2019年10月9日、ニューハンプシャー州マンチェスターで行われたジョー・バイデン大統領候補(当時)の選挙集会を妨害する気候変動の抗議家。
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- 国連事務総長は、各国の気候変動対策は「完全に失敗している」と述べた。
- 国連の報告書によると、世界は21世紀末までに地球の気温上昇を1.5度に抑える道から「大きく外れている」という。
- これは10月31日に始まる国連気候会議(COP26)を前に、バイデン大統領に目標を達成するよう圧力をかけていると見られる。
2021年10月25日に発表された国連の報告書によると、アントニオ・グテーレス( António Guterres)国連事務総長は、各国の炭素排出量削減が目標を大幅に下回っていることを受け、気候変動との戦いに「完全に失敗している」と述べたという。
「排出量の隔たりは、指導力の欠落によって生じている」と、グテーレス事務総長は2021年10月26日の記者会見で語った。
「しかし、各国のリーダーたちは、これを気候変動による大惨事への転換点ではなく、より環境に優しい未来への転換点にすることができる」
2016年に発効したパリ協定では、21世紀末までに地球温暖化を1.5度以内に抑えるという目標が設定されたが、今回の国連の報告書で各国の対策が遅れを取っていることが明らかになった。早急に対策を講じなければ21世紀末には気温は約2.7度まで上昇する可能性があるという。
また、国連の世界気象機関(WMO)は2021年10月25日、新型コロナウイルスのパンデミックで世界経済が減速したにもかかわらず、2020年に二酸化炭素は過去10年の平均よりも多い413.2ppmになったと発表した。
WMOのペッテリ・ターラス(Petteri Taalas)事務局長は、「我々は大きく道を踏み外している」と述べ、少なくともここ300万年で二酸化炭素の濃度がこれほど高かったことはないと付け加えた。
これらの情報はすべて、2021年10月31日から世界各国の首脳が集まってイギリスのグラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の1週間前に発表された。ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領が任期中に脱退していたため、アメリカがパリ協定に再加盟してから気候サミットに参加するのは今回が初めてだ。ジョー・バイデン大統領は以前、COP26を前にして、アメリカの気候変動対策に懸念を示していた。
カリフォルニア州選出のロー・カンナ(Ro Khanna)下院議員によると、バイデン大統領は10月19日、進歩的な議員で構成されるグループを前に、「アメリカの威信がかかっている」と語ったという。
「アメリカを代表して海外へ行くためには必要なものだ。民主党が機能していること、国が機能していること、我々が統治できることを人々に知ってもらいたい」
バイデン大統領が懸念しているのは、民主党の穏健中道派の2人、ウエストバージニア州選出のジョー・マンチン(Joe Manchin)上院議員とアリゾナ州選出のキルステン・シネマ(Kyrsten Sinema)上院議員が、大統領の経済政策や気候変動対策に反対していることだ。バイデン大統領が提案した、2030年までに二酸化炭素の排出量を半減する目標を掲げた「CEPP(Clean Electricity Performance Program)」は、マンチン議員の反対によって民主党の法案から削除されている。
現在、民主党はCEPPなしで気候変動対策の枠組み作りに取り組んでいるが、グテーレス事務総長が述べたように、地球温暖化が「人類の存亡に関わる脅威」になる前に対処するには時間が残されていない。とりわけ、地球温暖化の影響の一部は「数世紀から数千年の間取り返しがつかない」とする国連の報告書が2021年8月に発表されたことを受け、気候変動の緊急性に対応するために、バイデン大統領や各国の指導者への圧力が高まっている。
(翻訳:大場真由子、編集:Toshihiko Inoue)