無料のメールマガジンに登録

平日17時にBusiness Insider Japanのメルマガをお届け。利用規約を確認


世界的なエネルギー危機で、2022年初めまでに考えられる4つのシナリオ

エネルギー危機、2022年に4つの考えられるシナリオ

Getty Images

  • 世界的なエネルギー危機で市場はかつてない混乱に陥っている。
  • ヨーロッパでは天然ガスの価格が過去最高を記録し、中国では石炭の先物価格が史上最高値になった。
  • バンク・オブ・アメリカのフランシスコ・ブランチは、2022年初頭までに考えられる4つのシナリオをInsiderに明かした。

需要急増と供給不足の中で明らかになった世界のエネルギー危機は、石油・ガス市場にかつてない混乱を引き起こしている。

原油価格は2021年に60%以上も上がり、2021年10月15日、ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の原油は7年ぶりの高値となった。

他の地域でも、さらに異常な状況となっている。ヨーロッパでは天然ガスの価格が過去最高を記録し、スポット市場の価格は2021年になって3倍に高騰している。中国の石炭価格も史上高値を更新し、2021年に入ってから3倍になった。

エネルギー価格の高騰が続く中、バンク・オブ・アメリカのグローバル・コモディティス・デリバティブ・リサーチ部門の責任者、フランシスコ・ブランチ(Francisco Blanch)は、彼が考える2022年初頭までの4つのシナリオをInsiderに話してくれた。どのシナリオにも価格が落ち着く可能性はあるが、中には痛みを伴うシナリオもある。


1. エネルギー価格の上昇で、経済が破綻

フランシスコは、現在のエネルギー危機を2007年から2008年の原油価格高騰になぞらえている。2007年初頭、ブレント原油は1バレルあたりわずか50ドルだったが、2007年末には2倍近くの95.98ドルになった。さらに2008年7月末には、1バレルあたり150ドル近くまで上がり、史上最高値になった。だが、その後の大不況によって原油価格は見事に暴落した。

もし今、同じような原油価格の高騰が起きたら、主要産業は急激に生産活動を減らすか閉鎖するかし、最終的に不況になるだろうとフランシスコは述べている。実際、ヨーロッパやアジアでは、エネルギー価格の高騰によってすでに操業停止を余儀なくされている企業がある。

2. 生産量の増加、あるいは代替品の需要増

どんな商品でも価格が上昇すれば、生産者は生産量を増加するか、手頃な代替品を見つけることになるとフランシスコは言う。

これまでところ、アメリカではシェールガス関連企業が2022年に国内生産にさらに資金を投じる計画を示している。だが、株主への利益還元を優先して投資が抑制されているため、原油を生産する準備はまだのようだ。

一方で天然ガスと石炭の価格の上昇により、石油に切り替える企業もある。国際エネルギー機関(IEA)によると、それによって世界の需要は1日に約50万バレル増えることになるという。

3. 暖冬で問題が一時的に緩和される

暖房用に天然ガスと石炭の需要が急増する冬の前に、世界のエネルギー価格の上昇は起こった。エネルギー価格が高止まりする中、世界中のバイヤーは限られた供給量をめぐって競争を繰り広げている。アメリカのエネルギー情報局(EIA)は2021年10月13日、暖房費の高騰に備えるようアメリカ国民に注意を促した

だが、予想以上に暖かい冬になったら、需要は自然と下がり、問題は一時的に落ち着くだろうとフランシスコは述べた。

4. 需要を下げるために、中央銀行が金利を引き上げる

フランシスコによると、中央銀行が需要を減速させる可能性がある。これは、金利引き上げと量的緩和の縮小のことで、経済成長とエネルギー消費が冷え込むという。

連邦準備制度理事会は、経済の回復とインフレ率の上昇が続く中で、2021年後半には債券の購入を減らし、2022年に利上げを開始することを示唆している。

「アメリカドルやユーロ、フィリピンのペソは印刷できる。だが、コモディティは印刷できないことを覚えておいてほしい」と彼は述べた。



[原文:The global energy crisis has 4 possible paths through early 2022, says Bank of America

(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み