アップルは新しいチップセットを搭載したMacBook Proを発表した。
出典:アップル
アップルは10月19日、ノートPCシリーズ「MacBook Pro」シリーズの最新機種を発表した。アップル直販サイトの価格は以下の通り(いずれも税込)。10月26日から出荷予定。
出典:アップル
- 14インチMacBook Pro(M1 Pro [8コアCPU/14コアGPU]、メモリー16GB、ストレージ512GB)……23万9800円〜
- 14インチMacBook Pro(M1 Pro [10コアCPU/16コアGPU]、メモリー16GB、ストレージ1TB)……29万9800円〜
- 16インチMacBook Pro(M1 Pro [10コアCPU/16コアGPU]、メモリー16GB、ストレージ512GB)……29万9800円〜
- 16インチMacBook Pro(M1 Pro [10コアCPU/16コアGPU]、メモリー16GB、ストレージ1TB)……32万1800円〜
- 16インチMacBook Pro(M1 Max [10コアCPU/32コアGPU]、メモリー32GB、ストレージ1TB)……41万9800円〜
以下、発表会で公表された新型MacBook Proのおさいえておきたいポイント5つを紹介しよう。
1. Pro向けの新型M1チップは2種類だった
M1チップに改良を加えた「M1 Pro」。
出典:アップル
PC向けアップル独自チップの第1世代「Apple M1」の驚異的な性能は、2020年11月登場のMacBook Proや2021年5月登場のiMacなどで示されてきたとおり。
2021年はそのさらに進化版が当然予想されていたが、大方の予想に反してアップルは新型MacBook Proに合わせて「M1 Pro」およびその上位にあたる「M1 Max」の2種類のチップを披露した。
名称の通り主なアーキテクチャはM1と同様だが、M1 Proは最大で8つの高性能コア+2つの省電力コアの10コア構成になり、CPUのパフォーマンスだけで見ればM1比で最大70%向上をうたう。
さらに、メモリー帯域が増え、選べるメモリー容量も32GB(M1は最大16GB)までアップ。
グラフィックス面においても、M1 ProはM1より8コア多い16コアもしくは32コアのGPUを搭載。グラフィックス性能はM1比で最大2倍まで高速化しているという。
M1 ProからさらにGPUのコア数やメモリー帯域を増やした「M1 Max」。
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一方、M1 MaxはM1 Proと比べて、よりメモリー帯域を増やし、GPUをさらに強化したハイエンド向けチップだ。
M1 Maxで選択可能なメモリー容量は32GBもしくは64GB。GPUは最大32コア。GPUのパフォーマンスだけ見れば、M1 MaxはM1の最大4倍の性能を持つという。
実際の作業の快適度については実機レビューの結果が待たれるが、アップルは
- Final Cut Proでの4Kレンダリングが、M1 Proでは最大9.2倍、M1 Maxでは最大13.4倍高速化
- Blackmagic Design「DaVinci Resolve Studio」でのエフェクトのレンダリングが、M1 Proでは最大3.6倍、M1 Maxでは最大5倍高速化。
といったパフォーマンス向上をうたっている。
2. ディスプレイがさらに広く、狭額縁化でスタイリッシュに
HDR表示も可能な「Liquid Retina XDRディスプレイ」を搭載。
出典:アップル
新型MacBook Proは中身のチップセットだけでなく、外観からもわかる違いがある。
その最もたるものがディスプレイだ。14.2インチモデルは3024×1964ドット、16.2インチのディスプレイは3456×2234ドットの解像度。
いずれも2021年発売の12インチiPad Proと同様の技術を使ったミニLEDバックライト採用した「Liquid Retina XDRディスプレイ」を搭載している。
画面は額縁ギリギリまで広がっている分、正面カメラが食い込んだようなデザインになっている。
出典:アップル
持続輝度最大1000ニット、ピーク輝度は1600ニットの表示や、表示コンテンツに合わせての画面書き換え速度(リフレッシュレート)が24〜120Hzで可変する「ProMotionテクノロジー」が利用できる。
単に表示が美しいというのも進化点ではあるが、後述するカメラが画面上部で食い込んだように見えるデザイン(最近のiPhoneやiPad Proと同様)のいわゆる“ノッチ(切り欠き)”として液晶にカメラを食い込ませることで、画面の額縁幅が3.5mmまで狭くなっていることが印象的だ。
