Google Cloudのトーマス・クリアンCEO。
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Google Cloudの最新の決算が発表された。その内容からは、クラウド業界で第2位に食い込むという短期の野望の達成は難しいというのがアナリストの見解だ。しかし達成できないとしても、長期的な視点で見ると問題はない。
米調査会社フォレスター・リサーチ(Forrester Research)の見通しによると、Google Cloudはライバルであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とマイクロソフトのAzure(アジュール)の後を追う形が今後もしばらくは続くという。2社のような成長率は見込めないため、他社との顧客獲得競争を強いられかねない。
グーグル社が2021年10月26日に発表した決算では、Google Cloudの第3四半期の売上高が49億9000万ドル(約5700億円)で、前年同期から45%増加した。これは、アナリストが予想していた50億7000万ドル強(約5790億円)を下回る。一方、マイクロソフトはAzureをはじめとするクラウドサービスの売上高が前年同期比で50%増加した。
アマゾンの発表した第3四半期のAWSの売り上げは、前年同期から39%増加し、161億ドル(約1.8兆円)だった。
Azureは市場シェアも伸ばし、力強い成長を遂げている。米調査会社ガートナー(Gartner)の推計によると、2019年から2020年にかけて、Google Cloudの市場シェアは5.2%から6.1%に拡大した。これに対し、マイクロソフトは17.4%から19.7%に伸び、AWSは44.6%から40.8%に縮小している。フォレスター・リサーチの主席アナリストであるリー・サスター(Lee Sustar)は、Google Cloudのこの伸び率では業界ナンバー2の座につくことはできないという。
「とはいえ、伸び率はこれまでと同様で、注目に値しないというわけではありません」
AWSは今後も手堅い成長を見せるだろうし、マイクロソフトは大口法人顧客の間で強い存在感を発揮できる。Google Cloudがすぐに2位に躍り出ることはないが、それはそれで問題ないとサスターは言う。グーグルは、クラウド事業が長期的には利益を生み、価値のあるものだと考えているからだ。
「二強体制を崩せないかもしれませんが、クラウド事業から撤退はしないでしょう。先行したAWSのリードは相当なもので、追い上げるのはまだ難しいですけどね」とサスターは話す。
営業の強化や製品開発への投資などから赤字体質は続いており、第3四半期の営業損失は6億4400万ドル(約736億円)だった。米金融サービス会社、シノバス・ファイナンシャル(Synovus Financial Corp.)の信託ポートフォリオ・シニアマネジャーであるダン・モーガン(Dan Morgan)いわく、Google Cloudは新しいリーダーを採用し、市場シェアを獲得し、自社製品の認知度を高める中で、成長期特有の課題に直面しているかもしれないという。
Google Cloudの営業損失は前年同期の12億1000万ドル(約1380億円)からは改善されたものの、AWSが会社全体で高い収益を上げていることを考えると、残念だとモーガンは話す。
加えて、クラウドサービス市場は変化している。サスターによると、パンデミックでクラウドに移行する企業からの需要は増えたが、成長は頭打ちになっている可能性がある。
大規模な買収でもすれば、Google Cloudはライバル企業に追いつけるかもしれないが、規制上の高いハードルがあるため、その実現性は低いとサスターは見る。それでもIKEA、ゼネラル・ミルズ(General Mills)、GEなどの顧客を相次いで獲得し、Google Cloudは勢いに乗っている。契約プランの交渉に応じたり、自社の技術を活用して他社のクラウドと連携させたり、柔軟に対応している。
Google Cloudに完全に乗り換える企業も多少はあるが、多くの企業は他社を完全否定はしていないとサスターは話す。リスクを分散させるために、あえて複数のベンダーのクラウドを使うアプローチだ。
激戦のクラウド市場で、グーグルは自らが先行するマルチクラウドを推し進める戦略を取っている。AWSは真っ先にクラウド市場に参入したため、数多くの企業が中核となるITインフラを同社のクラウドにすでに移行している。また、大企業の多くはOfficeやWindowsなどのマイクロソフトのソフトウェアやOSをすでに使用していることから、当然のごとくAzureを採用する。
Google Cloudは、「1位や2位での評価を得ようとするより、他社と共存する方向に落ち着くかもしれない」とサスターは話した。
(翻訳:西村敦子、編集:大門小百合)