IBM×初代ユーグレナCFO小澤杏子さんが考える「より良い20年後」のために必要なこと

IBM Future Design Lab.の髙荷力氏とユーグレナで17歳にして初代CFOに選ばれた小澤杏子氏

持続可能な社会の実現とビジネスの両立を考える、Business Insider Japan主催の「Beyond Sustainability 2021」(2021年10月4〜8日開催)。オンラインイベントの最後を飾ったのは「20年後の未来を創るための選択肢−意思決定のサステナビリティ–」と題したトークセッションだ。

コロナ禍で関心が高まるサステナブルな消費や購買は、今後どのような展開を見せるのか。Business Insider Japan Brand Studioスタジオ長の松葉信彦をモデレーターに、IBM Future Design Lab.の髙荷力氏とユーグレナで17歳にして初代CFO(Chief Future Officer/最高未来責任者)に選ばれた小澤杏子氏が登壇し、展望と課題について語り合った。

コロナ禍は、サステナビリティの足止めとなったのか

——小澤さんは早くから環境問題やエネルギー問題に関する活動をし、高校2年生のときにはユーグレナが18歳以下の若い世代から募った初代CFOに選任されました。2019年から2020年のCFO任期中の後半でコロナ禍にさしかかったと思いますが、その前後で自身と周囲の購買行動に何か変化はありましたか。

小澤杏子(おざわ・きょうこ)氏/ユーグレナ 初代CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)

小澤杏子(おざわ・きょうこ)氏/ユーグレナ 初代CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)

小澤杏子氏(以下、小澤):コロナ禍以前でも、マイボトルを持参すればドリンクが少し安く提供されるカフェなど、高校生でも参加できるサステナブルな購買機会は増えているという印象がありましたし、よく利用していました。

また、ユーグレナのCFOとして環境意識が高い同世代のユーグレナFutureサミットメンバー(以下、サミットメンバー)と一緒に活動し、企業や団体からお話をうかがう機会を得るなかで、サステナビリティというムーブメントが一気に加速するのを感じていました。

コロナ禍で停滞を感じることもありましたが、コロナの終息を待つのではなく、世の中が「コロナと一緒に生きていく」というマインドセットになったことで、最近ようやくスピードを取り戻したように思います。

髙荷力(たかに・ちから)氏/日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 iX アソシエイト・パートナー& 生活者洞察スペシャリスト

髙荷力(たかに・ちから)氏/日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 iX アソシエイト・パートナー& 生活者洞察スペシャリスト

髙荷力氏(以下、髙荷):小澤さんやサミットメンバーの提言によって、ユーグレナはペットボトル商品の全廃と2021年中に商品に使用される石油由来プラスチック量50%削減を決定して話題になりました。そこで教えていただきたいのが、10代の小澤さんやサミットメンバーの方がなぜそこまで環境について研ぎ澄まされた問題意識を持っていたのかということです。

小澤:私たちの世代が自分たちの将来に対する意識が高いのは、やはり教育だと思います。今は小学生が学校でSDGs (持続可能な開発目標)のことを学んでいると聞きます。そういったフレーズが身近にあることで、環境などの問題を自分のこととして考える機会は多くなるのではないでしょうか。

私を含めてサミットメンバーは、バックグラウンドも見ている方向も違いましたが、共通していたのは「さまざまな側面から自分の将来を良くしたい」「世界の将来のために働きかけたい」というパワーと軸があったこと。ペットボトル商品全廃やプラスチック削減のことも、意識せずとも環境に配慮した仕組みを作って、それを形にしたいというみんなのモチベーションのおかげで取締役会での提言まで漕ぎ着けることができました。

変化する購買行動。企業に求められるのは?

——実際、購買行動につながる意思決定はどう変化しているのでしょうか。髙荷さんが参画する「IBM Future Design Lab.」は近未来の動向について調査・予測を行い、企業・業界・社会の枠を超えて、より良い未来へ向けた問題解決につながる知見を発信していますよね。

髙荷:先ほど小澤さんが「環境というフレーズが身近にあることで、問題を自分ごと化することができる」とおっしゃいましたが、我々もまさに「自分ごと化」がひとつのポイントであると考えています。

意思決定のサステナビリティ:コロナ前の傾向

私たちは物事を自分ごと化して検討行動に移るまでに「情報蓄積」を経るわけですが、テクノロジーの進化によって情報蓄積の工程の一部が外部化されるようになりました。その代表的な例がAIです。

膨大な情報量のなかから、その人に必要だと判断した情報をあらかじめ選っておいてくれるので、自分ごと化してから検討行動に移るまでが速くなった。私たちはこれを「一時判断の外部化」といっており、コロナ禍前の大きな特徴のひとつであったと考えています。

そしてもうひとつ、意思決定に関する新型コロナの影響を調査した結果をお伝えしますと、「元気で、健康な暮らしが大切」だと考えている人が全体の87%、また「将来が見通せないので、自ら備えることが大切」だという人が85%。コロナ禍で、健康や家族などの保守的な価値観が高まる一方で、不確実性に対して自ら備えるという新しい意識の高まりが生まれたと考えられます。

また、DXによるサービスの受容について「商品やサービスの高度化をどう思うか」と聞いたところ、許容すると回答したのが43.1%、拒否するという回答はわずか12.5%に留まり、コロナ禍でこういったサービスをうまく活用していきたいという生活者の気持ちが見えてきました。ネットとリアルのいいところを使い分けたいという意識も73%と、非常に高まっていることが分かります。

