Z世代は「大改造」を推し進めている。
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- 若い労働者のおかげで「大退職(Great Resignation)」は、むしろ「大改造(Great Reshuffle)」になっているとリンクトインのCEOは話している。
- Z世代の転職は前年比で80%増え、ミレニアル世代でも50%増加している。
- Z世代もミレニアル世代も、不況下に卒業したことで転職を繰り返している。彼らの多くは自分が仕事に求めるものを再考している。
「大退職(Great Resignation)」という言葉をよく耳にするが、本当は「大改造(Great Reshuffle)」だ。
これはリンクトイン(LinkedIn)のCEO、ライアン・ロスランスキー(Ryan Roslansky)が、タイム誌の最近のインタビューで語ったものだ。彼のチームは、リンクトインの登録メンバー(約8億人)のうち、プロフィールの職業を変更した人の割合を追跡し、転職が前年比で54%増加していることを発見したという。
その動きの先頭に立っているのは若い世代だ。
Z世代の転職は前年比で80%増加していたという。ミレニアル世代の転職が50%増と2番目に高く、X世代が31%増でそれに続き、ベビー・ブーマーの転職はわずか5%しか増加していない。
また、その他の調査でも、中堅・若手社員は転職という形でよりよい環境を求めていくという傾向が裏付けられている。2021年7月下旬にバンクレート(Bankrate)が行った調査によると、Z世代やミレニアル世代の勤労者は、ベビーブーマーの約2倍が今後1年間に新しい仕事を探す予定だということが分かった。また、2021年8月にパーソナル・キャピタル(Personal Capital)とハリス(Harris Poll)が行った調査では、調査対象のアメリカ人の3分の2が転職に意欲的であることが分かった。なかでもZ世代は大半(91%)が、ミレニアル世代では4分の1以上がそう考えているという。
この傾向は理にかなっている。ベビーブーマーの多くは定年を迎え、中年期のX世代は現状に固執している。それより若い世代はあまり縛られていないため、転職の自由度が高いのだ。
Z世代とミレニアル世代は、よりよい仕事への転職を考えている
特に、20代半ばのZ世代と30代後半のミレニアル世代は、どちらもそれぞれ異なる不況下で学校を卒業したこともあり、転職を繰り返す傾向にある。ミレニアル世代は、大不況(Great Recession)で疲弊した雇用市場に参入したため、多くの人が職を転々とした。Z世代はコロナウイルスが蔓延する不況の中で、まるでミレニアル世代が歩んだ道を辿ったようだった。
「不況下で卒業した人は『質の低い』仕事からスタートする。そのため、彼らは流動性が高く、より質の高い仕事へとステップアップしていく傾向がある」と、ノースウェスタン大学(Northwestern University)教育学部・社会政策学部の助教授で、スタンフォード大学の研究論文の著者でもあるハンス・シュヴァント(Hannes Schwandt)は以前Insiderに述べている。
2021年に大学を卒業した人々は、安く雇えるティーンエイジャーや年長の経験豊富な労働者に押されてしまい、最も厳しい就職活動を強いられていると給与計算・福利厚生サービスを提供するグスト(Gusto)のエコノミスト、ルーク・パルデュー(Luke Pardue)は2021年7月にInsiderに語っている。Z世代の中には、よりよい仕事に就けるまで、どんな仕事でも引き受ける人もいるかもしれない。
一方、ミレニアル世代に仕事を辞める人が続出しているのにはさまざまな理由があるとハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)が指摘している。雇用主が経験の浅い社員を雇いたくないために中堅社員の需要が高まっていること、コロナウイルスのパンデミックによる経済的影響が落ち着くまで転職を先延ばしにしていること、パンデミックによって自分が仕事や人生で何を求めているのかを考え直していることなどが考えられるという。
パンデミックの影響で、あらゆる年齢層の人が人生で最も重要なことは何かを考え直し、最終的に労働市場の流動性を引き出した。
「世界中の労働者がどのような職に就くのかということだけでなく、なぜ働くのか、自分のキャリアや人生で何を一番したいのは何かを考え直している。このような人材の流動はおそらくあと1、2年続くだろうが、最終的には落ち着くと考えている」とリンクトインのロランスキーは話している。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)