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コムアイ×辻愛沙子がNHKドラマでタッグ、「生理をトイレの個室の問題にしない」ために

11月3日、NHKが生理とPMS(月経前症候群)をテーマにしたドラマを放映する。

生理用品の広告では描かれることの少ない「リアル」な女性の姿や、生理にまつわる偏見なども克明に描かれた本作。放送に先駆けて行われた鼎談では、生理×エンタメ論から生理の貧困、衆院選まで話題が及んだ。

演出・脚本・P・主演すべて女性の生理ドラマ

コムアイ、辻愛沙子

コムアイさん(左)と辻愛沙子さん(右)。話題は生理にまつわるエンタメから、衆院選にも及んだ。10月26日撮影。

提供:NHK

NHKは11月をSDGs月間とし、生理に関する特集・企画を「ニュースウォッチ9」や「NHKスペシャル」、Eテレ「バリバラ」など複数の番組で展開する予定だ。

その1つとなるドラマ「雨の日」の舞台は、週刊誌の巻頭グラビアの撮影現場。

主人公のカメラマン・小島ヒカリ(コムアイ)は、やっと抜擢された“勝負の日”に意気込むものの、PMSで思い通りに力を発揮できずに苦しむ。一方、初の水着写真を披露するはずだった元アイドルで女優を目指す芹澤あおい(工藤遥)も、撮影中に突然生理が来てパニックに。

生理用品の広告などで見る、はつらつとした笑顔で働く女性像からは想像できない生理のリアルと、生理にまつわる偏見も含めた「あるある」、またジェンダーの壁を超えて生理を理解するヒントが詰まった作品だ。

演出は若手の映画・ドラマ監督として注目を集める酒井麻衣さん、脚本は「来世ではちゃんとします」などで知られるペヤンヌマキさんが務めている。

11月3日の放送(夜10時〜、NHK総合)に先駆け、主演のコムアイさん(歌手・アーティスト)と、プロデューサーの家冨未央さん(NHK制作局第6ユニット)、そして企画・広報アドバイザーを担当した辻愛沙子さん(クリエイティブディレクター)が語り合った。

「体験しているから」にご用心

生理

ドラマ「雨の日」のワンシーン。

提供:NHK

ドラマ「雨の日」は前述の通り、制作スタッフに女性が目立つ。プロデューサーの家冨さんによると、「『生理がつらいね』とディレクターらと話していたところから自然と湧き上がった企画」だという。

企画を打診され「絶対にやりたいと思った」という主演のコムアイさんも、生理に苦しんだ時期があった。

生理の1〜2日目が「のたうち回るほどつらかった」10代。アーティストとして頻繁にステージに立っていた時期は「ライブの日にかぶったら困るから」という理由でピルを飲んで生理の時期をずらしていた。29歳になった今はそうして「コントロールすること自体をあまりやりたくないな」という気持ちに変化したという。

そんなコムアイさんが今回の撮影を通して痛感したのは「女性だからといって、生理の全てを分かっているわけじゃない」ということだ。

主人公の小島ヒカリはPMSが重い設定だが、コムアイさん自身は生理痛が重いタイプ。

生理痛の痛みをそのままスライドさせてPMSの痛みとして表現してもいいのだろうか?そもそもPMSといっても頭痛がする人、何日前がきついなど症状は人によって千差万別。同じ人でも月によって全く異なる症状が出ることもある。

生理に関する資料を読み込み、PMSがつらいという友人に話を聞いて役作りをした。撮影中は女性も男性もジェンダーを問わず生理について多くを話し合い、制作スタッフの男性の中にはナプキンをつけて寝てみた人もいたという。

「生理のことを分かっていない男性よりも『PMS軽いんだよね』という女性の方が腹が立つという話を聞いて、気をつけなきゃと思いました。生理にはいろんなパターンがあって、それをみんなで話すことが大事だなと。男の人が多くて『別に聞きたくないだろうな』と思っても、『数日前から生理で体が重いんですよ』など、積極的に話すようにしてます」(コムアイさん)

“当たり前に話そう”キャンペーンやってます

生理

提供:NHK(「雨の日」より)