3. カメラは1080pのFaceTime HD
正面カメラも高画質化。
出典:アップル
そのカメラだが、1080pのFaceTime HDカメラを搭載している。
新しい4枚構成のレンズで、取り込める光の量を示すF値は2.0。アップルによると、明るさが足りない画面でのカメラのパフォーマンスは2倍になるという。
2021年発売のiPad ProやiPad miniで採用された超広角レンズと機械学習を組み合わせて、被写体を追尾してフレーミングする「センターフレーム(英名:Center Stage)」には非対応だが、ビデオ会議などをするには十分な性能だと言える。
なお、画面ロック解除やApple Payでの支払いなどに利用する生体認証は“顔(Face ID)”ではなく、今回も従来通り“指(Touch ID)”となる。
4. Touch BarがついにProから廃止に
キーボードからはTouch Barがなくなった。
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キーボード側にも大きな変化がある。昨今のMacBook Proに搭載されいてた小型タッチディスプレイ「Touch Bar」が、最新のProシリーズ全般から廃止された。
発表会の発言によると、2021年登場のM1搭載iMacと一緒に登場したTouch ID付きのMagic Keyboardと同様の配列を踏襲したという。つまり、F1〜F12まで、物理的なファンクションキーが搭載される。「Pro」の性能が必要なエンジニアやクリエイターには、この仕様を待望していた人も多いだろう。
ただし、右下の方向キーに関しては、Magic Keyoboardとは異なり逆向きのT字型になっている。
5. 「Pro」らしい充実した端子…HDMI、SDカードスロット、USB-C
USB Type-C以外にもHDMI出力、SDXCカードスロットを備える。
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映像制作の現場などを意識しているからか、新型MacBook Proのインターフェイスは従来と比べて使える端子の数を大幅に増やしている。
前モデルの13インチMacBook Proでは2ポートのThunderbolt 3/USB 4(USB-C)しかなかったが、新型MacBook Proでは
- 3ポートのThunderbolt 3/USB 4
- HDMIポート
- SDXCカードスロット
- (iPhoneやAirPodsと異なる)MagSafe 3
が搭載されている。
なお、充電はMagSafe 3からだけではなく、Thunderbolt 3/USB 4ポートからも可能。
付属する電源アダプターは、14インチ版の場合は8コアCPUのM1 Proモデルで67W、10コアCPUのM1 ProかM1 Maxモデルで96W。16インチ版の場合は、いずれも140Wと大出力な電源アダプターになる。
M1 Maxを最大限生かしても40万円以下で買える
M1 Proを選ぶか、M1 Maxを選ぶかが問題だ。
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さて、気になる最高構成と最小構成の価格だが、現状では以下の通り。
- 最小構成:14インチMacBook Pro(M1 Pro[8コアCPU/14コアGPU]、16GBメモリ、512GBストレージ)……23万9800円
- 最大構成:16インチMacBook Pro(M1 Max[10コアCPU/32コアGPU]、64GBメモリ、8TBストレージ)……70万5800円
併売されるM1搭載の13インチMacBookが最小構成で14万8280円であることを考えると、新しいCPUやディスプレイを選ぶだけで約9万円ほど高くなる計算で、今回のモデルがいかに「プロ機材」を意識しているかがわかる。
一方で、最大構成は主にストレージだけで標準の1TBから8TBにするだけで+24万2000円になっており、これを抑えるだけで比較的現実味を帯びた価格帯になってくる(それでも40万円ほどはするが)。
個人的に注目の構成は
- 14インチMacBook Pro(M1 Max[10コアCPU/24コアGPU]、32GBメモリ、1TBストレージ)……36万5800円
だ。40万円以下でM1 Maxを試せる最低限の構成というところがポイント。ただし、もう2万2000円上乗せすれば、32コアGPUの「真の性能」とも言えるM1 Maxが手に入るため、この辺りはかなり悩ましい。
M1より性能の良いM1 Pro。そして、さらにGPU性能やメモリー帯域を増やしたM1 Maxどちらを選ぶべきか、想定している用途と予算に合わせて慎重に選ぶ必要があるだろう。
(文・小林優多郎)