ソニーはカメラ機能に特化した「Xperia PRO-I」を発表。12月15日に発売する。
撮影:小林優多郎
ソニーが電撃発表した新型スマホ「Xperia PRO-I」(エクスペリア プロ アイ)。
名前や19万9800円(税込、直販価格)という価格設定からもわかるとおり、ターゲットは映像表現を追求したいプロ向けの製品だ。
Xperiaとしては初めて1インチカメラセンサーを搭載することで、より写真や動画の撮影にこだわりを持つ人向けのスマートフォンになっている。
発売は12月15日になるが、既にソニーストアなどで予約は開始している。一部使用できない機能もあったが、実機ファーストインプレッションをお届けする。
カメラ以外は案外“普通”、でも細部にはこだわりのポイントが
正面から見れば、他のXperia端末とあまり違いがわからない。
撮影:小林優多郎
Xperia PRO-Iは巨大なカメラ部分を背面に持つなど、まるで「ソニー製カメラ」かのような外観をしているが、実際に手に持ってみると「普通のXperia」だというのが良い意味で驚いた。
ディスプレイは6.5インチ、画面の縦横(アスペクト)比21対9の、Xperia 1シリーズと同様のディスプレイだということもあるが、何よりその持ちやすさと軽さが原因だったと思う。
写真左が「Xperia 1 II」(厚さ7.9mm)、右が「Xperia PRO-I」(厚さ8.9mm)。
撮影:小林優多郎
サイズは幅72×高さ166×厚さ8.9mm、重さは211gと、2021年のソニーのフラグシップ「Xperia 1 III」と比べても幅・高さは1mm、厚さは0.7mm大きく、重さは25g増しているが、持ってみると数値ほど違いは感じない。
そればかりか、溝のある側面のデザインによって滑りくくなっているのでかなりホールド感があった。
写真左から「音量キー」「電源キー兼指紋センサー」「ショートカットキー」「シャッターボタン」。
撮影:小林優多郎
側面と言えば、ボタン周りも非常に特徴がある。
Xperiaは基本的に右側面にボタンが集中しているが、PRO-Iもそれは踏襲している。
配置されているのは「音量キー」「電源キー兼指紋センサー」「ショートカットキー」「シャッターボタン」の4つ。
ショートカットキーで起動するアプリを変更するには、設定>システム>ジェスチャー>ショットカットキーにアクセスする。
撮影:小林優多郎
ショートカットキーは初期値では新しい動画撮影アプリ「Videography Pro」の起動ができるが、設定で変更できる。
また、シャッターボタンはもはやXperiaでは定番となっている物理キーだが、押した感じが他のXperiaとは違う。
説明会会場の担当者によると「(ソニーの高級コンパクトデジカメ)RX100シリーズと同等のものを使用」し、キーの押し込まれる深さ(ストローク)が深くなっているという。
後述の1インチのカメラセンサーだけではなく、カメラアプリ「Photography Pro」の外観・操作体系、そしてこのシャッターキーが、スマホであるPRO-Iを「ソニーのカメラ」と感じさせる重要な要素になっている。
本体の左側面下部にはストラップホールがある。
撮影:小林優多郎
なお、左側面にはnanoSIMが2枚入るデュアルSIM仕様(ただしmicroSDカード1枚を入れるとSIMは1枚しか入らない)のSIMスロットと「ストラップホール」がある。
ケースなどにストラップをつける穴があるものは存在するが、国内メーカー/ブランドであってもスマホ本体にストラップホールがあるものは、昨今では非常に珍しい。
1インチセンサーだけじゃないカメラのこだわり
Xperia PRO-Iの背面。ちなみに、「NFC」マークがうっすらと見えるが、Suicaなどが使える「おサイフケータイ」にも対応している。
撮影:小林優多郎
PRO-Iの主役はなんと言ってもカメラだ。中央にはRX100 VII相当の1インチセンサーと広角レンズ(24mm)を組み合わせたメインカメラが位置し、その上には超広角(16mm)、下には標準(50mm)のレンズ。合計3種類の画角で撮影できる。
加えて、広角レンズのカメラでは、これまたスマホでは珍しい「絞り」を変えることができる。
具体的にはF2.0もしくはF4.0で切り替えられ、前述のPhotography Proではユーザーが任意に指定できる。
ややブレていてわかりにくいが、中央のレンズの奥の穴の大きさが変わっているのがわかる。
撮影:小林優多郎
スマホでの絞りの切り替え機構は、日本ではサムスンが2018年に発売した「Galaxy S9」から2019年発売の「Galaxy S10」で採用していたが、2020年の「Galaxy S20」以降では採用していない。
物理的な稼働をするパーツなので故障率などが気になるところではあるが、絞りを切り替えることでより強い背景ボケや比較的遠景までピントのあった写真が理論的には撮れる。PRO-Iを買うような映像表にこだわりたい人には、重要な機能だ。
