大学入学以前からサステナビリティについて考えていた人も多くいるはずだ。
Bonnie Jo Mount/The Washington Post via Getty Images
- アメリカの大学はもっと気候危機に取り組むべきだと専門家は指摘している。
- 気候やサステナビリティ、環境に特化した学部を開設している大学もある。
- ある調査によると、75%の人がサステナビリティへの取り組みが出願の決定に影響したと答えている。
大学はアメリカ経済の重要な一部分であり、世界が競う温室効果ガス排出の削減についてもキープレイヤーになりつつある。
専門家によると、大学にはサステナビリティ(持続可能性)をリードする責任があるという。基金、雇用水準、公的資金(※)、大規模な不動産の保有、エネルギー利用、さまざまな分野の研究資源などの要素を持っているからだ。
気候変動研究に関する国際大学連盟(International Universities Climate Alliance)やセカンド・ネイチャー(Second Nature)などの気候に関する活動団体も大学に対し、知識の共有、アドボカシー(政策提言)活動を通じた改革の実現、気候科学と関連分野の研究などによって解決の手助けとなることを求めている。そして、学生たちにも環境についての意識向上を望んでいる。
大学は毎年、校舎の改修やメンテナンス、食料、交通、エネルギー、研究、そして教育に数十億ドルを投じている。また、自らの基金の代わりに機関投資家が出資する場合もある。
また、アリゾナ州立大学(Arizona State University)、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(University of North Carolina at Chapel Hill)、ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)など、高等教育機関が最大の雇用主となっている地域では、経済的にも、文化的にも、社会的にも、その影響力はかなり大きい。
650校以上の大学が、2018年初めまでに温室効果ガス排出量を実質ゼロに削減すると誓約した後、自転車ラックの設置や食堂でのベジタリアン・メニューの提供にとどまらず、より包括的なサステナビリティー戦略が実行されている。その支出は、水やエネルギーの使用量を削減するための改善、リサイクルの強化、堆肥化プログラム、電気自動車の購入、クリーンエネルギーへの投資、化石燃料資産の売却などに向けられるようになった。
だが専門家によると、大規模で裕福な大学だけでなく、アメリカ国内の大学すべてが気候について関与し、研究する必要があり、それが解決に向けた迅速な行動に繋がるはずだという。
「最も環境に優しい大学(greenest universities)」年間ランキングを発表しているウェブサイト、ベストカレッジ(BestColleges)は、都市計画や環境科学といったトピックに特化した学問的なプログラムや機会を増やすことも持続可能性への取り組みを強化する方法だと述べている。
例えば、アリゾナ州立大は2006年にサステナビリティに特化した学部を開設した。他にもコロンビア大学(Columbia University)、スタンフォード大学(Stanford University)、ロヨラ大学(Loyola University Chicago)などが最近、気候、サステナビリティ、環境に特化した学部を開設している。
大学のサステナビリティ戦略は志願者数でも大きな違いを生む。大学入試支援サービス会社、ザ・プリンストン・レビュー(The Princeton Review)の調査によると、2021年の回答者の75%(前年の66%から増加した)が、「大学の環境への取り組みに関する情報は、その学校を受験するかどうか、または入学するかどうかを決める一因となる」と述べている。
大学やカレッジでの会話の中心はまだ、学費の値上がりやキャンパス・ライフ、エッセイの締め切りと卒業できるかどうかについてかもしれない。だが、管理者、学生、教職員の中には、持続可能性をより大きなテーマとして捉え、長期的に積極的な投資と注意を払う必要があると考える人が増えている。結局、地球が人間の生活に適さないものになってしまえば、教室も、研究室も、高等教育ビジネスの未来もなくなるのだから。
※アメリカの大学の多くは私立であるが、連邦政府や州の学生ローン、連邦政府の研究助成金、州政府への補助金といった公的資金の恩恵を受けている。
(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)