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五輪金メダリスト・水谷隼さんに聞く「燃え尽き症候群、どう乗り越えましたか?」

水谷隼

卓球で史上初となる五輪金メダルを獲得した水谷隼さんが語る、「最強メンタルの作り方」とは ── 。

撮影:西山里緒

元プロ卓球選手の水谷隼さんが、初の“ビジネスパーソン向け”の書籍『打ち返す力 最強のメンタルを手に入れろ』を刊行しました。

ロンドン五輪後の不正ラバー問題の告発から東京五輪での金メダル獲得、そして引退の決め手となった目の不調……。「今、水谷隼が考えていること」を網羅した内容になっています。

10月、出版を記念して、水谷さんが朝活コミュニティ「朝渋」に登壇。Business Insider Japanの単独インタビューを通して、水谷さんを五輪金メダリストにまで導いた“最強のメンタルの作り方”を教えてもらいました。

東京五輪前、モチベーションを保った方法は?

── 前代未聞の混乱の中で迎えた東京五輪。延期されていた1年間、どう過ごしていたのでしょうか?

水谷隼さん(以下、水谷):正直、東京五輪はないだろうなと思っていました。2月頃には、自分自身の身体もアスリートとは言い難いくらいぽっちゃりしてしまって……。

ドタバタが続きすぎて「どうしたらいいんだ?」と思っていましたが、4月頃からは吹っ切れて、もうオリンピックやる・やらない関係なく、単純に自分がもっと強くなろう、と考えて練習していました。

── アスリートのメンタルヘルスは、東京五輪でも大きなニュースになりました。水谷さんも長い選手生活の中で、心がポッキリと折れてしまうことはなかったのですか?

水谷:ロンドン五輪の時は、期待されていたのにメダルを獲得できなくて。自分のメンタルも良くない方向に行って、不眠症にも陥りましたし、環境や周りのせいにもしてたんです。

どん底にいた中で、思い切って環境を変えてみた。自腹を切ってコーチを雇い、ロシアのプロリーグでプレーすることを決めたんです。それが結果的に良かったですね。

借金してコーチを雇うとは常軌を逸しているが、自己破産のリスクを背負ったっていいと覚悟していた。リスクを背負って死ぬ気で戦えば、必ず結果を出せるという確信もあった。果たして、奇跡は起きた。(『打ち返す力』より)

── コロナ禍で「燃え尽き症候群(バーンアウト)」は社会的にも問題になっています。バーンアウトを経験した時に実践すべきルーティーンなどはありますか。

水谷:先のことを考えすぎると、その時間が長すぎて折れてしまう。スランプに陥った時は、今日何をした、いくら稼いだ……、とその日のことだけを考えるようにしていました。

あとは、金メダルが欲しいという願望を誰よりも持つ一方で、「自分なんかじゃ無理だ、取れないだろうな」という考えがよぎることもありました。でも、「夢は基本的に叶わない、叶えるために努力することに意味があるんだ」と思い直すと、自然と「行動すること」に意識が向き、過度なプレッシャーを感じなくなるんです。

ビッグマウスも「キャラ作り」

水谷隼

意識的にキャラの使い分けをしていると語る、水谷さん(写真は「朝渋」イベントの様子)。

撮影:西山里緒

── 水谷さんといえば、五輪の金メダル獲得後に、自身に寄せられた誹謗中傷についてTwitter上で告発したことでも波紋を広げました(現在ツイートは削除)。

水谷:僕はビッグマウスというキャラでやっていたので、何かと絡まれやすかったんです。オリンピック中も、リプライやDMもガンガン見ていましたが、やっぱり誹謗中傷があると心がえぐられます。あれは心を病んでしまってもしょうがないと思います。Twitterで告発したことで、誹謗中傷は10分の1くらいになりました。

いじめている人間が100%悪いのであって、いじめられている人間に一分も非はない。私はこれからも、ネット上の誹謗中傷に立ち向かっていく。木村花選手のような悲しい事件は、二度と引き起こしてはならないのだ。(『打ち返す力』より)

── 2012年には不正ラバー問題を告発して、半年間試合もボイコットされました。反響も大きかったのでは?

水谷:卓球選手としては前代未聞だったと思います。その時は用具によって実力差がつきすぎてて、もう勝てないというレベルだったので「誰にどう思われてもいいや」という感じでしたね。周りの選手は、見て見ぬ振りが多かったです。不正ラバーを使っている選手も多かったんで。

残念ながら、補助剤によるラケット・ドーピングが横行している現状は、今も変わっていない。だが告発から長い時間が経ち、状況は変わった。用具メーカーのイノベーションによって、ラケットやボールの性能は見違えるほど進化した。(『打ち返す力』より)

今はその当時と比べたら周りの目を気にして、当たり障りのないことばかり言ってますね(笑)。たまに変なこと言うと、コメント欄で味方と敵みたいな場外乱闘が起こってしまうので、火種をまかないようにしてます(笑)。

── かなり意識的に「キャラ作り」をされているんですね。

水谷:僕はもともと根暗な性格なので、努力しないと理想的な人格にはなれないと思っているんです。長嶋茂雄さんのような天性の大スターにも憧れますが、元の性格が違うので。

原点は、幼少時のスパルタ教育

水谷隼

「負けた試合の方が、勝った試合よりもずっと記憶に残っています」(水谷さん)

Steph Chambers / Getty Images

── 幼少時から高いモチベーションを保って卓球を続けられてきました。そもそも、その原点はどこにあったのでしょうか。

水谷:家庭が厳しくて、スポーツも勉強もやらされて遊ぶ時間が全くなかったんです。小学3年生の時「何のために生きているんだろう」と思うくらい、生きるのがつらくて。生まれ変わったらこうはなりたくないな……と考え続けて、「もう(擬似的に)生まれ変わろう」と。

そこで今までの水谷隼というのは死んで、そこからは自分がこう生きたい、という自分を「キャラ」として演じているイメージがどこかあります。当時、生まれ変わったことは両親は気づいてないと思いますが(笑)。

── 小学3年生にしてすごい達観ぶりですね……。「擬似的に死ぬ」とは。

水谷:その時の理想の自分として、どんな人と対峙しても対等に語れる人間になりたい、と思っていました。そんな自分になるために、今まで必死で努力してきた。強烈な原体験があると、モチベーションを高め続けられるのかな、と思います。

── つらい経験の方がモチベーションの原動力になる、と。

水谷:北京やロンドン五輪で負けた記憶は今でも鮮明に覚えています。嬉しい記憶より悔しい記憶の方がずっと残っていますね。でも、リスクを冒さないと本当に悔しい経験ってできないじゃないですか。それが成長につながるのかな、と。

伊藤美誠選手とは「コート内だけの関係」

── 卓球競技からの引退を宣言されました。元アスリートとして、今後取り組んでいきたいビジネスはあるんでしょうか。

水谷:まだ、さすがにないですね(笑)。今は新人研修中みたいな感じです。SNSを強化して、自分がこういうことやっているよ、とわかってもらえるようにしてます。

── テレビ番組で(幼馴染でもあり混合ダブルスのパートナーでもあった)伊藤美誠選手と「じゅんみまカレー」を作りたい、と話され、ファンの期待も高まってます。実現の可能性は?

水谷:あれは、流れちゃいました。年齢も全然違いますし事務所も違うので、今後、一緒に活動することもないんじゃないですかね。元々そんなに連絡も取ったりしないんで(苦笑)。コート内だけの関係です(笑)。

(取材・文、西山里緒

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