さらに今後どのような動きが出てくるかを考えますと、先ほど自分ごと化から検討行動までが速くなったことをお話ししましたが、やはり「どうやったら時間をかけずに判断できるか」ということが引き続き重要視されると予測できます。使いやすくて信頼できるテクノロジーやサービスによって、判断の外部化を安心して任せることができ、自分が十分に納得できる意思決定へと進められるよう、ユーザー体験の再構成が必要になると我々は考えています。

——それはニュースメディアを運営している立場として、大変共感できます。そういったテクノロジーによるレコメンドを通じて我々も読者へリーチさせてもらっている部分もありますし、届けられていない人に対してどう「同志」になっていくかということは考え続けなければいけないと思っています。

髙荷:まさに「同志」という言葉がポイントで、信頼を基準にして企業やサービスが選ばれる時代になったわけです。生活者といかに志をあわせられるかということが今後の購買活動の課題であると感じています。

——企業やサービスが選ばれる時代という点では、ユーグレナのCFO採用という取り組みは企業の信頼を見据えてのことだったと思います。小澤さんは髙荷さんのお話や調査結果についてどう思いますか?

小澤:私たちの世代は、潜在的に自分が信じたいことや応援したいことを大切に考えている人が多いように思います。たとえば大学で進路の話になると、報酬は二の次で、「自分がやりたいことを実現できる企業に就職したい」「信頼できる企業経営ができている会社を選びたい」という意見を多く耳にします。

何を「信頼」とするかは人それぞれ定義は違いますが、そこに合致する情報が得られれば、必要なところにはじっくりと時間をかけて、そして意思決定のところはよりスムーズにできる世の中になるのではないでしょうか。大変分かりやすい調査結果だと感じました。

意識せずとも環境に配慮した行動を取れる仕組みを

小澤杏子(おざわ・きょうこ)氏/ユーグレナ 初代CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)

——今回、セッションのタイトルを「20年後の未来を創るための選択肢」としていますが、20年後というと、小澤さんは社会の中核を担う世代。かたや2050年問題はカウントダウン、分水嶺といったタイミングかと思います。あらためて20年後に向けて感じる危機感や課題をお聞かせください。

小澤:ユーグレナのCFOとして活動をしていたとき、環境問題についてどう働きかけても10人中2人ぐらいには見向きもされないという実感がありました。これは環境だけでなく、ウェルビーングやジェンダーなどのテーマでも同じだと思いますが、その2人を振り向かせようとしなくても、またはその2人が考え方を変えたり妥協したりしなくても、意識の差を埋めて、誰もがサステナブルな生き方を選択できる社会にしていく必要があると考えます。

それにはやはり企業といった大きな組織の取り組みは不可欠です。そしてメディアや商品、(企業や行政など組織の)広報がしっかりと生活者にリーチしていけば、「意識が高い低い」といった類の話はなくなるのではないでしょうか。母数さえ増えてしまえば、あとは時間が解決すると思います。

髙荷:以前から、小澤さんは「意識せずとも生活者が環境に配慮した行動を取れる仕組みを作りたい」という思いを発信していますよね。そのことに私は共感しながらも、自分を少し恥じたんです。これまで少しでも社会をよくしたいという思いでやってきましたが、小澤さん達の世代に、信じられる未来を創るためには人々が“意識せずとも参加できる仕組みづくり”が必要だと思わせてしまったのは、これは私たち世代の力不足のせいでもあるなと感じたからです。

今日、小澤さんのお話を聞いて、本当の意味で成熟した社会を実現するための礎を作っていきたいとあらためて感じました。

小澤:環境問題をはじめとする社会課題について、私たちの世代は意識が高いと語られることが多いです。たしかに加速の一端を担った世代かもしれませんが、それはこれまでの動きによって構築されたものがすでにあったからだと思います。

「現役世代、次世代」といった言葉で世代を分けるのではなく、みんなで考えられる場を増やしていけたらと考えています。今日のようにフィールドも活動年数も違う方々とお話しする機会は、将来につながるひとつの橋になると信じています。

髙荷:うれしいですね、ぜひ橋を作っていきましょう。

社会課題解決と、快適な暮らしを両立させるために

髙荷力(たかに・ちから)氏/日本アイ・ビー・エム グローバル・ビジネス・サービス事業本部 インタラクティブ・エクスペリエンス事業部 アソシエイト・パートナー& 生活者洞察スペシャリスト

——「橋を作る」という視点は、まさに髙荷さんが活動する「IBM Future Design Lab.」が掲げるところだと思いますが、今後の展望について少しお聞かせいただけますか?

髙荷:環境問題は、地球規模、宇宙規模で考えなければいけない深遠なテーマですが、そのために私たちの暮らしを犠牲にすることはできません。環境を良くするための取り組みと、私たちのより良い暮らしを並走させることが課題になります。

また、今回テーマに掲げた「20年後」の未来とともに、5年、10年という中長期、そして日々という短期の視点も合わせ持ちながら、課題解決についてしっかりと議論や対話を重ねていく必要があるとも考えています。

そのなかで、先ほど小澤さんがおっしゃったように、年代や専門性、利益といった概念を超えて、社会や地球の未来をより良くするための指針ができていけば、それが新しい常識として課題解決の推進力となります。「IBM Future Design Lab.」はその一助を担い、より良い未来へ向けた問題解決につながる知見を発信し続けられたらと考えています。

——その活動のひとつとして、 IBM Future Design Lab. と我々Business Insider Japanが始めたのが「Beyond the Future」という取り組みです。社内外のステークホルダーや企業、業界、社会の枠を越えたつながりを構築するために、これからコンテンツを拡充し、発信していけるよう準備を進めていますので、ぜひご覧ください。小澤さん、髙荷さん、今日は大変貴重なお話をありがとうございました。


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