この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「PFM:個人資産管理ツール(Personal Finance Management)」のプレビュー版。
個人資産管理(PFM)ツールの提供により、銀行は高度にパーソナライズされた顧客体験を実現し、収益増と顧客維持につなげることができる。
※この記事は2021年5月13日に公開した記事を一部編集して再掲載しています
「資産データを一覧で見られる」だけでは不十分
既存銀行、フィンテック、巨大IT企業など、さまざまな企業が個人資産管理サービスを提供している。
Business Insider Intelligence
現在、幅広いタイプの企業がPFM事業に価値を見出しており、市場にはさまざまなPFMツールが存在する。だが、10年以上前から「銀行業の未来」と喧伝されてきたわりに、PFMツールはこれまで既存の銀行や消費者にとって大きな価値を生んでこなかった。調査会社セレント(Celent)の最新のデータによると、PFMツールの利用率は2017年以降10〜12%と停滞している。
利用が伸び悩んでいる要因は、銀行による初期のPFMツールの使い勝手の悪さにある。資産データを表示するだけで、「データから得られる洞察」「個々人への的確なアドバイス」「より簡単に使える資産管理機能」などが提供されていない。
エンゲージメントを把握しやすくするため、機能が個別タブ内に限定されていてUXも良くない。また、オープンバンキング以前は規制に阻まれ、顧客の金融資産データを十分に収集できず、パーソナライゼーションが難しかった。
「賢く簡単に」お金を管理できる機能がほしい
目的達成に必要なお金を貯めたり増やすのに役立つ資産管理ツールへの需要は高い。
Business Insider Intelligence
だが「AI」「スマートアナリティクス」「オートメーション」などの技術の進歩や「オープンバンキング」などの規制環境の変化により、最先端のPFMツールは格段に使いやすくなっている。ユーザーは簡単な操作で自分の金融資産を効率的に管理できるようになった。
技術の進歩や規制環境の変化により、新しいタイプのPFMプロバイダーが以前よりも「洞察力」「精度」「予測力」に優れた機能を提供している。意味のある形で資産管理ができるため、ユーザーのエンゲージメントも高く、サービス提供側にとっても強力なツールとなっている。
こうした先端的なPFMツールの人気は上々だ。既存の銀行はこうした競合に対抗できなければ、顧客のエンゲージメントとロイヤルティを失う危険性がある。一方で、今よりもっと有効に資産を管理できるツールを顧客に提供できれば、エンゲージメントが上がり収益増につなげられる。
改良のための「ベストプラクティス」と「成熟度モデル」
PFMデジタル成熟度モデル:「アカウント・アグリゲーション」「支出の可視化」「ポートフォリオ自動調整」「貯金の自動化」などの機能を評価。
Business Insider Intelligence
インサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「PFM:個人資産管理ツール」では、最初に現在のPFM市場を構成するプレイヤーを主なカテゴリーごとに概観する。さらに、PFMツールの改良を目指す銀行のためのベストプラクティスを大手PFMプロバイダー7社への取材をもとに紹介する。
次に、銀行や他のPFMプロバイダーが新しい機能を構築する際に目指すべき基準を「PFMデジタル成熟度モデル」として提示する。
そして、銀行がPFMツールになぜ再投資すべきなのか改良が必須である理由を説明する。顧客や銀行に大きな価値をもたらしている「8つの洗練されたPFM機能」について、提供企業へのインタビューをもとに解説を行う。
本レポートで言及される企業:
Cleo AI, Greenlight, Meniga, Minna Technologies, N26, Personal Capital, Personetics, Strands
本レポートのキーポイント:
アメリカの大手銀行の資産管理ツールはどのような機能を提供しているのか。
Business Insider Intelligence
- 金融サービス企業は、PFMツールの提供により高度にパーソナライズされた顧客体験を実現し、収益増と顧客維持に繋げることができる。だが、銀行のPFMツールは顧客の期待に十分に応えられていない。消費者は、銀行が提供する他のどのタイプのサービスよりもPFMサービスに対して不満を感じている。オラクルの調査によると、回答者の40%以上が銀行以外のプロバイダーのPFMツールの方が便利で役に立つとしている。
- 一方で、銀行のPFMツールには大きな需要がある。そのため銀行は現行ツールの改良に取り組み、顧客に売り込むべきだ。ウェブメディアThe Financial Brandが引用するRFiの調査によると、対象者の75%が「メインで利用している金融機関(多くの場合は銀行)のPFMツールを使いたい」と回答しており、「フィンテックやネオバンクのPFMツールを使いたい」としたのはたった6%だった。
- 成熟した機能を取り揃えて使い勝手のよいPFMツールを提供できれば、銀行はより多くのチャンスを掴める。PFMへの投資で得られるリターンは主に2つある。
顧客維持:コンサルティング企業PSFKによると、Z世代の71%が「自分の目標や願望の達成を、企業にサポートしてほしい」と考えている。PFMツールでパーソナライズされた洞察やアドバイスが得られれば、顧客にとってサービスの価値は大きく上がる。
顧客生涯価値の増加:金融サービス・ソリューション提供企業MXが引用するJavelin Researchの調査データによるとPFMツールを利用する顧客は、そうでない顧客と比べると、平均して18%裕福だという。さらに彼らは住宅ローンや自動車ローンなど、金融機関の主な収益源であるサービスを全部利用している割合も高い。
本レポートの完全版では:
- 顧客にとっての価値が増すよう、PFMツールを改良したいと考えている銀行の参考になるベストプラクティスを提示する。
- 多様なサービスが乱立するPFM市場において、業界をリードする先端的な企業をタイプ別に概観する。
- 「ベーシックな機能と成熟した機能の違い」理解するのに役立つ「PFMデジタル成熟度モデル」を提示する。
- 「PFMツールの改良」が銀行にとって必須である理由と、改良によって得られる利益について説明する。
- 独自取材で得られた情報をもとに、洗練されたPFM機能を導入するための成功戦略を検証する。
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(翻訳・野澤朋代)