BASEは決済サービス「PAY ID」のリブランドと、ECサイト作成サービスとの連携強化について発表した。写真は左からBASEで執行役員VP of Productを務める神宮司誠仁氏と上級執行役員COOの山村兼司氏。
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ECサイト作成サービスを提供する「BASE」は10月28日、同社完全子会社の「PAY」が提供する決済サービス「PAY ID」のリブランドを発表した。
最も大きな変更として、年内にショッピングアプリ「BASE」の名称が「Pay ID」になる。決済サービス「PAY ID」の表記も「Pay ID」に統一される。
BASEアプリが「Pay ID」に変更の意味
今回のブランド変更の概要。
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誤解しそうにはなるが、決してBASEブランドがなくなるわけではない。
BASEはこれまで通り、ショップ側がECサイトを作るサービスとして変更なく継続する。あくまで商品を探したり店をフォローしたりできる購入者向けのアプリがBASEからPay IDに変わるだけだ。
実際、BASEで執行役員VP of Productを務める神宮司誠仁氏はBusiness Insider Japanの取材に対し「(体験としては)ブランドの統合により、すぐに何かが変わるわけではない」と話している。
BASEを使ったECサイトでは、今まで通りPay ID(PAY ID決済)のほか、クレジットカードや銀行振込、PayPalやAmazon Payなどが利用できる(実際に使える決済サービスは店舗によって異なる)。
香取慎吾さんで展開するBASEブランドを購入者向けに変える理由
BASEはCMなどにタレントの香取慎吾さんを起用している。
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では、なぜ今回のようなブランド変更に至ったのか。
特にBASEは、タレントの香取慎吾さんをPRキャラクターに起用し、地上波のCMやウェブ広告などを展開してBASEブランドの認知を広めている段階。
販管費は年々増しており、直近(2021年度第2四半期決算)でもブランド確立への投資の勢いは強めており、これにより営業損益はマイナスとなっている。
2021年8月5日公開のBASE 2021年度第2四半期決算説明資料より。
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BASEブランドの価値を高めている段階であっても、購入者向けアプリの名称を「Pay ID」に変える理由を神宮寺氏は「“BASE=ストアフロント”のサービスということを今後も強く押し出すため」と語る。
ストアフロントとは、そのお店自体のブランド・看板が全面に押し出された形態のことだ。
楽天市場やYahoo!ショッピングなどといったモール型サービスは、大きなショッピングモールに各店舗が構えているイメージ。一方で、BASEやShopifyなどのストアフロント型のサービスは背景で動くシステムこそ統一化されているものの、購入者から見ればそれぞれ独立した店舗に見える。
BASEの各加盟店にはさまざまなサイト/SNSから流入がある。
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実際、神宮寺氏はBASEを利用したECショップで買い物をする多くの人が、「BASEで物を買っているという感覚がないと思う」と明かしている。
なお、Pay ID決済はBASE利用店舗以外でも、PAY社の決済API「PAY.JP」を採用する一部の店舗で利用できる。ただ、神宮寺氏は「直近で、BASE以外で加盟店を増やしていく計画はない」と話している。
ECでの買い物体験強化が狙い、具体的な連携強化を予告
BASEの加盟店はコロナ禍で勢いを増して増加している。
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つまり、BASEは売り手(店舗向け)ECサイト作成サービス、Pay IDは買い手(購入者)のための決済サービスとはっきり整理することが狙いだ。
消費者側のメリットとしては、Pay IDを使うことでBASEの加盟店(主にBASEを採用している累計160万店舗)で、購入のたびに住所や支払い情報などを入力する手間が省け、気になる店であればSNSのように”フォロー”することができる。
店舗側もPay ID上で“フォロー”してもらえれば、最新商品やディスカウントの情報を利用者に直接送付できる。
BASEとPay IDの連携を強める機能も予定している。
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また、BASEは今後の予定として、Pay ID決済でパスワードレス認証(ワンパスワード発行やPIN入力)の導入や、BASEとの連携機能強化を予告している。
BASEとの連携強化の一例としては、店舗独自のポイントを発行してそのPay IDに紐付けることで、店舗ごとのロイヤリティープログラムを簡単に構築できる機能などが想定されている(提供時期は2022年内予定)。
ECサイト作成サービスは、グローバルで大きなシェアを持つShopifyが日本市場でもその頭角を表しているだけではなく、フリマアプリのメルカリも「メルカリShops」という形式で提供を開始。2022年春には、LINE・Zホールディングス陣営が韓国IT大手のNAVER製ECサイト作成ツール「NAVER SmartStore」の日本版リリースを予定している。
競争の激しい環境の中で、今回の取り組みがBASEにどのような効果をもたらすのだろうか注目だ。
(文・小林優多郎)