では、実際の絵作りの方はどうか。
以下に一部、実データも掲載する。なお、この写真は、会場内の限られたスペースと短時間の試用だったこと、また端末が試作機のため、製品版とは画質が異なる可能性があることをお断りしておく。
さて、いくつか撮影してみたところ、ソニーのデジタル一眼「α」や前述の「RX100」シリーズのユーザーであれば見慣れた、現実感のあるタッチの画が撮れる。
このあたりは、機械学習のパワーを存分に使ったグーグルの「Pixel」シリーズやアップルの「iPhone」とはまた考え方が異なる部分だと思う。
また、物理的に望遠レンズは付いていないため、遠くの被写体を撮りたい場合は1インチセンサーが載った標準レンズで高画質で撮影し、切り取るか、許容できる限界までデジタルズームを活用する必要がある。
現実的に、比較的近〜中距離の範囲をカバーできるカメラ(スマホ)と考えていいだろう。
単に“キレイな写真が撮れるカメラ”ではない
YouTuberなどの動画制作者も、Xperia PRO-Iのターゲットだ。
撮影:小林優多郎
ただし、ソニーがXperia PRO-Iを通して提案しているのは単なる“キレイな写真が撮れるカメラ”というだけではない。
1インチサンサーを活用した高画質かつブレの少ない動画撮影と、特別に対応した周辺機器との組み合わせで「Vlog需要」にも応える。
動画の画質なども試作機のためまだ評価をするには情報が足りないが、新しい周辺機器については今回の体験でその仕様の詳細がわかってきた。
Vlog Monitor XQZ-IV01。ディスプレイ自体と接続のためのケーブル、スマホに取り付けるホルダーのセットだ。
撮影:小林優多郎
まず、高画質な背面カメラで「自撮り」するための小型外付けディスプレイ「Vlog Monitor XQZ-IV01」(2万4200円税込)。これは完全に撮影目的専用で「Videography Pro」「Photography Pro」の両アプリ起動時のみ利用できる。
Vlog Monitor利用時は、Xperia側のプレビューは表示されない。
撮影:小林優多郎
接続には付属のL字のUSB Type-Cケーブルが利用する。また、音声をXperia本体ではなく外付けのマイクをつけたい場合は、Vlog Monitorのマイク端子(3極プラグ)に接続し、付属するホルダーのアクセサリーシューに取り付けられる。
Vlog Monitorの左右側面。
撮影:小林優多郎
ただし、前述の通りVlog Monitorが動作するのは2つのアプリのみであり、両アプリはストリーミング配信機能はないため、ライブ配信などで外部マイクを利用したい場合はVlog Monitorを外し、Xperia側のオーディオ端子(4極プラグ)を利用する必要がある。
また、タッチ操作には対応していないので、メインセンサーを自撮りがしたいというのであれば、「シューティンググリップ GP-VPT2BT」(1万2901円)を利用する必要がある。
シューティンググリップ GP-VPT2BTでは、録画の開始/停止などの操作ができる。本来はカメラ向けアクセサリーだが、Xperia PRO-Iは“特別に”対応する。
撮影:小林優多郎
そのシューティンググリップだが、これはもともとαや「VLOGCAM」など向けの製品で2020年1月に発売されたものだ。
ただ、シューティンググリップとカメラの通信はBluetoothで接続されるが、あくまでもカメラ専用機だったため、Xperiaをはじめスマートフォンでは利用できなかった。
ところが、今回PRO-Iでは“特別に”接続・利用できるようになった。シューティンググリップ自体のファームウェアアップデートなどはないため、完全にXperia PRO-I側で独自に対応したことになる。
ただし、Vlog Monitorと同様にシューティンググリップのリモコンの命令を受け取って処理できるのは「Videography Pro」「Photography Pro」のアプリのみになる。
シューティンググリップとのペアリング設定についても、OSのBluetooth設定ではなく、Videography Proなどのアプリ内から設定するという特殊な仕様だ。
シューティンググリップとVlog Monitorの組み合わせは、置いたときでも便利に使える。
撮影:小林優多郎
正直、“少々癖のある仕様”という印象なのは否めないところだが、このあたりも「Xperia 1」や「Xperia 5」シリーズとは一線を画した“特別なモデル”という印象がある。
なお後日、フォトグラファーによる注目の1インチセンサー×広角レンズのレビューを具体的な作例とともに掲載を予定している。
(文、撮影・小林優多郎)
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