テキサス州はグリーンエネルギーに移行しても経済好調…その3つの理由とは

テキサス州ロレインの風力発電機。

テキサス州ロレインの風力発電機。

Nick Oxford/Reuters

  • テキサス州は石油・ガスからグリーンエネルギーへと徐々に移行しているが、その経済は依然として好調だ。
  • ダラス連邦準備銀行は、長期的に見るとグリーンエネルギーへの移行が経済成長を阻害することはないと述べている。
  • テキサス州は、アメリカ経済全体がグリーンエネルギーに移行する際のモデルケースになる可能性がある。

ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領は選挙戦で、二酸化炭素排出量を削減し、環境に優しいエネルギーへの転換によって、気候危機に立ち向かうと訴えた。そして実際にそのような取り組みを進めたとしてもアメリカ経済が健全性を保てることを、テキサス州が示してくれるかもしれない。

ダラス連邦準備銀行のエコノミスト、クリストファー・スライク(Christopher Slijk)とキース・R・フィリップス(Keith R. Phillips)はこのほど、テキサス州の石油・ガス分野の衰退が経済に与える影響を調査したレポートを発表した。ダラス連銀による別のレポートによると、同州は石油・ガス産業が盛んで、アメリカのどの州よりも多くの二酸化炭素ガスを排出しているという。スライクらは、この分野でのテキサス州の優位性は年々変化してきたが、同州の受けた長期的な経済への影響は軽微なものだったと指摘している。

現在、テキサス州では風力・太陽光発電への移行が進み、その割合は過去10年間で8%から25%に増加している。一方、石油・ガスの生産量は減少しているが、「テキサス州の経済成長率は全米の成長率を上回り続けている」という。

このことから「石油・ガス分野の上流部門がエネルギー転換により長期にわたって衰退しても、テキサス州の経済の相対的な強さは今後数十年にわたって持続する可能性がある」とスライクらは記している。

以下で、テキサス州がグリーンエネルギーへの移行してもアメリカ経済が健全性を保つことを示しているという3つの理由を紹介する。

  1. テキサス州は、すでに風力発電量が全米で最大の州になっている。現在150以上の風力発電所があり、テキサス州電気信頼性評議会(Electric Reliability Council of Texas)によると、2017年の発電量のうち、15.7%以上が風力発電によるものだったという。石油・ガス生産量の減少にもかかわらず、テキサス州はエネルギー生産をリードし続け、雇用を創出している。スライクらは「グリーンエネルギーへと段階的に移行しても、長期的に見て州の経済成長が減速することはないだろう」と指摘している。
  2. これまでの経緯を見ると、風力・太陽光エネルギーが台頭し、石油・ガスの生産量が減少してきたにもかかわらず、テキサス州の経済は好調に推移してきたことが分かる。1980年、テキサス州では州のGDPの15%以上、雇用の5%近くが石油・ガス部門によるものだったが、それをピークに同州の経済に占める石油・ガス生産の割合は減少し続けている。2014年からは水圧で岩を破砕するフラッキングという方法で石油やガスの採掘が行われるようになったが、それでも需要が伸びることはなかった。
  3. 石油やガスにはさまざまな用途があることから、引き続き、雇用創出が可能だ。完全な脱炭素社会を実現しても、例えば、石油・ガスを化学製品の製造に利用すれば、その分野で雇用を創出できるということをテキサス州は示している。

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