辻さんも、

「生理のトピックの取り扱われ方は、テレビ番組をはじめさまざまなコンテンツから日常の会話まで、ここ最近、特にこの2〜3年で変わってきたと感じています。オフィスでも日常でもいろんなところで発信してきた、戦ってきた人たちがいたからこそ、こんな風に『オープンに話そう』という風に空気が変わってきたんだろうなと、このドラマを観て改めて感じました」(辻さん)

と語る。

クリエイティブディレクターとして活躍する一方、起業して会社の代表も務めている辻さん。先日、男性社員もいるweb会議中に「あ、きたかも」と生理の気配を感じ、

「ごめん、生理きたから一瞬抜けます」

とトイレに走ったことがあったという。会議に参加していたスタッフの反応は、

「いってらっしゃーい」

辻さんが迷うことなく打ち明けられたのは、福利厚生としてオフィスに生理用品を置き、「この生理用品のココが良い」など普段から生理の話をし続けてきたから。生理のことをいかに「当たり前のこと」として話すかに注力してきたからだ。

生理がある人同士はもちろん、生理がない、分からない人と分かりあおうとする連帯も必要だと感じているという。

最近では生理休暇を設ける企業も増え、生理をタブー視することなく話そうという空気も社会に広がりつつある。一方で、制作過程で家冨さんが突き当たったのは、変わらない現状だった。

ナプキンを捨てるゴミ箱がない女性トイレ

生理

スペインのクリエイティブ。そう、生理って「青い水」が出るわけじゃないんです。

GettyImages / Westend61

「今回グラビアの撮影現場が舞台だったので、グラビアではないですが近い感じの撮影をしているところに取材をしたら、女性トイレにナプキンを捨てるゴミ箱がない現場もありました。まだまだ変化してない部分もあるんだなと」(家冨さん)

生理について理解がない、また知識がないゆえにしてしまう空回りや、よくある偏見、ステレオタイプもドラマでは克明に描かれている。

海外の生理を表現するクリエイティブでは、痛がる女性や経血を赤くリアルに描いたものも多い一方、日本の生理用品の広告は、快適に過ごせることを全面に出した、アクティブな女性で演出されることが多く、現実との乖離が指摘されてきた。

ウェブメディア「エラベル」が男性約580人に生理について知っている症状をたずねたところ(複数回答可)、「1週間程度の出血」(447人)「腹痛」(414人)を抑えてトップになったのは、「イライラする」(518人)だった。怒った女性に対して揶揄するように「生理中?」などと聞くシーンをメディアで見聞きした人は少なくないだろう。これらが生理のステレオタイプとして視聴者や読者に影響を与えていないとは言い切れない。

こうしたステレオタイプの他にも、辻さんは「トランスジェンダーの方や生理がこない女性もいる。『生理=女性特有のもの』だという前提にならないよう気をつけています」と、広告制作者として誰かを排除した表現にならないよう、気を配っているという。

生理のタブー視を牽引してきたのは誰?

生理

物議を醸した当時のTwitter。

出典:Twitter

最近では生理用品が買えない「生理の貧困」をNHKが取り上げた際、同局の公式Twitterアカウントが「※生理用品の画像や生理に関する具体的な記述があります」と注意書きをつけたことに批判の声が上がった。その多くはこうしたメディアの姿勢こそが生理をタブー視し、生理について困ったことがあっても声を上げづらい社会を作り出してきたのではないかと指摘するものだった。

コムアイさんも「エンタメでは出産もトイレのシーンも描く一方で、生理は描かない。イベントとして普通にあるのになんで飛ばされている、隠されてるんだろう? 」と違和感を抱いてきたそうだ。

テレビが生理に触れてこなかった一端として家冨さんは、

「企画をジャッジするときに生理を経験している人が少なかったということが単純にあったのではないか。女性の作り手が前線に立っていくことで解決できるかもしれない」(家冨さん)

と語る。

一方で、生理について語りたくない、そうしたコンテンツを見聞きしたくないという意見はいまだ根強い。こうした声に3人は作り手として、表現者としてどう答えていくのか。

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