フルモデルチェンジして登場した第3世代のAirPods。
出典:アップル
アップルが10月19日未明(日本時間)に開いたこの秋2回目の発表イベント。50分の短い発表の中で、新型MacBook Pro、新しいApple Musicプラン「ボイスプラン」などが発表された。
その中で目玉の1つが、世界で最も売れている完全無線イヤホン(カウンターポイント調べ、2020年Q3)である「AirPods」のフルモデルチェンジだ。
新型は第3世代にあたり、価格は2万3800円(税込)、即日注文受け付け、10月25日出荷開始。
旧AirPodsと何が変わり、上位モデルにあたるノイズキャンセル対応AirPods Proとどこが「同じ」なのか。
7つののポイントを見ていこう。
1. デザイン一新、「Pro」のイヤーチップなし版のような外観
第3世代の新型AirPodsの外観。見た目はAirPods Proのデザインを踏襲している。
出典:アップル
最初の「AirPods」が登場したのは2016年。2019年には無線充電機能やSiri対応が追加された第2世代になったものの、デザインにはほぼ変化がなくマイナーチェンジに近かった。見た目や機能が大きく変わるのは、実に5年ぶりということになる。
外観は、上位モデルにあたる「AirPods Pro」に非常に似ている。
第3世代のAirPods(左)、第2世代(中央)、AirPods Pro(右)。サイズの違い、デザインの違いがわかりやすい。
出典:アップル
特徴的な耳からのびる「棒」の部分がProのように短くなった一方、ノイズキャンセリング機能がないためか、Proのような耳を密閉するための、シリコン製のイヤーチップはない。
装着感としては、現行のAirPodsに近い、「耳に載せる」ような感覚ではないかと想像できる。なお、重量はAirPods Proに比べて片側1.12g軽く(約4.28g)、本体の長さはほぼ同じだ。
第2世代AirPodsとの比較でも重量は0.2g増にとどまる。
2. 「つまんでコントロール」機能はProゆずり
出典:アップル
「AirPods Pro」では、棒の部分をつまむことで音楽再生の一時停止などの操作ができた。新型AirPodsも、同様の操作ができる。
出典:アップル
3. IPX4等級の耐水性能アリ
出典:アップル
新型AirPodsでは、AirPods Proと同等の「IPX4等級の耐水・耐汗性能」を持たせている。これは、完全無線イヤホンがフィットネスやランニング時の用途が増えているためだろう。
なお、耐水・耐汗性能は、AirPods本体と、充電ケースの両方が持っている。
旧AirPodsは特に耐水や汗への耐久性はうたっていなかった。
4. 「Pro」より長い6時間駆動、充電しながら最大30時間再生
AirPods Proより優れた部分と言えなくもないのはバッテリー駆動時間だ。
ノイズキャンセル機能がない代わりに、1回充電あたりの再生時間は6時間(AirPods Proは4.5時間)。またケースで充電しながらだと、最大30時間の再生(同24時間以上の再生)になっている。
5. 空間オーディオ対応
iOS15の空間オーディオ機能。「オン」にすると、空間オーディオ非対応の音源に対しても、仮想的に立体音響を有効にでき、前方から聞こえてくるかのような体験ができる。
撮影:伊藤有
従来のAirPodsと体験面で大きく変わるのが、空間オーディオ対応になることだ。
この機能によって、Apple Musicの特定の楽曲や、Apple TV+のドルビーアトモス対応コンテンツで立体音響効果を使えるようになる。
また、未対応コンテンツであっても、iOSデバイス(iPhoneやiPad)なら仮想的に空間オーディオ対応する機能がiOS 15世代から搭載されている。
アップルは基本的に空間オーディオ対応の幅を広げる方向にあり、その体験の良さも含めてiOSデバイスを使っている人なら試してみる価値はある。
6. 音質強化、一方ノイズキャンセル機能はない
出典:アップル
上位のAirPods Proとの差分で大きな違いは、「ノイズキャンセル機能がない」ことだ。この部分の有無が、6780円の価格差のほぼすべて、ということになる。
音質面では、装着した人の耳の中の音の響きに合わせて低周波・中周波の音を自動調整する「Adaptive EQ」に対応する。これによって、フィット感のばらつきによる再生音質の違いを吸収するようだ。
7. まとめ:誰をターゲットにした製品か
新型AirPodsのポジショニングは、良くもわるくも「AirPodsの新型」ということだ。
AirPodsシリーズを初めて手に取る人には、良い選択肢だ。
一方、すでにAirPods Proを持っている人にとっては、買い換えるようなポイントはまったくない。
では、第2世代や第1世代AirPodsを使っている人にとってはどうか?
これは「空間オーディオを使いたいかどうか」が、1つ大きな体験の違いになりそうだ。空間オーディオはなかなかよくできた機能で、iPhoneを使ってるなら試す価値はある。
また、AirPodsに限らないが、完全無線イヤホンは内蔵バッテリーの劣化による再生時間の低下はどうしても発生する。その点で、最近バッテリーがもたなくなってきたと感じる人にも気になる機種にはなるだろう。
ただ、第2世代は今のところ併売されるようで、価格1万6800円と手ごろ。第3世代とはかなり違いがあるため、消耗品と割り切るなら第2世代をあえて選ぶという選択はまだ残されている。
(文・伊藤有)