで手軽にアバターを操作できる(特にまばたきの頻度)というのはかなり驚きの体験だった。専用の機材を用いれば、より自然な動きが可能だ。
なお、第2弾「JINS MEME CONTROLLER」は、VTUNERと同じく頭の動きやまばたきのデータを活用して、PCやスマホなどを操作するための取り組み。こちらは研究開発中という状態で、現在は開発に協力してくれるユーザーを募集している段階だ。
月額500円の“メガネのサブスク”
JINS MEMEを利用するには本体を購入するほか、アプリのサブスクリプションも契約する必要がある。
撮影:小林優多郎
新型JINS MEMEは本体こそ買い切りだが、アプリのさまざまな機能はサブスクリプションを採用している。
JINS MEME Appを利用するには月額500円もしくは年額5000円の月額課金の契約をする必要がある。
最初の12カ月間は無料にはなっているが、ユーザーがメガネのフル機能を利用するのに月額500円を払いたいと思えるかが、新型JINS MEMEのビジネスとしての明暗を決める。
写真左から田中仁CEO、JINS MEMEのCMに出演するサカナクションの山口一郎さん、JINS MEMEクリエイティブディレクターの岩原一平氏。
撮影:小林優多郎
また、JINS MEME LABの取り組みにも注目したい。
例えば、発表会が開催された10月6日にVTUNERのデモブースにいた担当者は「(VTUNERが好評であれば)課金によって、より豊富なアバターやアクションが選べるようになるなどの可能性もありうる」と話していた。
初代から6年弱ぶりの登場となった第2世代JINS MEMEは、センサーやIT技術を駆使することでメガネが“メガネを超える”可能性のある、期待できる製品と言えるだろう。
(文、撮影・小林優多郎)