グーグルのPixel 6 Proを約6日間使ってみた。
撮影:小林優多郎
「控えめに言って、普通じゃない」
グーグルの最新スマホ「Pixel 6 Pro」を日常使いや仕事用のスマホとして使っていると、だいたいこんなことを自然と呟いてしまう。
Pixel 6シリーズに搭載された、グーグルが初めてスマホ向けに設計した専用チップは、一体どのような実用的な機能を実現しているのか。
10月28日発売の上位機種「Pixel 6 Pro」を約5日間使ってみたファーストインプレッションをお送りする。
「モーションモード」など新しい撮影機能が圧巻
Pixel 6 Proは超広角、標準、望遠の3つの背面カメラを搭載。かなり出っ張っているが、グーグルはこれを「カメラバー」と呼んでいる。
撮影:小林優多郎
最も分かりやすく、かつ多くの人に魅力的なのは、カメラ機能だろう。
Pixel 6と6 Proは搭載しているカメラにやや性能差はあるが、超解像ズームの倍率を除けばほぼ同じカメラ機能が利用できる。
その中での注目機能が「モーションモード」だ。この機能はベータ版という扱いだが、Pixel 6/6 ProのGoogleカメラアプリから呼び出すことができる。
モーションモード「長時間露光」機能
まずは、上部の写真を見てもらいたい。渋谷の交差点を撮影したものだ。これにモーションモードの「長時間露光」が適用されると次のようになる。
機能名のとおり、いわゆる一定時間シャッターを開き続けて撮る「長時間露光」で撮影したかのような車のライトの軌跡が描かれた画が撮れている。
通常、長時間露光撮影は三脚などで本体を一定時間固定して撮影する必要がある。その間、少しでも揺れたり手ブレをしたりすると、その分画はぐちゃぐちゃになる。
しかし、驚くべきことに前述の写真はわずか3、4秒。しかも、手ブレしないように気をつけていたとはいえ、手持ちで撮影したものだ。
モーションモード「アクションパン」機能
加えて、モーションモードにはもう1つ「アクションパン」という機能がある。これは動いている物体を撮ると効果を発揮する。
例えば、直前の写真3のような交差点を曲がろうとするとバスを「アクションパン」で撮影するとこうなる。
実際にはこの写真のような大げさなスピードは出ていないのだが、いわゆる“流し撮り”のような疾走感のある画になる。
これもまたカメラをモーションモードに切り替えて、手持ちでシャッターを切るだけ、でなるというのだから驚きだ。
最大20倍の超解像ズーム
なお、Pixel 6 ProとPixel 6の違いとして、望遠レンズの有無がある。Pixel 6 Proではこれにより最大20倍の超解像ズームが利用できる(光学ズームは2倍もしくは4倍)。
以下の写真は東京・渋谷のスクランブル交差点から「渋谷スクランブルスクエア」の外壁にあるロゴを撮影したものだが、その精度も非常に高いのがわかるだろう。
消しゴムマジック
写真関連として「消しゴムマジック」にも触れておきたい。
これは撮影後の写真に適用でき、写真の中に写り込んでしまった通行人などを"消す”機能だ。
こういった機能のアプリや機能はすでにあり、プロであればAdobeの「Photoshop」で同様のことはできる。
追加のアプリが不要で、しかも2、3タップほどで完了してしまう。というのが、この消しゴムマジックのすごいところだ。
日本語対応がうれしい「レコーダー」と「音声入力アシスタント」
カメラ以外にも実用的な機能がある。それは、「レコーダー」アプリだ。
「レコーダー」は2019年10月発売「Pixel 4」で登場したグーグル純正の録音アプリだ。
単なる音声録音だけであれば特に珍しくはないが、このレコーダーアプリはリアルタイムでの文字起こし機能や、収録中の音の種類(音楽や拍手など)を判別できる。
試しに、スマホの前で手を早いペースで叩いてみたところ、拍手と認識した(遅いペースだと認識しなかった)。
画像:筆者によるスクリーンショット
