Z世代のおかげでバケットハットが復活。
Westend61/Getty Images
- Z世代のミレニアム時代のトレンドへの傾倒が「先祖返りの経済」を生み出しているとアクシオスは分析している。
- Z世代は、Y2Kとプレップスタイル、感傷的なエンターテインメント、そして昔ながらのテクノロジーを復活させている。
- TikTokが、Z世代がソーシャルメディア以前の時代との絆を深め、トレンドを発信する場になっている。
ミレニアムが再び戻って来た。
かつてミレニアル世代で大人気だったすべてのものが、Z世代によって新たな命が吹き込まれている。ニュースサイト、アクシオス(Axios)のサラ・フィッシャー(Sara Fischer)は、ミレニアム世代の最大のトレンドを若い世代が復活させることで、鮮やかな色の服、感傷的なエンターテイメント、旧式のテクノロジーを特徴とする「先祖返りの経済(throwback economy)」を生み出していると考えている。
Z世代は、ミレニアル世代が今着ている服は嫌かもしれないが、彼らが10代の頃に着ていた服は大好きだ。Y2K(2000年頃流行った)のストレートやローライズのジーンズから、オックスフォード・シャツやテニス・スカートといった2000年代の「オールド・マネー(old money)」(代々受け継がれてきた資産を持つ富裕層)のプレップ・スタイルまで、過去10年前から20年前に流行したすべてのものが再流行している。
Z世代はこのような「ビンテージ」を探し求め、古着ブームの火付け役となっている。しかし、すべてが古着で見つかるわけではないため、10代の若者たちはギャップ(Gap)やアバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)のような旧来のファッションブランドを再びクールなものにして着こなしている。
ファッションの分野だけではない。Z世代のノスタルジーがエンターテインメントの世界も変えつつある。彼らは幼くて見ることができなかった番組や映画をストリーミング・サービスで発見している。アダム・サンドラー(Adam Sandler)は現在ティーンのお気に入りの俳優であり、「フレンズ(Friends)」は彼らの新しいお気に入りのテレビ番組で、ベニファー(Bennifer、ベン・アフレックとジェニファー・ロペス)やブリトニー・スピアーズ(Britney Spears)の話題は、ミレニアル世代が初めて目にしたときと同様にZ世代を魅了している。
そして、デジタルネイティブな世代であるにもかかわらず、Z世代は昔の技術を嫌ってはいない。彼らは、AirPodsを有線のヘッドフォンに変え、ヴィンテージアクセサリーのように身に着けていたりもする。
実は、これらのノスタルジックな欲求の根底には、現代のテクノロジーが存在しているのだ。
TikTokはノスタルジーを煽る
Z世代は、実はソーシャルメディアが登場する前の方が良かったと考えている。ハーバード・ケネディスクール政治研究所の世論調査ディレクターであるジョン・デラ・ボルペ(John Della Volpe)が行った新しい調査によると、対象となった1638人のアメリカ人のうち半数以上(53%)のZ世代が、このように感じていることが分かったという。
アクシオスのフィッシャーは、ソーシャルメディアのない世界へのノスタルジーは、皮肉にもソーシャルメディアの台頭によるものだと考えている。彼女によると、TikTokのアルゴリズムで「過去に戻るためのアイテム(flashback items)」はすぐに共有され、バズってしまうのだという。
TikTokは、2020年、パンデミックの隔離中にスマートフォンをいじる時間が十分にあったZ世代の間で爆発的に普及した。2020年9月までにTikTokは75%成長し、ダンス動画だけでなく、タイ・ダイ(tie-dye)柄の部屋着からバギー・ジーンズまで、彼らが昔ながらの新しいトレンドを探求する場になったのだ。
テキサス州オースティンにあるZ世代の調査会社ジェネレーショナル・キネティクス・センター(Center for Generational Kinetics)を運営するジェイソン・ドーシー(Jason Dorsey)は、TikTokがパンデミックの際に親元に戻るという同じような経験をしたZ世代がデジタル上で絆を深める場になったと、以前Insiderに語っている。そのため、こうした昔懐かしい流行が根付きやすくなったのだ。
経済が混乱しているときにはノスタルジーを感じやすくなるという調査結果がある。新型コロナウイルスのパンデミックの最中に、ノスタルジック・マーケティングが熱狂的な盛り上がりを見せたのもそのためだ。Z世代にとって、ソーシャルメディアが普及する前に流行していたトレンドに目を向けることは、パンデミックの不安からの逃避になっていたのだろう。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)