ゴーストキッチンの店「クラスタートラック」の内部。
ClusterTruck
- ゴーストキッチンのパイオニアである「クラスタートラック」は、配達ドライバーに最大で年間8万8000ドルの給与を払う。
- この賃金を確保するため、同社は配送業者を利用しないモデルを採用している。
- 同社ではドライバーが十分な賃金を得られるよう、その人数を増やしすぎないようにしているという。
デリバリーのみの飲食店サービスであるゴーストキッチンは、パンデミックの開始とともに人気になった。それから18カ月以上たった今、多くの飲食店が店内でのサービスを再開しているが、彼らはその存在感を維持している。
市場調査企業のユーロモニターによると、ゴーストキッチンは2030年までに1兆ドル規模の市場になる可能性があるという。
成功の主な要因は、従来の飲食店とは異なるコスト構造だ。配達専門のゴーストキッチンはわずかな従業員のみで行うことができ、不動産の賃料と人件費を大幅に削減することができる。そして、インディアナ州インディアナポリスを拠点とするクラスタートラック(ClusterTruck)の場合は、ドライバーの幸せもビジネスの成功に必要不可欠だという。
「ドライバーは、クラスタートラックでは中心的な存在だ」と、同社COOのブライアン・ホーウェンシュタイン(Brian Howenstein)はInsiderに述べている。
同社は垂直統合を行っており、店内のシェフが注文を調理して、自社の配達ドライバーが顧客に届けるまで、すべての工程を自社で管理しているという。
特に注目すべきは自社の配送網を持っている点だ。ホーウェンシュタインによると、すべてのドライバーは、Deliverooやウーバーイーツ(Uber Eats)などの第三者のデリバリーサービスを通じてではなく、クラスタートラックと直接契約した請負ドライバーだ。
彼らの仕事は、必要に応じて割り当てられる。「ドライバーがクラスタートラックの配達を行いたいときは、アプリで『配達可能』をクリックする。我々が注文を受けるとドライバーに通知を送り、ドライバーはキッチンに向かい、配達を開始する」と、ホーウェンシュタインは話す。
同社は、過剰にドライバーを抱えることがないようにコントロールしているという。「我々のシステムを機能させるためには、ドライバーを幸せにして十分に稼げるようにしなければならない」と彼は述べた。
同社ではドライバーが決して飽和状態にならないように運営する。「100件の注文を受けたら、その配達にはわずか20人程度のドライバーに依頼する。我々は、ドライバーそれぞれが幸せになるために十分な金額を稼げるようにしたいし、よい仕事ができるようにしたい」
このような仕組みによって同社はドライバーに時給15ドル(約1700円)以上を支払っている。そしてオンデマンドのビジネスモデルの結果、彼らは年間8万ドル(約900万円)以上を得ることができるという。Insiderでは、クラスタートラックから資料の提供を受け、このような賃金支払いの事実を確認した。
このような高額の給与は、ドライバーが1時間で割り当てられる配達件数に依存している。「我々は彼らの稼働率を高く維持し続けている。彼らが稼げるのはそのためだ」とホーウェンシュタインは話す。
同社のクリス・バゴット(Chris Baggott)CEOは、ドライバーに1時間で4件から6件の仕事を提供しているとInsiderに話した。「ウーバーやドアダッシュのドライバーは、1時間で1.2件から1.3件の仕事ができればラッキーだろう」と彼は言う。
「我々の目標は、ギグ・エコノミーで最悪の仕事だと思われている料理の配達を、最高の仕事にすることだった」と、バゴットCEOは語った。
「我々は彼らにサービススタッフと同様に接している。彼らは当社の顔だ」
クラスタートラックはまた、利益を確保しつつ、配達手数料なしというモデルで競合と差別化している。ホーウェンシュタインは、不必要なサービスのコストを削減できるため、同社はこのモデルで運営できるのだと述べた。
また ホーウェンシュタインは次のようにも述べている。
「顧客が我々のところに来るのではなく、我々が顧客のもとへ配達するスタイルだから、待機している従業員はいないし、高い不動産賃料を払う必要もない」
ホーウェンシュタインによると、ゴーストキッチン業界の95%は依然としてサードパーティーのデリバリーサービスを使用したモデルであり、彼の意見では、その経営は根本的に破綻しており、利益を上げられないという。
今後について彼は、競合他社が顧客に支持されないほどの価格上昇を行わず利益を上げられるかに注目したいと語っている。
(翻訳:Makiko Sato、編集:Toshihiko Inoue)