ただし、Pixel 5シリーズまでは日本語非対応。英語などの一部言語に限られていた。Pixel 6/6 Proでようやく日本語でも利用できるようになったわけだ。
実際に使ってみると、その精度の高さは「スマホに付いてきたサービス」とは思えない。人名や固有名詞など、間違いはあるが、職場の会議や、筆者のような記者であれば取材メモには十分な精度だと感じた。
音声入力アシスタントはちょっとした文字の入力、特にメッセージアプリとの相性が抜群だ。
画像:筆者によるスクリーンショット
音声認識およびテキスト変換という意味では、意外にパーソナルな機能もある。それが「アシスタント音声入力」だ。
これは従来の音声入力(キーボードをタップする代わりに、内容を声で入力する)機能に、「消去」「停止」「送信」といった“操作機能”が加わったものだ。
具体的には上記の動画を見ていただきたいが、例えば「明日は正午にハチ公前で集合」とLINEで友だちにメッセージを送りたい場合は、友だちとのチャット画面を開く。表示されるキーボード右上にあるマイクアイコンをタップしてアシスタント音声入力を開始する。
その後は「明日は正午にハチ公前で集合」と言えば、リアルタイムに文字が入力され、最後に「送信」と言えば、メッセージが送信される。
途中で言い間違えた場合は「消去」と言えば、それまで入力されたテキストが消去されるし、いったんアシスタント音声入力を止めたければ「停止」と言えばいい。
メッセージの入力から送るまでのすべての操作がハンズフリーで可能だ。
送信などのコマンドの他にも、絵文字を入力するためのコマンドもある。
画像:筆者によるスクリーンショット
「送信」コマンドは対応アプリでのみ動作するようで、筆者が試した限りだと「Facebook Messenger」と「LINE」は利用できた。一方で、「+メッセージ」と「Twitter」のDMでは、うまく送信できなかった。
アシスタント音声入力は、多くの音声入力系の機能がそうであるように、周囲の環境によっては恥ずかしかったり、あまり声に出して言ってはいけないことだったりして気がひけるということもあるだろう。
ただ筆者は、スマートスピーカーに囲まれて生活しているという特殊環境に慣れているせいもあるが、テレワーク化で周りにいるのが家族ぐらいという環境下であれば、簡単なメッセージを返信するぐらいには十分使い道のある機能だと感じた。
Pixel 6とPixel 6 Proは機能が共通している
写真左からPixel 6 ProとPixel 6。
撮影:小林優多郎
さて、いずれの機能もPixelならではと言える、非常に特徴的な機能だ。これらに魅力を感じるのであれば、Pixel 6シリーズは十分“買い”の端末だと思う。
手の決して小さくない方の自分でも、Pixel 6 Proはかなり大きいと感じている。また、カメラバーへの傷を抑えるためにもケースを付けると更に大きさは増す。
撮影:小林優多郎
6か6 Proかは予算、画面の大きさ、本体の重さで選べばいい。
Pixel 6 Proは直販価格で11万6600円〜(税込)なのに対し、Pixel 6は7万4800円〜(税込)と、ほとんど同じ機能が使えるなら、安い方でという考え方もありだ。
Pixel 6 Proは画面が左右端で曲がって表示される“エッジディスプレイ”を採用。背面のガラス素材も相まって、かなり高級感がある雰囲気だ。
撮影:小林優多郎
また、1点注意しておきたいのは端末と使うキャリアだ。Pixel 6/6 Proは日本の4キャリアが提供する電波にだいたい対応しているが、5Gに関しては発売当初はKDDIとソフトバンクのみとなる。
実際、筆者は試用期間中にドコモの5G契約のSIMを入れて、普段別の5G端末がつながるエリアを数日歩いてみたが、1度も5Gの電波をつかむことはなかった。
4Gがつながるので特に支障はないのだが、きになるところではある。グーグルによると、NTTドコモと楽天モバイルの5Gネットワークには後日ソフトウェアアップデートで対応予定とのことなので、その点だけ留意しておく必要がある。
(文、撮影・小林優多郎)